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あなたのものがたり
これは、あなたのものがたり。
セカイヲ、シアワセデミタス、あなたのものがたり。
さあ、このページをめくってください。
あなたが、納得できますように…
【キャッチコピー】
どこにでもいる、それでいて、かけがえのない、あなたのものがたり
【あらすじ】
この物語は、一人の男と、一人の女の、愛の物語です。
二人は愛し合い、別れ、やがて一つになります。
その愛は、セカイヲ、シアワセデ、ミタシマス。
それが、あなたのものがたり。
この物語の主人公は、あなただからです。
あなたは、“スズキタロウ“さん。コードネームは“ジョーカー”。
世界に出現した、変異体(ミュータント)を、この世から消すために、あなたは生まれました。
あなたは、対変異体特殊部隊『C.A.R.Ds(絶滅した種、その覇者が食するデザート)』の一員です。
C.A.R.Dsは、変異しても自我を失わないミュータントの部隊。
それはエースからジョーカーの14名で成り立つ。ジョーカー以外は、記憶を失っている。皆は共闘し、その中で過去を少しずつ取り戻す。
ジョーカーは、サイコダイブという、特殊能力を持っている。それは、他人の記憶を読み取る能力だった。彼は、その能力で、他人の記憶を統合し、みんなよりも詳しく過去を知っていた。
ジース(フランス語で10)は、過去にジョーカーが裏切り、組織が散り散りになったことを思い出し、運命を操る能力でジョーカーを追い詰める。そして、再びみんながお互いを消し合う。
ジョーカーは、サイコダイブ能力は、魂を吸収する能力であることに気づいていた。かつてそうしたように、彼は、消された一人一人を吸収していく。
ジースとセブンを除く全員を吸収する。そして、ジースを吸収する。セブンを残し、ジョーカーは、世界を呪い、神と対峙し、吸収する。神となったジョーカーは、セブンが記憶を操る能力を持っていること、ジョーカーを含む全員の記憶を書き換えていたことを知る。過去に過ちを犯した時に、それをジョーカーが望んだからだった。神となったジョーカーは、半壊した世界を振り返り、全知全能の力を捨てる。自分の功罪を受け入れ、そして、ヒトとして荒廃した世界を再建することに、残りの生涯を捧げる。
第1話のストーリー
これは、あなたのものがたり。
セカイヲ、シアワセデミタス、あなたのものがたり。
さあ、このページをめくってください。
あなたが、納得できますように…
「激しい喜びはいらない…そのかわり、深い絶望もない…植物の心のような人生を…そんな平穏な生活こそ、わたしの目標だったのに…。」
これは、わたしのものがたりだ。
目の前の“ノルン(フランスの、運命の女神)”を見ながら、私は思っている。
(不思議だ…)
(なぜ?)
(なんで、タナカさんは、みんなを巻き込んだんや…)
あんなに優しかった、タナカさんは、いま、わたしをこの世から消そうとしている。
今に始まった事ではない。ぼくが、笑った時からやろうな…
「タナカさん、ごめんな。ちゃんと向き合わなくて、ほんまごめんな。」
「そして…こんな、ぼくを…アイしてくれて…ありがとう!」
次に起こることを想像するのは、難しい。ぼくは、彼女を、わかっていない。ただ愛し、ただ愛しただけだったから。
“ノルン”は、Retour(先祖返り)した。私は、日本語で、それを先祖返りと呼ぶ。
彼女は、それを、フランス語で呼ぶ。
彼女は、フランスに憧れていた。大学生の時、留学したくらいだから、相当だろう。
自由、平等、博愛。トリコロールに象徴される、その精神は、彼女と親和性が良かったのかもしれない。
一糸纏わぬ女性がそこにいる。久しぶりにみる、タナカさんは、綺麗だ。
初めて会った時は、不美人だと思った。目が細かったからだ。
170センチの長身、細く長い、整った体型。聡明さを象徴しているような、富士額。瓜実型の顔、くっきりと濃い眉。
完璧な日本美女。
今は、そう思う。
…彼女は、激しく怒っているように見える…もはや、精神のバランスすら保てているか、怪しく感じられる…
肩は震え、目つきは異様に鋭い。アドレナリンの強い刺激臭を感じる…今にも、飛びかかってきそうだ。
「ゆーっくり。いきたら、ええんやで〜」
ジース(Dix:フランス語で、10の意味)は、少し、ゆっくりになった。
しばらくの沈黙ののち、私は、ことばを、なげかける
「ゆーっくり。いきたら、ええんやで〜」
また、ゆっくりになる…
「ゆーっくり…いきたら…ええんやで〜〜…」
肩の震えは、収まったようだ。目つきも、柔和になっている。
話が通じそうだ。
第2話のストーリー
わたしのものがたり ジース
これは、わたしの、ものがたり。
許せない…
あの笑顔…誰よりも優しかった、あの笑顔は、もう、ない。
あざ笑う、人を見下した、あの笑顔…許せない…
どうして『30分』だけなのよォオオオ~~~~~~~ッ!!
