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連載小説 砂上の楼閣8
『発端3』
結局あの後、心当たりを探すという事で、充とは別れた。
俺は近隣を捜索しながら、その日の夕方バイト先に向かった。幹線道路にあるガソリンスタンド。
心当たりとは、ここに毎日やって来るセンチュリーだ。運転手らしき男が後部座席に乗せてくる女。
藤女の制服だった。松永清香。あの松永グループの令嬢。1度だけ声を交わした事がある。
車の中に蜂が入ってしまい、後部座席から飛び出てきた彼女とぶつかった。
「ごめんなさい!虫が苦手で。」
いつも無表情な彼女が、初めて見せた反応だった。それ以来、俺の心に住み着いた。
声を交わしたのは、後にも先にもその一回だけ。先輩から彼女が1つ年上で3年生である事を聞いた。
そのセンチュリーが今日はこない。
『先輩。今日は、あのセンチュリー来ましたか?』
「いや、そう言えば見てないな。」
やはりか。間違いであって欲しい。しかし………。
春彦は最悪の事を想定している自分の頭を、何度も何度も振り続けた。