初めてのフリーハグ ~33歳トランスジェンダーの場合~
楽しいことしかやりたくない!みくです。今年のクリスマスイブにフリーハグをしてみました。フリーハグをするにあたって考えたことや実際にフリーハグをして学んだことのまとめです。フリーハグをしてみたい人はもちろん何かを伝えたい人にとっても参考になれば。
初めてのフリーハグ概要
私の初のフリーハグはこんな感じでした↓
日時:2023年12月24日(日)12:30-13:30頃
場所:神奈川県横浜市 桜木町駅東口
人数:21人(本人の記憶による)
準備期間と当日
フリーハグの企画から実施までには以下のようなことをしました。準備期間の内容は特に時系列順になってはいません。
フリーハグの動画を見る
そもそもフリーハグというものを知ったのも動画でした。いつだかYouTubeの候補に流れてきたのを覚えています。私のこんな文章を読むよりYouTubeで動画を見た方がよく分かると思います。今回私が一番参考にしたのはこちらの動画です。
他にもフリーハグ動画は色々と上がっているので見てみました。皆さんも自分がやりたいイメージに合うものを探してみてください。
フリーハグの本を読む
動画だけだと細かいところまでは分からないので本も読みました。こちらの本を書いた桑原さんは世界中でフリーハグを続けています。上で紹介した動画も桑原さんの動画です。本にはフリーハグをするにあたっての不安や緊張も書かれています。編集された動画で見られる感動的なシーンだけでは分からない部分まで知ることができました。この本のおかげでアイマスクの効果も知ることができました。
日時と場所を決める
まず日付は12/24(日)にしました。クリスマスイブです。今年はちょうど日曜日ということもあり人通りが多そうだからです。クリスマスという非日常的なシーズンにもあやかりたいと期待しました。時間は昼間にしました。寒いからです。場所は渋谷のハチ公前が定番ぽい気もしますが横浜にしました。子どもの頃から家族で遊びに行ったりと思い入れがあるからです。みなとみらいエリアの玄関口ということで桜木町駅にしました。渋谷を避けた理由には人が多すぎて怖いというのもありました。大学生になって初めて渋谷へ行きましたが昔からあまり好きになれないんですよね。やっぱり自分の気分が上がる場所というのは大事なポイントかと思います。また地元の駅前も避けました。知っている人に見られるのは恥ずかしいので。これはきっとハグする側も同じですよね。自宅や職場の近くだと知っている人に見られる可能性もあるわけで。普段行かないところ=観光地的なところの方が心がオープンになってハグしやすい気がします。
道具を買う
フリーハグをしているということを周囲に示すためにも看板が必要です。ということでスケッチブックを買いました。近所の文具店には大きなスケッチブックがなかったので藤沢の世界堂まで買いに行きました。買ってきたのはこちらです。
ちなみに当初イメージしていたスケッチブックはよく見るこちらの表紙のでした。
ただこちらは2つの理由から辞めました。最大でA3サイズだったので看板としては少し小さいこと。そして表紙が薄くて自立しない(するけど倒れやすい)ことです。オリーブシリーズはB3サイズまであるのと表紙が厚くて丈夫なので屋外で立たせるのに適していました。譜面台があれば胸くらいの高さに看板を掲げられるのでA3くらいの画用紙でも良いかもしれません。ただ譜面台を買うほどでも……と感じたのでそれはやめました。また上で紹介した本を参考にアイマスクも買いました。看板のメッセージを読んでほしかったからです。私に見られていると近くまで行って看板を読むのってためらわれますよね。ハグなんてしないけど何て書いてあるのかは知りたい(大半の人がそうだと思います)という人のために私は視覚情報を遮断しました。
伝えたいメッセージを書く
私が実際に掲げたメッセージはこちらです。
こだわったポイントは一文目の問い「あなたは自分の性別が好きですか?」です。それ以降はもはやおまけです。いかにセクシュアリティの問題を自分事として感じてもらうか。そして共感してもらうか。こちらの記事と動画に分かりやすくまとめられています。
