見出し画像

ナナとミライの占い探検記 vol.7 - 九星気学吉方位編

プロローグ:吉方位貯金!?

ある日、ナナはふと九星気学の話題を思い出した。
とあるSNS投稿で「日盤吉方位取りで吉方位貯金」というワードを偶然目にし、“毎日のちょっとした行動で運を取り込む”というフレーズに衝撃を受けたのだ。

 「日盤吉方位取り……そういえば昔、九星気学で“凶方位”とか“吉方位”とか学んだけど、ちゃんと使いこなしてはいなかったな」
 高校生になってからのナナは、西洋占星術やタロットをメインにすることが多かったため、気学の方位どりを“引っ越しや旅行のときくらいに使う占い”だと思いこんでいたのだ。

 「毎日でも実践できるなら、ちょっと試してみようかな」
 好奇心旺盛な彼女の中で、再び“気学の炎”が燃え出した瞬間だった。ナナはさっそくミライに連絡を入れ、二人で“日盤吉方位取り”を学ぶ計画を立てることにした。


第1章:再燃する九星気学への興味

 放課後、ナナは校門を出ると同時にスマートフォンを取り出し、ミライにメッセージを送る。「日盤吉方位取りって知ってる?」と尋ねると、ミライからの返信は早かった。

ミライ:「うん、知ってる知ってる。毎日使う人もいるみたいだよね。私のサークルでも興味ある子いた!」
ナナ:「実は最近、ネットで見かけてさ。毎日通学前に“吉方位”へ行くと運が上がるって……ちょっと興味あるんだよね」
ミライ:「OK! じゃあ週末に会おうよ。うちの大学近くにいいカフェがあるし、そこでじっくり話そう!」

 そんなやりとりをしながら、ナナは部活を終えた足で急ぎ帰宅した。
 九星気学……以前は「本命星」だとか「五行」だとか「凶方位が多い」だとか、ちょっと毛色が違う占いに戸惑った記憶もある。でも、当時小学生だったナナと、まだ中学生だったミライでは、時間的・行動的な自由度も少なく、深く実践するまでには至らなかった。

 今は高校生と大学生。行動範囲も広がり、スマホアプリも充実している。もしかしたら“気学を本格的に日常で使うチャンス”なのかもしれない――ナナはそんな期待に胸を膨らませていた。


第2章:大学のカフェでの再会

 週末、ミライの通う大学の近くには、おしゃれなカフェが立ち並ぶ一角がある。レンガ造りの建物をリノベーションしたカフェ「Cozy Nest」は、ミライのお気に入り。ナナは電車を乗り継いで大学駅に降り立ち、徒歩5分ほどの場所でミライと合流した。

「わあ、ここがミライの大学かあ……建物が大きいね。駅からの道もにぎやかだし」
「うん、高校とはまた違った雰囲気でしょ? じゃあカフェに入ろっか」

 ミライは大学で得た知識や体験を早口でナナに紹介しながら、扉を開ける。“Cozy Nest”の店内は木のぬくもりを活かした内装で、ほどよく落ち着いた空気が漂っている。ベーグルやマフィンの香りが食欲をそそる。

 二人は席に腰を下ろし、ナナが注文したホットラテと、ミライが頼んだ豆乳ティーラテが到着すると、さっそく“日盤吉方位取り”の話題へ。

「で、ナナはどんなふうに実践したいの?」
「うーん、まずは通学前にどっか寄ってみるとか……でも実際どうやるのか詳しくわからなくて。調べてみると“自宅から750m以上離れた場所で20分以上滞在”とか、“吉方位の土地の気を飲食で取り込む”とかいろいろ出てきて、ちょっと戸惑い気味」

 ナナの声には半分ワクワク、半分困惑が混ざっていた。ミライは苦笑しつつ、タブレットを取り出してメモを見せる。

「私もざっと調べたら、

  1. まず自分の“本命星”を確認する(これは知ってるよね?)

