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ナナとミライの占い探検記 vol.2 - タロット

第一話:不思議なカードとの出会い

 夏休みが始まり、ナナは久しぶりにいとこのミライの家へ遊びに行くことになりました。以前は西洋占星術を教えてもらい、自分だけのホロスコープを知ったナナ。今回はどんな不思議なお話をしてくれるのか、ワクワクしながら電車に乗ります。

 ミライの部屋に入ると、机の上に色鮮やかなカードが並べられていました。表面には、騎士や女王、魔法使いのような人の絵が描かれています。「これ、なあに?」と尋ねると、ミライはにっこり笑って言いました。

「これはタロットカード。占いに使われるカードなんだよ。今日はこのタロットカードの世界を、ナナにたっぷり教えてあげるね」

 ナナがカードを手に取ると、それは普通のトランプよりも少し大きくて厚みがあります。絵柄もとっても芸術的。「西洋占星術は“命術(めいじゅつ)”といって、生まれたときの星の配置をもとに見る占いだけど、タロットは“卜術(ぼくじゅつ)”っていう種類。『カードを引いて、そのカードの意味から答えを読み取る占い』なんだ」とミライは続けます。

「へえ……じゃあ、星占いと全然ちがうんだ?」と驚くナナに、ミライは笑顔で頷きます。「そうだね。タロットは、いまここにある課題や心の状態を知るのが得意。西洋占星術は、生まれ持った性質や、これからの運気の流れを見るのが得意。どっちも面白いけど、今日はタロットの魅力を伝えたいな」

 こうしてナナの「タロット占い」探究が始まりました。


第二話:タロットの歴史とカバラとの関わり

 まずは歴史のお勉強から。タロットカードがいつ、どのように生まれたかははっきりわかっていませんが、ヨーロッパで遊びのカードとして使われていたのが占いに使われるようになった、という説が有力です。イタリアやフランスで古いタロットカードが残っていて、その美しい絵柄が注目されています。

 「でも、絵柄だけじゃないの。タロットは“カバラ”という神秘思想とも関連があるって言われてるの」とミライはページをめくりながら言います。

「カバラ……?」と首をかしげるナナ。ミライは「カバラはユダヤ教の神秘主義なんだけど、世界を成り立たせるエネルギーとか、数の意味なんかを研究してるのね。その考え方がタロットカードの構成に影響していると言われているんだ」と説明を続けます。

「ふーん。タロットカードって単なるカードの占いじゃなくて、深い歴史と思想が詰まってるんだね」とナナは感心した様子。「うん。でも最初は深く考えすぎなくても大丈夫。カード自体がいろんな物語や象徴を持っているから、それを覚えていくだけでも十分面白いからね」とミライは笑顔で答えました。


第三話:大アルカナの世界(正位置と逆位置)

 さて、いよいよタロットカードの構成に入ります。タロットは全部で78枚のカードから成り立ちますが、その中でもとくに有名なのが「大アルカナ」と呼ばれる22枚のカードです。数字が0番から21番まであり、「愚者」「魔術師」「女帝」「皇帝」「法王」「恋人」「戦車」……と続いていきます。
 ミライは大アルカナのカードを一枚ずつナナの前に並べ、絵柄やカード名を紹介していきました。

「たとえば、これは“愚者(ぐしゃ)”っていうカード。0番で、物語の始まりを示すんだよ。自由で好奇心旺盛、でもちょっと危なっかしい面もある。正位置なら『新しい始まり、ワクワクする挑戦』っていう意味が強いけど、逆位置になると『無謀な行動、落ち着きのなさ』なんかを表したりするの」

 ナナはカードを手にとって、「絵が面白いね。確かに自由に歩き回ってる感じ」と笑います。続いてミライは「“魔術師(まじゅつし)”は1番で、正位置なら『創造力や行動力』を、逆位置なら『計画不足、うまくいかないスタート』なんかを示すことが多いよ」と説明。

「正位置と逆位置って何が違うの?」とナナが聞くと、ミライは「カードをシャッフルして引いたときに上下が逆さになることがあるの。正位置は普通の向きで、逆位置は逆さま。向きによって解釈がちょっと変わるんだ」と教えてくれました。

 さらに、「大アルカナは人生の大きなテーマを象徴しているって言われていて、その物語は“愚者が世界を旅する物語”として読むこともできるんだよ」と説明。ナナはそんな壮大なストーリーに夢中になっていきました。


第四話:小アルカナと四つのスート

 続いては「小アルカナ」と呼ばれる56枚のカードの話。これは数札(1~10)とコートカード(ペイジ、ナイト、クイーン、キング)の合計14枚が4つのスート(組)に分かれ、全部で56枚あるという仕組みです。

