ヴィーナス
『最後に笑うのは正直な奴だけだ』と歌い出すELLEGARDENの『金星』がとんでもなく好きだ。
余計な知識が、余計な感情が、余計な忖度が増えた。「ほーん、これは6/8拍子なんですね」とか、そういうのって本当は全然いらない十四才の時に抱いたあの感情を越えるものはどこにもない。「これはやらない方がいいかな」みたいな気の使い方も、ホントは多分なくていいような気すらしてる。
『ねぇ この夜が終わるころ 僕らも消えていく そう思えば 僕にとって大事なことなんて いくつもないと思うんだ』と歌われるサビでただ一心不乱に心ときめかせていたあの時代と、今と何が違うのか、僕は未だに答えを見つけられないでいる。もがけ。苦しめ。痛みを受け入れて尚笑っていられるほどの強さを、手に入れたい。
「ごめん」がたくさんある。あのライブに行けなくてごめん。上手くギターを弾けなくてごめん。盛り上げられなくてごめん。勇気がなくてごめん。
同じくらい「ありがとう」もたくさんある。見に来てくれてありがとう。名前を覚えていてくれてありがとう。笑ってくれてありがとう。「楽しかった」と言ってくれてありがとう。もしかしたら、ごめんよりありがとうの方が少しだけ多いかもしれない。こんな時間が続いてくれていることが本当に嬉しい。
日に日に重くなっていく体と、弱くなっていく気持ちと、それに抗おうとするこの思いがいつか実を結ぶと信じて前を向いている。何もできない僕が作る何にもならない歌がきっと70億人のうちの誰かには届くと信じて歌を書く。
「ギタリスト」と名乗るのをやめよう。これからは肩書きなんていらない。セッションに行こうが、ライブに出ようが、何も関係ない。僕は僕の歌を歌って、君は君の毎日を過ごす。どうしようもない僕らの日々を、まるで金星の輝きのように熱く燃え尽きよう。