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黒猫ちゃん🐈‍⬛

30年くらい玄関に置いている置き物がある。
小首をかしげてすまして座ってる黒猫ちゃんだ。

高さは約10センチ、首につけた鈴だけ金箔が施されている。
黄色いちりめんで作られた座布団にちょこんと座って、玄関で家族を出迎えたり、見送ったりしてくれている。

掃除をするとき横にスライドして埃を払うのだが、座布団が不安定で、時々ころんと横たわってしまう。
木製の玄関ボードなので傷がいくことはないが、勢い余った黒猫ちゃんが、ころんころんころんと座布団の持ち場を大きく離れてスライディングすることがあった。

黒猫ちゃんはうちの三兄弟がお世話になった保育園の隣にあった大きなお寺の授与品として販売されていた。
降園後、境内で遊ばせていただいていた時に、和尚さんが話かけてくださり、お寺を参拝した折に黒猫ちゃんの存在を知った。

家内安全、家庭円満、健康成就。
普通の毎日を見守ってくれるらしい。
体に巻き付いたしっぽがくるんとして可愛らしく、気に入って購入させてもらった。

ご一緒にいらっしゃった坊守さんが

あなたの身代わりになってくれると思いますよ。

とニコニコしながら包んで下さった。


早速玄関に飾った。


ある朝、次男の重い部活のリュックが猫ちゃんを直撃し、落下、無惨にも猫ちゃんがクラッシュしてしまった。


ごめんなさい、、、と次男の表情はくもったが、電車の時間があって先を急がせた。


その日の夕方、次男が部活で向かうはずだった場所の近くでガス爆発があり、通行人や車を巻き込んで大騒ぎだった、と次男からLINEが入っていた。

黒猫ちゃんが次男を守ってくれたのかも知れない。
きっとそうに違いない。
身代わりとなって家族を守ってくれるとの坊守さんの言葉は本当だ!と黒猫ちゃんに心から感謝した。

次の朝すぐに黒猫ちゃんのお寺に出向き、同じ大きさの黒猫ちゃんを購入した。粉々になった黒猫ちゃんは和尚さんが引き取ってくれて鎮魂していただく事になった。

次に黒猫ちゃんをこっぱみじんにしたのは、私だった。
掃除をしていてモップの柄をぶつけてしまった。

とっさに、これから何かの良くない出来事があるのだろうか?
それか直近で危機一髪な事があったのだろうか?
家族それぞれに聞いてみた。

いた。
社会人になり、遠く離れて暮らしていた長男だった。

やはり交通機関の事故があって、一台遅らせたので問題はなかった、との事だった。

ふしぎな黒猫ちゃん、本当に家族ひとりひとりをよく見てくれている。
身を挺して守ってくれていることに、ありがたく、とても愛おしい。
もうモップなんて当てたりしないで大切に愛でていこう。

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