  • ワンド(棒):情熱や行動力、意欲を示す

  • カップ(杯):感情や愛情、心の動きを示す

  • ソード(剣):思考や知性、論理性を示す

  • ペンタクル(コイン):お金や物質的なこと、現実面を示す

「たとえば、『ワンドのエース』は“やる気がふつふつとわいてくる”、“スタートのエネルギー”って解釈されるし、『カップの5』は“後悔や悲しみ”の象徴なんだ。スートが変わると、意味する分野が少し変わるから注意してね」とミライ。

 ナナは、「色んな分野に分かれてるんだね。まるで4つのエレメント(火・水・風・地)のよう」と気づきます。「そうそう、それぞれ火(ワンド)、水(カップ)、風(ソード)、地(ペンタクル)に対応してるって考えられているよ。占星術で言う『エレメント』と似てるよね」

 ナナは自分のノートに「ワンド=火」「カップ=水」「ソード=風」「ペンタクル=地」と書き留めながら、「なんだか、西洋占星術とタロットってつながりがあるんだね」とニコニコしました。


第五話:数札(1~10)の意味

 次にミライは、それぞれのスートにある1~10の数札がどう意味を持つのかを、ざっくりと説明します。

エース(1):始まり、原点、純粋なエネルギー
2:対になるもの、選択、協力や対立
3:発展、拡大、成果が出始める
4:安定や基盤、守られた状態
5:変化や葛藤、波乱
6:調和や回復、バランスが取れる
7:挑戦、試練、気づき
8:前進、達成、行動の結果
9:成熟、完了間近、豊かな状態
10:完成、次のステージへ移るタイミング

「たとえば、“ソードの5”だったら『知性やコミュニケーションの分野での葛藤やトラブル』みたいに読むし、“カップの10”なら『家族や仲間との深い絆や幸せ』を意味することが多いんだ」と具体例をあげるミライ。

 ナナは「なるほど、同じ数字でもスートが違うと全然感じが変わるんだね。4でもワンドなら“安定したやる気”だけど、ソードなら“安定した考え方”だし、カップなら“安定した感情”。うんうん、分かりやすい!」と理解を深めていきました。


第六話:コートカード(ペイジ、ナイト、クイーン、キング)の意味

 小アルカナのもうひとつのグループが、「コートカード」と呼ばれる4枚です。それぞれのスートに、ペイジ、ナイト、クイーン、キングの4枚があるので合計16枚になります。

  • ペイジ(Page):初心者、子供っぽさ、学び始めの段階

  • ナイト(Knight):行動する若者、エネルギッシュだがやや暴走しがち

  • クイーン(Queen):成熟した女性性、包容力や安定感

  • キング(King):成熟した男性性、リーダーシップや権威

 ミライはカードを見せながら、「たとえば“ワンドのナイト”なら“とにかく熱く突っ走る人”というイメージ。ソードのクイーンなら“頭の回転が速く冷静、でもちょっと厳しい女性”みたいに読むんだ」と説明します。

 ナナはカードの人物の絵を見比べながら、「なるほど、人物像が浮かびやすいね。ペイジはちょっと子供っぽくてかわいいし、キングは貫禄があって頼れそうな感じがする!」と納得した様子。

「でしょ? こういうふうに、数札が状況や出来事を表すのに対して、コートカードは人や性格、あるいはその人の行動パターンを表すことが多いんだよ」とミライ。ナナはますますタロットの世界に引き込まれていきます。


第七話:タロット占いの基本的な並べ方(スプレッド)

 タロットカードの大まかな意味がわかってきたところで、次は占い方。タロット占いでは「スプレッド」と呼ばれる、カードの並べ方がいろいろあります。代表的なものをいくつかミライが紹介してくれました。

  1. ワンオラクル:カードを1枚だけ引いて、その日のメッセージを読む

  2. スリーカードスプレッド:過去・現在・未来など、3枚でシンプルに占う

  3. ケルト十字スプレッド:10枚のカードを複雑に配置し、深く状況を読み解く

  4. ホースシュー(馬蹄)スプレッド:7枚をU字型に並べて運気の流れを見る

最初はワンオラクルやスリーカードが簡単かな。“いまの自分に必要なメッセージは?”って質問して、1枚引く。カードの意味を見て、『なるほど、今はこういう気持ちを大事にしよう』って思えるように使うの」とミライは言います。

「たとえば悩みごとがあったら、スリーカードで過去・現在・未来を見てみるといいんだ。『過去にはこういう原因があったんだな。現在はこういう状態。じゃあ未来はこんなふうになるかも』って考えながら、自分の気持ちを整理するんだよ」

 ナナはさっそく試してみたくなり、「よし、あとで練習してみる!」と張り切っていました。


第八話:命術と卜術の違い

 タロットカードをある程度知ったナナは、前にミライが言っていた「命術」と「卜術」の違いについて質問しました。「ねえ、星占いとタロットって具体的にどう違うの? どっちも占いだよね?」

