【雑感】血の盟約により『ハイキュー!!』を読む/その1(1巻)
血の盟約
撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ
友人との飲みの一席では漫画の話題でひとしりき盛り上がる。
あれが面白かった、あれはいまいちだった、とのべつ幕なしに言い合うのが常ではあるが、ときには語り口が異常な熱を帯びることもある。
『灼熱カバディ』という作品をご存じだろうか。
悪いことは言わない。
"スポーツ漫画"が好きなヤツはいますぐこれを読むんだ。
いや、スポーツ漫画にかぎらず"漫画"、いや、"物語"が好きなヤツはとにかく読むんだ。読んでくれ。頼む。
ここでは多くを語らずにいたいと思う。
なぜならこれにより私は【血の盟約】を交わすことになってしまったからである。
飲みの席で会うたびに『灼熱カバディ』を推した。
会話の隙間さえあれば「カバディ」と唱え、ジョッキが空けば「カバディ」と唱え、追加注文のさいに「カバディ」と唱え、会計時にも「カバディ」と唱えていた。
とはいえどれほど推そうが人の心はそう動くものではない。
自分に置き換えてもそうである。
いくらこの作品が面白い! と言われたとて、じゃあすぐに観ますわ! とはならないものである。
観れば間違いなく面白いと分かっていながら観ない。
面白い作品が観たい! と思っているのに、観ない。
自分から面白い作品をいつも探しているのに観ない。
(よくよく考えるとこれなんで? バグ? バカ?)
世にある企業が広告戦略を血眼になって繰り広げるのも、広告代理店がデカい顔をしてのさばっているのも、ひとえに[人はなにかを勧められても、そうそう行動には移さない]という不可解な性質があるからに違いあるまい。
そんなわけで当方も嫌気がさすほど「カバディ」と唱えたところで、誰も読むはずがなかろうと思っていた。そう、ありていに言えばたかをくくっていたのである。
「はい、買ったよ」
ヤツは言った。
言いながらスマホの画面を突きつけてくるではないか。
そこには『灼熱カバディ』
――全30巻
なんだこいつ。
「そっちのオススメ読むから、こっちのオススメも読んでよ」
やりくちがテロ○○トの交渉術じゃねぇか。
前人未踏の偉業
『ハイキュー!!』という作品をご存じであろう。
「スポーツ漫画は数あれど"バレーボール漫画"で大成したものはいない」
これはきわめて有名な漫画格言だが、これを覆したがなにを隠そうこの『ハイキュー!!』である。
アニメ化も大成功し、映画化においても非常に高い評価を受けており、年代を問わずに熱烈に支持されている作品であることは諸兄らの知るところである。
しかし私は読んだことがなかった。
いや、これは正確ではない。
無料公開分(たしか1巻ちょいすぎ相当)までしか読んでいない。
たしかに面白かった。
しかし、あくまでそれは読める漫画として面白いといった具合であり、ここまで猛烈な熱を帯びるほどの風格や気配を感じるまでには至っていなかったのが正直なところである。
ぶっちゃけあんまハマらなかった。(三白眼が苦手)
ハマり切らなかった理由はいくつかある。
が、それをここで開陳するのも無益であろう。
なにせこれからひたすら『ハイキュー!!』について述べていくのだ。
全巻を大人買いをした。
いや、させられた。
人生初の経験である。
まさかあの時にハマらなかった『ハイキュー!!』で大人買い童貞を卒業するとは思いもよらなかった。五里霧中。一寸先は闇。覆水盆に返らず。領収書合計金額二千八二二円。ブルアカの反省文じゃねぇんだ。店員さんも引いてたぞ。
全45巻。
『灼熱カバディ』よりも多いじゃねぇか。
あと十五冊分別作品をオススメさせろ。
こうして我々は【血の盟約】のもと、互いのオススメ作品を読み合うことになった。
しかし、転んでもただ転んだだけではつまらない。
そういうわけで以下『ハイキュー!!』について述べていく所存である。
レビュー記事ではない。
備忘録、ひいては証拠物件としてネットの海に漂流させる意図であり、さらにいえば貧乏性ゆえに二万円も払ったのだからなにか出力しなければ気が済まないという性分の残滓だと思っていただければ幸いである。
勝手なルールとして一記事につき最大で二巻までにしていきたいと思う。
一気に読むと勿体ないという貧乏性ゆえであり、かつ一気に文字を書くのが面倒臭いという飽き性ゆえである。
第一巻
文字情報多くない?
まずこれ。文字情報つまりセリフのコマ多くないですか?
『僕のヒーローアカデミア』を読んだ時も思ったんだけど、昨今のジャンプ作品って文字が多い気がする。『HUNTER×HUNTER』の影響?(でも随分前からだしハンターが準小説になったのは最近だし……)
細かい掛け合いが多い影響もあるんだろうけど全体を通してセリフ量がめちゃ多い。目がしぱしぱする。
ただ、これにより、ひとつ納得できたポイント。
"わかりやすい"
セリフで状況を補完してくれるからちゃんと読んでいけば迷うことがない。
用語やルールなどもきっちり説明してくれる。
なるほど小学生でも素直に飲み込んでいけるわけだ。(近所の小学生がドはまりして会うたびに激推ししてくれてた。月島君にハマってた気がする)
コマちっちゃい
セリフ量の関係に繋がるかもしれないけど、コマちっちゃくないですか?
