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連載小説 砂上の楼閣17

『真実3』

札幌駅から中島公園へ向かう通称·駅前通りを突き当たり、右へ曲がった左手に高層のシティホテルがある。

清香はあれ以来、自宅へは戻らずそこの30階に部屋を取っていた。

窓辺のソファーに腰掛けながら、ロックグラスに半分ほど注いだスコッチを舐めていた。

窓外には生まれ育った街の夜景が広がる。清香はあの夜の事を考えていた。

山上充と名乗った。
河村から救い出してくれた男。もしかしたら10年前、私を救ってくれたのも彼なのでは?

私を抱え階段を下りる姿を思い出す。僅かに残っていた意識の片鱗を必死で辿るが確信は持てなかった。

あの後、河村との事情などを彼に話し、連絡先も交換した。

しかし彼は自分の事をほとんど話さなかった。何故あの場所にいたのかも。結局、何一つ整理出来ずに夜は更けていった。

程よく酔いも回り眠りに就こうとした頃、スマホが震えた。

「清香。いつまでそうしているつもりだ。」

父の泰三だった。

「経団連の理事が内定した。年明けの松永グループ結成30周年と併せてパーティーを開く。それまでに河村君との事、しっかり考えろ!」

いつも通り。自分の都合しか考えない。お母さんだって見殺しにした男だ。

『あんな男と私は結婚しない。貴方の思い通りにもならない。松永グループなんて関係ない。』

清香は感情を抑えながら淡々と答えた。

泰三は暫く黙っていたが、

「お前の意思など関係ない。物事は既に動いている。」

そのまま通話は切れた。

さっきまでの酔いは、すっかり醒めていた。






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