  2. 毎年、毎月、そして毎日の“吉方位”を割り出す(年盤・月盤・日盤)

  3. 日盤はさらに細かいから、専用アプリやツールでその日の吉方をチェック

  4. 自宅から750m以上離れた吉方位に行く

  5. 20分以上滞在&飲食すると“気”を取り込める

  6. これを“吉方位貯金”と信じて継続する
    ……みたいな手順になるらしいよ」

「なるほどねー。西洋占星術とはまた違う仕組みだね。なんかルールが多くてちょっと大変そうだけど、興味あるからチャレンジしてみたいな」

 ナナはそう言いながら、早速スマホで“九星気学 日盤 アプリ”と検索をかける。いくつかヒットしたアプリやWebサイトをチェックし、「とりあえずこれをダウンロードしてみよう」と決めたようだった。


第3章:高校生と大学生の日常

 カフェでの話し合いを終え、アプリの使い方や基礎知識をざっくり理解したナナとミライ。だが問題は、それをどう日常に組み込むかである。

「ナナは今、平日の朝って忙しいでしょ? 部活もあるし、予鈴ぎりぎりまで寝てそう……」
「うっ、痛いところ突くね。実際そうなんだけどさ。でも、日盤吉方位取りするなら、ちょっと早起きしなきゃだよね。私、頑張れるかな……」

 ナナは小学生時代から夜型の傾向があった。一方、ミライも大学のレポート締め切りやアルバイトのシフトなどで毎日が慌ただしく、安定した時間が確保できるわけではない。

「私も余裕あるわけじゃないけど、でも気学って“生活に取り込む”のがポイントだと思うの。わざわざ頑張りすぎなくても、通学途中やバイトの前にちょっと寄り道したり、アプリで“吉方位のカフェ”探してそこで勉強したり……そういう感じで実践できれば面白いかも」

 ミライの提案に、ナナの目が輝く。「あ、それいい! わざわざ遠出するんじゃなくて、普段の行動にプチ工夫するだけならやりやすそう」

 二人はそこから1時間ほど、具体的にどう動けるかをアイデア出しした。たとえば、

  • ナナ:朝練がない日は30分早起きし、自宅から見て吉方位にあるコンビニに寄り道して朝食を買う。

  • ミライ:大学の空きコマを利用し、吉方位にあるカフェでレポート作成をする。

  • 夜、バイト帰りに吉方位のスーパーで買い物するのもアリ?

  • 週末に「一日吉方位めぐりの散歩」をしてみるのも楽しそう。

 そんなふうに、無理のない範囲での気学生活を模索する二人。高校生と大学生の忙しい日常だからこそ、「大がかりな引っ越し」や「長期旅行」ではなく、小回りの利く“日盤吉方位取り”が活きるのではないか――そんな確信を得たのだった。


第4章:凶方位に対する抵抗感

 しかし、気学といえば“凶方位”の多さが気になるところ。日盤でも「五黄殺(ごおうさつ)」「暗剣殺(あんけんさつ)」「本命殺(ほんめいさつ)」など、避けたい要素がいくつも出現する。

「正直、西洋占星術だと“ハードアスペクトは試練だけど活かせる”みたいにポジティブに考えるじゃない? でも気学は“行くとヤバイ”みたいに言われるから、ちょっと嫌だなあ……」
 カフェのテーブルでそう漏らしたナナに、ミライもうなずく。

「たしかに、私も最初は『凶方位多すぎ!』『ネガティブ要素強い!』って思った。でも、気学を深めてる友達が言うには、日盤凶方位“はできれば避けたい方向”ってだけで、“絶対行ったら不幸になる”わけじゃないんだって。引っ越しとか、人生変わるような大きな動きではないから。」

 ミライが受け売りで教えてくれたのは、「凶方位だからといって必ず悪いことが起こるわけではなく、心構えや対策があれば十分カバーできる」という考え方。九星気学はもともと、街の地形や建築・家相なども含めて「自分のいる環境」を見る占いなので、ある程度ネガティブな警告が多いのだという。

