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ぽんぽこちゃんねる「【心霊】VTuberが、女1人で心霊スポットに行ってきました。」について


vtuber甲賀流忍者ぽんぽこさんの動画で好きな作品について話したい

「【心霊】VTuberが、女1人で心霊スポットに行ってきました。」 
5分間という短い時間でまとまっていてとても面白いので紹介したいと思います。撮影や編集のしかたもとても工夫されていて今までにない新しさや面白さが感じられます。


あらすじ紹介

・ぽんぽこさん1人だけで心霊スポットを探索する。相片のピーナッツくんは怖いので家でお留守番。

1導入


・暗い道の中を100均で買った懐中電灯を頼りに神社を目指す。

2説明

3探索


・進んでいくと川が現れる。渡り終える直前、画面の中には黄色い物体が遠くにいるのがうっすらと映る。ぽんぽこさんは気づかない。

4渡河


・川を渡ると十字路にぶつかり、周囲を探索する。川の音が大きく響くなか、小屋を見つける。

5十字路


・突然、謎の黄色い着ぐるみ(ピーナッツくん)が現れ、ぽんぽこさんに向かって近づいてくる。ぽんぽこさんはピーナッツくんとは認識しない。

6ピーナッツくん登場


・ぽんぽこさんは驚いて走って逃げる。

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・黄色い着ぐるみは追って来ず、神社に到着。目的を果たしたぽんぽこさんは帰ることにする。

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・振り返ると黄色い着ぐるみがすぐ近くにいて、ぽんぽこさんに近づいてくる。

9ピーナッツくん再登場


・ぽんぽこさんは恐怖の余り転倒しカメラを落とす。カメラにはぽんぽこさんの足だけが映り、黄色い着ぐるみは更に近づいてくる(着ぐるみも足だけ映る)。

10転倒


・そこで映像は途切れ、終了。

11結末


物語の構造

★この動画の構造は次のようにまとめられるだろう。
①ぽんぽこさんが心霊スポットにでかける。
②着ぐるみ(ピーナッツくん)がぽんぽこさんを驚かす。
③逃げだして、目的地の神社まで着いたことで多少安心する。
④いなくなったと思った着ぐるみ(ピーナッツくん)が再びぽんぽこさんを驚かす。

最初に驚かせたあと、一回安心させ、さらにもう一度驚かせている。ずっと怖い状態が続くのでは無く、「ほっとする」から結末の「びっくりする」への落差が生まれることで「怖さ」を強調する効果がある。

これは典型的な怪談系物語の構造であり、それがvtuberの動画作品として丁寧に表現されていてとても面白く感じた。

・話の流れが類似する昔話としてはたとえば、のっぺらぼうの登場する「おいてけぼり」が挙げられる。

「おいてけぼり」 あらすじ
①妖怪がでるという噂の池に男が釣りに出かける
②魚を釣った帰り道、女が話しかけけくる。見てみるとその女の顔には目も鼻も口もなかった。
③驚いた男は家まで逃げ帰る。
④おかみさんに今起きたことを話そうと見てみると、おかみさんの顔にも目鼻口がなかった。

この昔話も家に帰って安心した所にのっぺらぼうが現れることで怖さが増している。

【参考】福娘童話集「おいてけぼり」


「現実」と「仮想」の立場が交換

・このように怪談として基本に忠実な作りでありながら、vtuberが主人公の物語として、今までにない新しさや特色が色々と感じられた。


・ぽんぽこさんは滋賀県甲賀市の山の中にすんできるたぬきの忍者であり、人の姿に変化したりしながら日々活動している。

たぬきなの


・昔話の中で狸は多くの場合、化けるなどして人を驚かす役割となっている。のっぺらぼうも狸や狐が化けたものと言われている。それが、この動画ではたぬきのぽんぽこさんが驚かされる側に代わっている。


