見出し画像

#12 男を鍛え・女を磨く?(富士山御殿場口登山道新五合目: 人間交差点2021)

 開山二日目、昼の12時から夜の9時までの遅番勤務が始まった。駐車場方向からやってくるのは、家族連れ・若い男女のグループ・カップルがほとんどで、登山者の姿は見えない。下山者はポツリ・ポツリとやって来る。「お疲れ様」、「足は大丈夫ですか」「ご気分は?」と労をねぎらう言葉をかける。「ありがとう」「だいじょうぶ!」「サイコー」などと、みなさんの気持ちを答えてくれる。多くの下山者が鳥居をくぐった後に富士山方向に一礼し、バス停横の待合所で疲れた体を休める人、駐車場方向に行く人とまばらだ。時折、短パン・ランニングシャツ・運動靴姿の人たちが鳥居の下を駆け抜ける。鳥居の下を通過するときに、一様に時計に手をやる。タイムを計っているのだ。「4時間45分だ」とつぶやいて駐車場方向に走り去って行く。鳥居下から山頂まで駆け登り下ってきての所要時間らしい。いろいろな人がいるものだ、と感心していると、山ガールと思しき女性2人が下山してきた。
 
「お疲れ様でした!」と声をかけると「ほんまに疲れたわ」と関西弁が返ってきた。
咄嗟に「大阪でっか?」と聞くと「大阪ちゃう 浪速や」と陽気な返事。続けて「この大砂走は、ごっついキツイなあ、富士宮口から登って、ここに下りてきたんやけども、足がパンパンや」二人の口は止まらない。「こんなとこを走っておりてた男はんがいはったんやけど何しとんのかいな?」 すかさず中畑さん「大砂走はいま、お二人が経験されたように、大変厳しい登山道です。彼らは頂上まで走って往復し、心と体を鍛えているのです」「フーン 男はんが心と体を鍛えてるんやったら、私らオバハンはどうすんの?」 不意の口撃に「山ガールの皆さんは・・・女を磨いて・・・・・」と言葉に詰まると、「あははは、わたしら山ガールとちゃうねん。山姥(ヤマンバ)やで」「そや そや」と取り付く島もない。「そや これから温泉に入って女を磨こうな。」 「そやな、全身ピカピカに磨こかな」 「アカン アカン 全身ピカピカにしたら、眩しくて誰も見てくれん、どもならん」 「そやなあ」「そや 楽しめたから、1000円寄付してゆこか」 「そうしよ そうしよ」と、 2000円を募金箱に。「ほな いまから女を磨いてくるわ。アハハ」 「また来るで!アハハ」と二人で掛け合い漫才をお開きにすると、「アハハ」「アハハ」と笑いながら駐車場方向にきえた。
 
恐るべし 浪速の山姥 

いいなと思ったら応援しよう!