「でもさ、学校とかバイト先の方角が凶方位ってなったら回避できないよね?」
「うん。でも事前に“吉方位に寄り道してから行く”とか、“凶方位の前に別の方角へちょこっと行く”とか、いろいろ技があるらしいよ。そうやって少し工夫することで、凶方位の影響を緩和しようって感じかな」

 ナナは少し首をかしげつつも、こう考えた。「まあ、毎回完璧に凶方位を避けるなんて無理だし、そこまで神経質になる必要はないかも。何より“吉方位”を活かすことのほうが楽しそうだし!」

 そうやって、二人は“日盤吉方位取り”をポジティブに捉えつつ、無理なく取り入れる路線で進むことに決めた。


第5章:初めての日盤吉方位取り体験

 それから数日後、ナナは高校の授業が始まる1時間前に家を出発。いつもより少し早起きできたのは、占い好きの好奇心のおかげだろう。
 スマホのアプリでその日の“日盤”をチェックし、自宅を中心として「南東」が最も良い方位だと判明。750m以上離れたコンビニがちょうど南東に位置していたため、そこを目指して歩き出す。

 「普段は北西方向に通学してるから、南東方面にはあんまり用がなかったな……」

 スマホの地図を見ながら歩くと、細い路地や小さな公園、地元の人しか知らない隠れ家カフェなど、新鮮な発見が目に入る。15分ほどで到着したコンビニで、軽い朝食と温かい飲み物を買い、店先のベンチでゆっくり過ごす。

 「あと20分以上ここで滞在すればいいんだよね……」
 コンビニに長居するのは少し気が引けるが、店内にはイートインスペースもあるし、さほど混んでもいない。スマホでニュースをチェックしたり、今日の時間割を見返したりして過ごすうちに、あっという間に20分が経過。

 「よし、なんだか新鮮かも。さっそく学校行こ!」

 ナナは気持ちよく朝食をとったことで、いつもより一段と元気が湧く。学校へ向かう道は普段通り北西方面だが、「先に吉方位でエネルギーを取り入れた」というプチ成功体験が自信をくすぐるのを感じた。


第6章:ミライの“大学生ライフ”での活用

 一方、ミライも同じ頃、大学の授業が休講になった空き時間を使って“日盤吉方位取り”を試していた。
 大学のある街は知らない店も多く、カフェや雑貨店めぐりが趣味の彼女にはピッタリの実践法かもしれない。

「今日は私も南東がいいっぽい。うちのアパートから南東だと……お、パンケーキが評判のカフェがあるじゃん。行ってみよう」

 アプリの地図を頼りに15分ほど歩くと、オシャレな外観のカフェ「Sunny Morning」を発見。人気店なので混んでいるかと思いきや、平日の昼前という時間帯もあってか、待たずに席に通された。

 「ここで20分以上滞在して、軽く食事かお茶をすると吉……だったわよね」
 そんな独り言を言いながら、ミライはパンケーキと紅茶を注文。ふわふわのパンケーキを一口頬張ると、口の中にやさしい甘みが広がる。

 「勉強ばっかりでストレス溜まる日々だけど、こういう形で“自分を喜ばせる時間”を持つのって大事かも」

 もともとミライは“占いを実践して自分をケアする”のがうまいタイプだが、“日盤吉方位取り”という形でまるで小さな冒険をするようにカフェ探索するのは新鮮な体験だ。

 「ああ、美味しい……。これが“吉方位の気を取り込む”ってやつかぁ。あながち悪くないね」
 ちょっとしたご褒美時間を終えたあと、大学に戻ってレポート執筆に励む。すると不思議と集中力が高まり、スムーズに文章が進む気がした――もちろん、気のせいかもしれないが、「自分は吉方位でエネルギーを補給した!」という心の持ちようが大きなプラスになるのだろう。