大ゴマドーン! ももちろんあるけど、全体的にコマが小さい。目がしぱしぱする。
ギャグシーンやギャグ顔がけっこう多用されているからから断続的なコマ割りがなされている気がする。最初期の『うしおととら』並みに小っちゃい。
これが意図的な設計なのか、それとも日常シーンの掛け合いをモリモリにしたためかは不明。
だけどこれもけっこう効果的に感じた。
"試合シーンの大ゴマが映える"
スポーツ漫画の醍醐味は言うまでもなく試合シーンでの大ゴマだ。
躍動感のある構図で決まったシーンはそれだけで心躍る。
日常シーンのコマが小さいため相対的に大ゴマが大きくなっている気がする。
スポーツ漫画の鉄則
女子キャラが異様なくらい可愛い。
どういうわけかスポーツ漫画に登場する女子キャラはおしなべて可愛い。
普通の漫画より登場させられる人数が少ないから気合が入るのか、妙にやたらと可愛いキャラが多い。
あ、女子キャラで面白い考察があったのを思い出したのでここに記す。
『SLUMDUNK』にて春子さんが異様に可愛いのはあれが"桜木花道の認知だから"説というものである。
彼の世界観ではあのくらい可愛く視えている、という表現であり、宇宙の視点からすればそこまで美形というわけではなかろう、という。
その説を後押しするのが劇場版である『THE FIRST SLAM DUNK』における彩子さんの描き方である。
めちゃくちゃ美人じゃねぇか!!!!!
あれは"宮城リョータの認知"を通して描かれた"彩子"という話。
なるほど納得である。
翻って『ハイキュー!!』では、現状では特定の誰かの認知で描かれているという想定ができない。
そして清水潔子は最高である。
つまり宇宙規模にて清水潔子は最高であるということである。
名づけが父か母か気になる
日向翔陽。
日向翔陽……
日向翔陽…………?
日向翔陽…………………!?
日に向かい太陽が翔ける――――ってこと!?
もはや太陽の子じゃん。
通常の感性ではおおよそ付けられないほどの”陽”の気質。
明るいことを宿命づけられた人生。
子の名前は願いだという。
両親は、この子にどんだけ明るく生きて欲しかったのだろうか……
のちのち両親が登場するかはわからないけど、父か母のどっちが名前をつけたのかはめちゃくちゃ気になる。
怪物性の片鱗は見せつつも、スポーツ漫画の先達を見渡せばさらに燦然と輝く主人公たちがあちこちに跋扈している昨今。
この太陽の化身のような日向がどこまで輝いていくのか。
飛雄くん目コワっ
「支配者っぽくて1番かっこいいだろうが!!」
このセリフで影山が好きになりましたねぇ。
それまでは「余裕ないのねぇ」とやや客観的/キャラ的に見ていたけど、この子どもっぽさというか、意外にも直球な感じがすとんと腑に落ちた気がしました。
日向とのやりとりや関係性からこれまでの凝り固まった考え方や行動にも変化が出てきて、それがこの漫画の妙味になることは間違いない。なるほど。
先輩がいい人たちすぎる
全員いい人すぎる。
聞き分けがいい。
大人。
もっと子どもでいろ……
でもたしかに学生の頃って、一つでも年上だとめちゃくちゃ大人に見えたよなぁ。新入生視点からの三年生ってもはや大人そのものだったし。
思春期特有の体格的な急変とか、精神の成熟ゆえに起こる現象だけど、このギャップ感ってやっぱり青春を感じさせるよなぁ。
社会人モノでも先輩後輩の関係はあるけど、ここまで極端な差をいろいろな角度(見た目と精神と経験と無力さと挫折と)で描けるのは青春モノの特権といえよう。
キャラデザ的にも部長(澤村大地)あたりはかなり年上感を演出してる気がする。とはいえ『テニスの王子様』の手塚ほどじゃないから全然オッケー。
『ハイキュー!!』がどのくらいまでのスパンを描いている作品なのかは知らないけど、彼らが卒業するところはあるんだろうか。
見てぇ~~~~~~~~~~~~~~
月島という男
おいおい。随分真っすぐなパンチを打つキャラじゃないか。
こんなんダメだろ。
「熱血なやつうざいんだよね」
じゃねぇんだよ。
さっさとお前も熱血墜ちしろ!
クールぶってるやつが熱くなるのいいよね。
特技がなくて決定力に欠けるやつが、すげえ特技を持ってるやつに劣等感を抱いて苦悶してるのっていいよね。
背が高いという特性はありながらも、いまのところは目立った活躍はない月島がどう成長していくのか。
口の悪さ、ひいては他人をよく見ているという特性は彼の弱さや底にある卑屈さ、賢ぶった諦観がどう変わって、あるいは変わらずにいるのか。
あと山口!
お前ぜったい良いシーンもらえるだろう。私は知っているんだ。そういう法律になっているんだ。
月の影に隠れてるのは、一体なんになるんでしょうね。
まとめ
安易なオススメは財布を痛めるぜ!
でも『灼熱カバディ』は読んで欲しい……
好評発売中!