もし「私はトランスジェンダーです」などと書いたら共感は得られないでしょう。また私自身もよく使っている「違和」感という表現もやめました。性別違和という言葉があるように違和感があるかどうかがシスジェンダー/トランスジェンダーの基準(?)になっています。そして99%くらいの方は違和感がないと言われています。対して「好き」かどうかを問うことで「違和感は無いけど改めて好きかと訊かれると……」みたいな反応が起こることを期待しました。
信じて待つ
フリーハグ当日。アイマスクをするというのにいつもよりしっかりアイメイク。JR桜木町駅東口を出て良さげな場所を探します。頻繁に来るわけではないので最初から場所のイメージがあったわけではありません。キョロキョロしながら決めた場所はエアキャビン桜木町駅と動く歩道の間の街路樹の前。看板を立ててアイマスクをして腕を広げます。そして待ちます。メッセージを読んだ誰かがハグしに来てくれるのを。やってみて分かったのですがこれかなり辛いです。斜め下45°くらいとはいえ腕を上げ続けるのがこんなにキツイとは。大学生時代に舞踏研究部(社交ダンスを競技としてやる)でホールドを保つ練習をしていなかったら数分で心が折れていたかもしれません。また途中で意識し始めたのですが指先までピンと伸ばして手のひらは少し上に向けるようにしました。最初は肘くらいまでしか意識が行き届いていなかった気がします。どれだけ頑張って腕を広げていても手に生気がなかったらハグしに行きにくいですよね。また肩を後ろに回して下ろした位置にすると腕が疲れにくいかもしれません(伝われ)。
実際の様子や聞こえた声
最初の2-3分は「こわ」とか「やば」とかいう通行人の声が聞こえてきました。そんなネガティブな声ですら反応があるというだけでありがたかったです。無視が一番辛いですからね。そしてさらに2-3分後。明らかに人が近づいてくる気配を感じました。そして次の瞬間。優しくハグされました。勇気を出して一歩を踏み出してくれたのでしょう。私が「ありがとうございます」と伝えると「頑張ってね」と言ってくれました。そしてすぐにもう一人。二人組だったようです。そちらの方も「頑張ってね」と言ってくれました。何かが一気に報われました。その後も少しずつハグしてくれる人が現れました。当初は30分くらいのつもりでいましたが気が付けば1時間。21人(たぶん)の勇気と優しさに触れることができました。21人のうち成人男性(声・身長的に)が2人。小さい子どもが1人。成人性別不明(声聞けなかった)が3人。残りが成人女性(声・身長的に)でうち外国人(英語話者)が3人でした。不思議なことに最初のうちはネガティブな言葉がよく聞こえていたのですが段々と聞かなくなっていきました。歩いている人自体はそんなに変わらないと思うんですけどね。心が苦しいときはちょっとしたことにも敏感になっているということでしょうか。聞こえてきた言葉で覚えているものを挙げてみます。
「こわ」
「やば」
「頑張ってね」
「ハグしたら?」「しねーよ」
「五条悟」←呪術回線(変換……)のキャラ
「頑張ってください」
「ピコン」写真か動画を撮る音
「えー泣いちゃう」
「Merry Christmas!」
「ほんもののひと?」
「うごいた!」
「寒いですよね」
「Free hug?」
スマホか何かで調べて「…She may be a transgender」
また看板を立ててフリーハグを始めるのも難しかったですが終わりにするのも難しかったです。最後のハグから2分ほど経ってからアイマスクを外した気がします。そしてせっかくみなとみらいまで行ったのですがすぐに帰りました。本当は大道芸を見たり赤レンガ倉庫行ったりしたかったんですけどね。さっき目隠しして立っていた人が普通にいる!と思われるのが嫌で。無駄なプロ意識とプライドが働きました。そこまでストイックにやる必要もないんでしょうけど。
おわりに
こんな感じで初めてのフリーハグは無事に幕を閉じました。仮にメッセージを読んだ人の1割がハグしてくれたとすると私のメッセージは200人くらいに届いたのではないでしょうか。またフリーハグをするかどうかは分かりませんが思い出に残るクリスマスになりました。読んでいただきありがとうございました。
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