第7章:制限を楽しみに変える視点

 日盤吉方位取りを始めて1週間ほど経過。ナナとミライは、ちょっとした感想をLINEで交換していた。

ナナ:「最近さ、家の近所の道が面白いって気づいた。わざわざ“行きたくなかった”方角にも、実は美味しそうなパン屋さんや、変わった建物があったりしてさ。学校の友達に『何でこんなとこ知ってんの?』って驚かれたよ(笑)」
ミライ:「それわかる! 私も『あっち方面は普段行かないな』って思ってたのに、行ってみると新しいお店や公園を発見できる。なんか“凶方位避け”ってネガティブに考えるより、“吉方位を楽しむ”ほうが断然いいよね」

 九星気学は、方位の吉凶を厳格に見てしまうと「行きたい場所がどんどん制限される」という印象を受けがちだ。だが、二人はその制限を逆手にとって「いつもなら行かない場所へ行く動機」にしている。まるで未知の世界を探検するかのように、街をフットワーク軽く歩き回っているのだ。

 こうした散歩や寄り道を続けるうちに、ナナは「地形や道の形状、店舗の配置、風の吹き方」など、以前より地元の街並みに敏感になっている自分に気づいた。単なる“占い”の枠を超えて、地域への愛着や探究心が深まるのは嬉しい副産物だ。

 ミライも、大学がある街を拠点にした「日盤吉方位取り」を実践する中で、これまで訪れなかったエリアを開拓。新たにお気に入りの書店やギャラリーを見つけては、SNSに写真をアップして楽しんでいる。「こんな素敵な場所があったなんて知らなかった!」と大学の友人たちにも評判で、気学とは別の意味でも充実感を得ていた。


第8章:偶然の再会と大気を感じる瞬間

 ある週末、ナナは“日盤吉方位取り”の延長で、電車を使って少し離れた街へ行ってみた。アプリによると、その日は「西」の方位が吉。家から西へ乗り換え1回の小さな町に、公園があるらしいという情報を見つけ、散策を思い立ったのだ。

「よし、ちょっとした小旅行みたい。せっかく高校生になったんだし、行動範囲を広げてもいいよね」

 電車で15分、駅から徒歩10分の公園は、思いのほか広く緑が豊か。紅葉が色づき始めており、街の喧騒から少し離れた穏やかな時間が流れている。そこでジュースを買おうと自販機に近づいたナナは、思わず声を上げた。

「えっ、ミライ!?」

 なんとミライも同じ公園に来ていたのだ。彼女は大学の仲間たちとの集まりが終わり、ちょうど帰る前に寄り道をしていたのだという。

「わはは、ナナこそ何でこんなとこに?……ああ、もしかして日盤吉方位取り?」
「うん、そう。ここ西方向だし、ちょっと散歩しようかと思って! ミライは?」
「私は友達とランチしてたんだけど、その友達がこの方向に住んでて……そこからこっちに来るのが今日の吉方位かなーって思って。そしたら偶然、同じ公園に来てたわけよ」

 お互いに住んでいる場所が違うのに、たまたま同じ公園で鉢合わせ、、、不思議な縁を感じる。ナナとミライはベンチに腰掛け、持参したドリンクを飲みながら、風に揺れる木の葉を見上げた。

「気学ってさ、目に見えない“気”が流れてるって考え方じゃない? でも、こうやって歩いてると、風を肌で感じたり、町並みを見渡したりして、“大気”を意識するようになるよね」
「うん、私も最初は『方位なんてただの方向じゃん』って思ってたけど、実践してると妙に空気の流れを意識するようになった。まるで西洋占星術の星空を見上げる感覚が、地上の風景に置き換わった感じ」

 二人は微笑み合いながら、小一時間ほど公園を散策。たまたま同じ場所に来ること自体、面白い“シンクロ”だと感じ、気学が導いた偶然にちょっぴりテンションが上がるのだった。