あいつは、私を、裏切った。
思い出した。そう、あいつは裏切った。
心の底からただ愛し、ただ愛した私のこころを、裏切った。
だから復讐するの…地の果てまで追い詰めて、コロシテヤル…
「きみの名前は、『テン』ですよ。対変異体特殊部隊『C.A.R.Ds』。Conquerer of Annihilated Race's Deserts…”絶滅種族を征服する者のデザート”の、隊員です。」
わたしは、「テン」?
眼の前の、銀髪の男が、言う。
190センチはあろうかという長身。白衣を纒い、その下にはスカイブルーのワイシャツ、グレーのパンツが似合う、年齢不詳の人だ。細い銀縁眼鏡に知性を感じる。薄い唇に、鷲鼻…
…メガネをかけているのに、ハンサムだ。
「わたしを、シエロと呼んでください。私は、変異体研究機関『Cassino(カッシーノ)』所長…かな?まぁ、一人で全部やっている。一人親方でもいいか。」
なにをいっているの?
変わっている…
そのおとこは続ける
おいオメー さっきから うるせえぞ 「ブッ殺す」「ブッ殺す」ってよォ〜〜〜
殺風景な部屋だ。整理されているが、コンクリートがむき出しの、ただの雑居ビル。小さなテーブルにノートパソコン、30インチ程度の大きなディスプレイや、タブレット。様々なガジェットが整然と配置されている。
「君が知っている通り…遺伝子が覚えているはずだよ。この日本には、『ガス』と呼ばれる、人を変異させる気体が発生している。それは、ヒトに取り憑き…ポゼッションと呼ばれる現象だよ…ヒトを、神話に出てくるナニカに替える。例えば、天使…例えば、悪魔。そして、ポゼッションが起こると、ヒトは変異する。これを、ミューテーションと呼ぶ…どうでもいいが。ミューテーションしたナニカは、変異体…ミュータントだ。簡潔に言おう」
簡潔じゃない。
「きみは、ミュータントを消す。それが、きみの仕事だ。」
知っている…何故か知っている…
「ミュータントになると、ヒトは自我を失う。だが、きみは、君たちはというべきだな。失わない。」
知っている…私は、ノルン?ちがう、ニケーになる。わたしは、ニケーというナニカになる。
勝利の女神。フランスの女神だ。
「普段、ヒトは銀製品を身に着けて、ポゼッションを防ぐんだ。だが、幸せか不幸せか、銀製品が身近になければ、ヒトはガスに取り憑かれる…そして、ミューテーションを起こし、ミュータントになる。」
そのミュータントをコロスってこと?
「…そうだ。」
いやだ。
「いやじゃない。そうだろう?」
いやなやつやな…どうせ、「いやなやつではない」とかいうんやろ。
「君のような、勘の良いこどもはきらいだよ」
ウソだ…わらってる…
「うそだよ。ほんとかも?どっちだろう?」
ヒトをバカにしている。
私は、消したい。ミュータントを消したい。相棒が欲しい。なんでもわかる、こころの通じる、相棒。
「1人、君に紹介するよ。『ジョーカー』だ。挨拶してくれるかな?」
「ひ…おはこんばんちは。スズキタロウです。」
いいひとだ。そうおもう。笑顔が優しい。誰よりも、優しい笑顔だ。
スキだ…
あたしは…?あたしは、テン?ニケーのミュータント。C.A.R.Dsのたぶん…
「じゅうばんめ。ぼくは、14番目。よろしく」
いい人だ。
180センチの長身痩躯の痩せこけた、それでいて筋肉質な男の子だ。色白で、切長の目をした薄い唇。面長で、顎が尖っている。冷たい印象を受けそうな顔なのに、いい人だと思う。笑うと、誰よりも優しい笑顔を見せてくれるから。
「C.A.R.Dsは、僕で最後。」
私以外に、エースからキング、そしてジョーカーの、スズキタロウくん。cardsってことは、日本語でトランプのことやろ?
「ご推察の通り。相変わらず。」
あいかわらず?
「なんでもないよ。こっちの話。ほな、けしにいこか。」
うん。
話が通じそう…いい人だ…
先にオレが好きになるから、 向こうも好いてくれる。