アルジャーノンに花束を ダニエル•キイス
「どおかニーマーきょーじゅにつたいてくださいひとがわらたり友だちがなくてもきげんをわりくしないでください。ひとにわらわせておけば友だちをつくるのわかんたんです。ぼくわこれから行くところで友だちをいっぱいつくるつもりです。」
これは本書の最後から2番目の文章である。この文章はチャーリーの人生に対する結論だと思う。
知的障害をもつチャーリーは利口になりたいと願っていた。利口になれば母や家族が喜び,また友達もたくさんできると思っていた。そこで彼は知能が向上する手術を受け彼のIQは急激に上昇した。知能が上がると彼は周りの人が自分と一緒に笑っていたのは彼の白痴をばかにしていたためであると知る。また,母は白痴であるチャーリーを人間として認めず,虐待のような行動をとられ家を追い出されたことに気づく。これに彼は絶望し,憤慨し,IQが高くなっていくにつれて彼の思考にだれも追いつけず傲慢になっていく。彼は町で見かけた知的障害の子に対してもあざ笑うようになっていき,彼の周りに人はいなくなる。彼は孤独になった。しかし,手術の欠陥でIQが急激に減少していくことになる。手術前のようにチャーリーが白痴に戻ると,彼の周りに人ができるのである。
彼はこの経験を通して人生に大切なことは知能ではなく人との繋がりであることに気づいたのである。たとえ,自分を嘲笑しているのだとしても,相手が笑っていれば友達になることができる。孤独になるよりは,たとえばかにされていても人との繋がりがある方が素晴らしいと彼は結論づけたのである。彼は知能を向上させない方が幸せだったのかもしれない。知能の向上,名声などは幸せに比例するものではないと考えさせられた。
もう一つこの本から学んだことは,人は進化すると前の自分の気持ちを忘れてしまうということである。チャーリーは白痴であることを嘲笑していた人達に憤慨していたのに,知能が向上すると彼らと同様に気づかぬ内に嘲笑する側の人になってしまっていた。嘲笑される側の気持ちを忘れてしまったのである。立場が変わると人は変わってしまうのである。これは,私たちの周りで世代が変わっても同じ問題が繰り返される原因であると思う。立場が変わると周りの環境が変わり,責任が変わり考えも変わる。これは当然のことであるが,前の立場だった頃の自分を思い出し,その経験をふまえて生かしていくことは自分のためにも周りの人達のためにも忘れてはならない大切なことだと思う。