第9章:高校生・大学生としての葛藤とネガティブ方位

 もちろん、毎日がバラ色に進むわけではない。期末試験や課題、部活、受験準備、アルバイト……。ナナもミライも、それぞれの責任やプレッシャーを抱え、心身が疲弊することもある。
 ときには「今日の出先が凶方位だった」なんてことがアプリに表示されて、気分が沈む日もある。

 「明日の行き先が凶方位って出ちゃった……どうしよう。寄り道できる時間もないし……」
 ナナがLINEに嘆きのメッセージを投稿すると、ミライから「気にしすぎなくてOK」「帰りに好きなスイーツ買うとかでリフレッシュしなよ」などのアドバイスが返ってきた。

 気学の凶方位は、“そこに行くと必ず災難が起きる”という意味ではない。あくまで「運気が低迷しやすいかもしれないから気をつけよう」というサインに過ぎない。

 もっと言えば、「凶方位=悪」ではなく、そこに隠れた課題や学びがあるかもしれない――西洋占星術のハードアスペクト同様に、捉え方次第で“自分を成長させる試練”になり得るのだ。

 「高校生って、ただでさえ進路とかで不安多いし、メンタルも揺らぎやすいし……凶方位まで気にしてたらストレスたまるよね。でも占いって、うまく使えば逆にストレスを軽くしてくれる道具だと思うんだよね」
 ミライの言葉は、まさに大学生としての“余裕”が感じられる。一歩先を行く先輩としてのアドバイスに、ナナは素直に助けられることが多い。

 「そうだね。あんまり怖がるより、上手に使いこなしてみるよ。まずは『凶方位でもへっちゃら!』くらいに気楽に考えるようにして、実際は“吉方位取り”をメインで楽しもうっと!」

 ナナの声には、少し大人びた決意が宿っていた。


第10章:続けるうちに見えてきた変化

 “日盤吉方位取り”をゆるく継続して2か月ほど経った頃、ナナとミライはお互いにある共通の感覚を覚え始めた。

 「なんか、運が良くなった……というより、心に余裕が出てきた気がするんだよね。大変なことあっても、前よりへこまないというか」

 具体的な成功例としては、ナナが「部活の大会で予想外の活躍をして顧問に褒められた」「いつも苦手だった科目のテストで思った以上に点が取れた」など、地味だけど嬉しい出来事が増えている。一方のミライも、「バイト先で評価されてシフトが選びやすくなった」「サークル内で企画を提案したら通った」など、ちょっとした追い風を感じているらしい。

 もちろん、どこまでが“日盤吉方位取り”の効果なのかは分からない。人によっては「ただのプラシーボ効果では?」と突っ込むだろう。だが、占いとはもともと「自分に自信を持たせる道具」の一面がある。

 それこそが「吉貯金」の概念だろう、、、少しずつ日々積み重ねることで、“自分はちゃんと運気を育てている”というセルフイメージが形成され、いざというときの踏ん張りが利く。
 高校生と大学生という未来への期待と不安が入り混じる時期には、そういう“自分を支える心の柱”がとても大切なのかもしれない。

 「私、もし急に大きな挫折が来ても、『でも毎日ちょっとずつ運を貯めてきたし』って思えるようになったんだよね。これはすごいことだよね?」
 ある日、ナナが放課後にミライと電話で話しながらそう言うと、ミライも大きく同意した。

 「うん、私も同じ。占いって当たるとか当たらないとか言うけど、それだけじゃなくて『自分に安心感をくれる』っていう役割があるんだと思う」


エピローグ:ローカルコスモスとの対話

 2031年10月も終わりに近づき、街路樹がさらに色づく季節。二人の“日盤吉方位取り”ライフは、静かに続いていた。
 ある週末、ミライはふとこんなことを呟く。

 「西洋占星術は宇宙っていう大きなマクロコスモスと対話する感覚だけど、九星気学はローカルコスモス――つまり自分の身の回りの街や地球の一部と対話してる感じがするね。まるで足元の“星空”を見てるみたい