 ミライはうなずきながら、「西洋占星術は“命術”といって、その人が生まれ持った星の配置、いわゆる出生図(ホロスコープ)をもとに長期的な流れを見るのが得意なの。特に“何年後にはこんな運気”とか“生まれ持った性格の傾向”を読み取ることが多いのね」と説明を始めます。

「一方、タロットは“卜術”。その場でカードを引いて、一時的な状態や気持ち、今直面している問題に対して答えをもらうスタイル。『いまどうするべき?』とか『現在の気持ちを整理したい』ってときに向いてるんだよ。タロットは道具を使って“偶然”をきっかけに答えを導くから、未来予測というより“いまの自分を見つめる”って側面が強いかな」

 ナナは「なるほど~。星の配置は変えられないけど、カードは引くたびに変わるんだもんね。だから何度もいろんなテーマを占えるんだね」と納得します。ミライは「うん。占星術とタロット、どっちも知ってるとけっこう相互に補い合えるよ」と笑いました。


第九話:カードと心の対話

 ナナがタロットカードをいろいろ触ってみるうちに、ミライは「タロット占いって“未来を言い当てる”っていうより、“心の声を聞く手助け”だと考えてほしいな」と話し始めます。

「心の声……?」と首をかしげるナナに、ミライは優しく続けます。「たとえば、悩んでいるときって、自分でも気づいていない気持ちや可能性があるかもしれないよね。タロットカードを引くことで、『あ、実はこう考えてたんだ!』って気づくことがあるの。それがタロットの面白さ」

 また、逆位置が出たときも「ダメな意味だけじゃなくて、注意すべきポイントを教えてくれてるんだ」とミライ。「ほんとはやりたいことがあるのに、怖がって足踏みしてるよ、気をつけてね、みたいにね。だから、悪い結果が出ても落ち込むことはないの。カードは味方だから」

 ナナは深くうなずきます。「星占いと同じで、“自分を知るためのツール”なんだね。タロットカードって、絵を見ているだけでも楽しいし、心が落ち着く気がする」。ミライは笑顔で、「その調子! 気負わずにカードと仲良くなって」とアドバイスしました。


第十話:タロットが開く未来

 タロットカードの使い方や意味をひととおり学んだナナは、最後にミライからケルト十字スプレッドを実践してもらうことにしました。テーマは「この夏休み、自分は何を大切にするといいか」。

 シャッフルをして10枚のカードを並べると、大アルカナの「魔術師」や「女帝」、ワンドやカップのカードが組み合わさって出てきました。ミライはそれを一枚ずつ読み解きながら、ナナにわかりやすく説明していきます。

  • 現在:魔術師の正位置——「新しいことを始める力がある。やってみよう!」

  • 障害:ソードの7逆位置——「こっそり計画しすぎて疲れないよう、周りを頼ろう」

  • 未来:女帝の正位置——「豊かな結果、クリエイティブな楽しさが花開く」

  • そのほか、心の奥底や環境のカードも含めて、全体の流れを解釈

 「ふむふむ……何か新しいことにチャレンジするといい夏になるみたいだね。人に頼ることを忘れずに。そうすればいっぱい楽しいことが育っていくよ、ってカードが言ってる」とミライ。ナナは、「今まではひとりで何とかしようとしてたけど、もっと家族や友達を頼っていいのかも!」と嬉しそうです。

 最後にミライは静かに言いました。「タロットが言うことがすべて正解ってわけじゃないけど、自分の気持ちを見つめ直すきっかけにはなるからね。星占いでも、自分のホロスコープと合わせて考えてみると、より一層新しい発見があるかもしれないよ

 ナナはカードを大切に片づけながら、「すごいなあ、タロットって。ただのカードなのに、いろんな意味やメッセージが詰まってる。私もこれからもっと上手にカードの声を聴けるようになりたい!」と笑顔で宣言しました。


おわりに:自分の心を映す鏡

 こうして、小学生のナナは占星術だけでなく、タロットという神秘的なカード占いにも出会いました。大アルカナから小アルカナまで、それぞれに込められた物語や象徴。正位置と逆位置の読み方。スプレッドの組み立て方。タロットの奥深い世界は、星占い(命術)とは違った角度で「いまの自分」を教えてくれる卜術です。

 タロット占いは単に未来を予言する道具ではありません。自分の気持ちや状況を客観的に見つめ直し、選択を手助けしてくれる“心の鏡”のような存在といえます。もしあなたが悩んだり、何かを始めたいと思ったとき、気軽に1枚カードを引いてみてください。そのカードに描かれた絵や象徴が、きっとあなたの背中をそっと押してくれるはずです。

 星占いとタロット。ふたつの占いを学んだナナは、これからも自分や周りの人たちの未来を見つめながら、前に進んでいくでしょう。あなたもぜひ、タロットカードを手にとって、ナナと一緒に不思議なカードの世界を旅してみてください。


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