・次に、怪談では実体が無かったり不明瞭な妖怪が現実世界の人間を驚かすことになるが、ここでは仮想存在であるvtuberが実体のある着ぐるみ(着ぐるD)によって驚かされ、「仮想」と「実体」の立場が逆転している。
(ピーナッツくんはvtuberだが、ピーナッツくんの着ぐるみはゆるキャラぐらんぷりに出場したり、チェキ会に登場したように現実世界の存在となっている。)


・また、普通は現実世界の人間が境界を踏み越えることによって異世界に入り怪奇現象と出会うが、仮想世界のぽんぽこさんが現実世界に現れて着ぐるみに驚かされていて、ここでも「仮想」と「現実」が逆転している。

★まとめ
「怪談や昔話」
狸 → 人間
実体の無い妖怪 → 実体のある人間
現実世界 → 異世界

「【心霊】VTuberが、女1人で心霊スポットに行ってきました。」
豆(着ぐるみ) → 狸
実体のある着ぐるみ → 仮想存在のVTuber
仮想世界 → 現実世界


「境界」について ―「橋」「十字路」「川の音」―

・着ぐるみピーナッツくんが出現した場所もとても興味深い。民俗学者の柳田国男によると、妖怪はどこにでも現れるわけではなく「出現する場所が決まっている」という。妖怪の出現する場所の一つに「境界」がある。動画のなかでぽんぽこさんはを渡り、十字路を進み、川の音が大きく鳴るなか、怪奇現象(着ぐるみピーナッツくん)に遭遇している。境界を示す要素が連続して登場している。


★境界
【橋】 橋は「こちら」と「あちら」、現実世界と異世界との境界となる。橋を渡りきるあたりで画面にピーナッツくんは映るが、ぽんぽこさんはそれに気づかない。橋自体はどちらにも属さない空間なのでお互いに干渉しないのかもしれない。


この動画の中で、ぽんぽこさんは着ぐるみをピーナッツくんと認識しない。橋という境界を越えて、仮想世界から現実世界という別の次元に行ってしまったためと解釈できるかもしれない。(ピーナッツくんは仮想世界の家でお留守番をしたまま。)

境界1橋


【十字路】 多くの人間や場合によっては妖怪が行き来して集まる十字路(四つ辻)は、現実世界と異世界との境界となる。特に夜になると通行人にとっては右に行くべきか左に行くべきか迷い、不安を感じる場所となる。
ぽんぽこさんも十字路に出くわすと不気味に感じ、まっすぐ目的地の神社に向かわず右に曲がってしまう。

境界2十字路


・昔は十字路や境界にお地蔵様や神様の像などを祭って、外から悪霊などが入ってこないようにしていたが、今も狸の置物や飛び出し坊やが十字路の安全を守っている。

信楽 飛び出し坊や

(滋賀県甲賀市信楽 飛び出し坊やと信楽焼のたぬきとチャンチョ)


【川の音】 たとえば防災無線から流れる音楽が夕方5時に流れたり、朝や夕暮れ時にお寺の鐘がつかれるように、音も境界を表す。動画では川を流れる水の大きな音が境界の役割を果たしている。

境界3川の音


・ぽんぽこさんの出身地である滋賀県の日野川に架かる「安義橋(あきはし)」に関わる昔話も橋に鬼が現れた話であり、繰り返し鬼が現れるという点でも、先に挙げた「おいてけぼり」やこの動画とも共通点があって面白い。


「安義橋の鬼」(『今昔物語』所収)あらすじ
①ある武士が肝試しに安義の橋に行くことになった。
②橋の途中に女がいたが実は鬼で、武士を追ってきた。
③武士は馬に鞭打って走り、鬼を振り切って橋を渡りきった。
④後日、武士の弟に化けた鬼が家を訪れて武士に襲いかかった。


【参考】福娘童話集「安義橋(あきのはし)の鬼」


まとめ

3Dのからだと着ぐるみが融合する動画や物語性のある動画がとても面白くて好きなので他にも見てみたいです。

続編(?)「深夜に琵琶湖で散歩してたら新種のポケモンに出会えました。」もとてもおすすめです。





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