 ナナもその言葉に深く同意する。
 「うん、私もそう思う。気学って、宇宙のリズムも使うけど、実際は『自宅を中心に八方位を意識する』でしょ? そうすると、街の地形や道路、建物に対する見方がすっごく変わる。これこそローカルな世界とつながる占いだよね」

 二人は久しぶりに同じ日に予定が空き、少し遠出をして「吉方位巡り」をすることにした。電車に乗り、地元を出て、目的地はナナのアプリで示された“北東”方向の山あい。そこに温泉街があるらしく、ちょっとした観光を兼ねて行ってみるのだ。

 山道のドライブウェイや、川辺の小道を歩くうちに、日常の喧騒を離れ、自然の風や土地のエネルギーを心と体で感じる。古い旅館の軒先で出ている湯けむりに触れ、地元の人と会話を交わすと、まるで昔にタイムスリップしたような気持ちにさえなる。

 「これが“地球の気”を浴びるってことなのかな……
 ナナはご当地の名物まんじゅうを頬張りながらつぶやく。ここで数時間も滞在して飲食すれば、たっぷりと吉方位の気を取り込めるはずだ。

 大学生ミライと高校生ナナ、、、かつては小学生と中学生だった二人が、今はこうして並んで歩き、“占い”を楽しむ。歳を重ねることで、できることや理解できる範囲も広がった。未来への選択肢も増えて、不安も同時に増える時期。そんな時期だからこそ、「日々の小さな実践」を重ねる占いがより一層心にフィットするのかもしれない。

 夕刻の山あいは冷え込んできたが、二人の心はしっかり温まっている。
 「帰ったらまた忙しくなるし、宿題やレポートもあるけど……不思議と頑張れそうだね」
 「うん、“吉方位貯金”がちゃんと効いてるんだと思う」

 笑い合う二人。その笑顔は、どこか誇らしげだ。


まとめ

  1. 日盤吉方位取りとは

    • 九星気学に基づき、“その日ごとに異なる吉方位”へ移動することで運気を取り込む開運法。

    • 「自宅から750m以上離れた地点」「20分以上滞在&飲食」で、その土地の“気”を体に取り入れるとされる。

    • 大きな引っ越しや旅行が難しい人でも、日常の中で小さく実践できるメリットがある。

  2. 吉方位取りが生む“吉方位貯金”の考え方

    • 毎日コツコツと吉方位へ足を運ぶことで、運気を少しずつ積み立てるイメージ。

    • 急に大きな幸運が舞い降りるというより、「いざというときに自分を守る土台ができる」「心に余裕が生まれる」といった効果を感じやすい。

    • プラシーボ的要素も含め、占いによる安心感やモチベーションアップが得られる。

  3. 凶方位への抵抗と、その対策

    • 気学には“凶方位(五黄殺、暗剣殺、本命殺など)”の概念が多く、ネガティブに捉えられがち。

    • しかし、「行けば必ず不運になる」わけではなく、工夫や心構えで緩和可能。

    • 事前に吉方位で気を取り込んでから凶方位へ行くなど、“ワンクッション”を意識する使い方もある。

  4. ローカルコスモスとの対話

    • 西洋占星術が“宇宙(マクロコスモス)”を意識させる占いだとすれば、気学は“自宅や街を中心としたローカルコスモス”との対話を重視する占い。

    • 日盤吉方位取りを通じて、普段見落としていた街の風景やお店に目を向けるきっかけになる。

    • “街歩き”や“日常の冒険”という楽しみ方が魅力。

  5. 占いとは“心の支え”

    • 当たる当たらないを超えて、「何かに取り組む意欲を高める」「落ち込んだときに心を保つ術を得る」といった精神面のプラス効果が大きい。

 占いは常に「自分の成長段階」に応じて見え方が変わり、深みを増す。
 本編はその一例を、日盤吉方位取りというユニークな実践法を通じて描いた。これからもナナとミライは、“マクロコスモス”と“ローカルコスモス”と対話しつつ、さらなる占いの可能性を探究していくだろう。



いいなと思ったら応援しよう!