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石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか 展に行ってきました

知合いが次々と出かけていくのを見ながら、コロナ禍の中で、行くこともないと思っていた展覧会
それが2021年2月3日(水)19:00-24:00の開催記念5時間番組を見て、これは行くしかないと思った。事前予約ができるので、10時開場できる2/10を予約する。行きは車通勤の夫に美術館前まで送ってもらった。

開場と同時に入り、ゆっくりと見る。資生堂やパルコのポスターは知っているものが多いが、版下の校正付きは初めて。広告宣伝に携わってきたからわかるが、赤鉛筆で、びっしりと指示が入っている。それをみるのも楽しい。

これが最終的にあのビジュアルになるのか、その過程からみられるのは新鮮だ。花椿のホネケーキの広告は知らない。わたしが広告を意識しはじめてからの、資生堂のポスターはとても馴染がある。一度見たら、心に焼き付くのだ。一連のパルコのシリーズもキャッチコピーまで覚えていた。
「モデルだって顔だけじゃダメなんだ。」「裸を見るな。裸になれ。」

地元の千葉の公園通りにパルコができたときのよろこび。赤いビロードに黒の椅子が置いてあるマリアという喫茶店が一階に入り、そこにいるだけで大人になったような気分だった。

パルコのポスターで、ドミニク・サンダが登場するシリーズは、男前でカッコよかった。実は1976年にロンドンのキングスロードで、ドミニク・サンダに出会っている。当時はキングスロードのはずれの学生寮にいて、たまたま毛皮店の近くで、歩いていた彼女に遭遇したのだった。あっ、きれいな人がいると思って、まじまじとみたら、ドミニクだった。

そんなことも思い出しながら、ポスターの林の中を歩く。本の装丁もしている。今回の目的は、石岡瑛子が、日本を離れてからの活躍を見ることだった。映画や音楽、そしてオペラのコスチュームデザインと、グラフックスの枠を超えて何をしたのだろうかという、単純な興味である。

ザ・セル(2000年製作の映画)は知っていたが、石岡瑛子が衣装デザインをしているのは知らなかった。 展示会では『落下の王国』(2006)『白雪姫と鏡の女王』(2012)、そして、第65回アカデミー賞で衣装デザイン賞に輝いた『ドラキュラ』フランシス・フォード・コッポラ監督 が見られる。

さらに、オペラ『ニーベルングの指環』(リヒャルト・ワーグナー作、ピエール・アウディ演出、オランダ国立オペラ、1998-1999年)衣装デザインまでてがけているというので、楽しみだった。昨年は、びわ湖オペラで、最終回の神々の黄昏を見損なったし、代わりに予約したパリ、バスチーユの神々の黄昏も延期になり、かなり落ち込んでいた。それで、この展示会で、指環の衣装を全部見ることができた。ヴォータンの正妻フリッカが、持っている羊の頭が付いた杖や、ワルキューレの戦士たちの持つ翼のような金属。実際のオペラハウスでは、ここまで近づいてみることはできない。

奥にはミニシアターも用意されていて、公演のハイライトが上映されている。ラインの黄金なら、色別に赤がヴォータン、青がフリッカ、黄色がフライヤー、白と黒がドンナーとフローと一目で分かるようになっている。場面場面で、心情が変わるヴォータンがいちばんの衣装もち。パリで見たオペラと重ねながら、パリとオランダの演出の違いも面白く、ミニシアターを二回も見てしまった。字幕なし、場面の転換も、衣装を見せることに重きを置いているので、みんなが楽しめるわけでもないのだが、私にはしっくりとして興奮してしまった。

家に帰って、家族に話をしていたら、うちにはたくさんの指環コレクションがあるが、日本人が衣装デザインをしているものがあると、差し出したのが、まさにEiko Ishioka コスチュームデザインだった。うちには何年も前からこのDVDがあって、それも私が購入したものらしい。

さっそく神々の黄昏を鑑賞する。最後にブリュンヒルデが火に包まれるところを深紅の布地をゆらゆらとさせながら、表現する。これは歌舞伎の手法だ。彼女の演出法には、能楽や歌舞伎のエッセンスが多いように思う。これも若いときには気づかなかったこと。

最後に図録を買おうと思ったら、在庫切れだった。小学館からの案内で
hontoから注文する。時間はかかるようだが、取り扱っているのがありがたい。最後の最後まで、ハラハラドキドキするのが、この展示会の魅力なのかもしれない。最高に楽しかった。自分の人生の振り返りもできて、開催してくださった関係者の方々に感謝する。

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