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連載小説 砂上の楼閣6

『発端1』

10年前、暮れも押し迫ったある夜、俺は取得したばかりの免許で250cc(ニーハン)を流していた。バイト帰り、真っ直ぐ帰りたくなかったのだ。

最もバイクもバイトも高校生の春彦にはご法度ではあったが、若気の至りということで許して貰いたい。

幹線道路を流していると、突然路地から黒のワンボックスカーが飛び出てきた。

何とか避けて停車し再び前方を見ると、歩道を歩いていた女性がワンボックスカーに引き込まれた。

一瞬唖然としたが、女性が拉致されたのは一目瞭然だった。しかも制服だったように思う。

俺は無意識のうちに車を追いかけていた。後ろから様子を伺うも、窓が黒塗りで中は見えない。

そのままの状態で追跡を続けた。5分程、幹線道路を走り赤信号に差し掛かった。しかしワンボックスカーは一瞬スピードを緩め、再び加速していった。

俺も続こうとしたが、青信号で走り出した車が多く続けない。結局見失ってしまった。



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