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ターミナルケアにおける人間理解
ターミナルケアとは、病気で余命がわずかになった方に対して行う、医療・看護的、介護的ケアのことだ。
残りの余命を少しでも心穏やかに過ごせるように痛みや不安、ストレスを緩和し、患者のQOL(クオリティオブライフ=自分らしい生活の質)を保つことを目的としている。
自分は看護師をしている。
ターミナルケアにおける人間理解とはどうあるべきか。
先日、ある患者さんを通して感じたことがある。
〈患者Aさん〉
ある消化管の癌であり、抗がん剤治療が終わったあとまもなく再発。
Aさんは「まだ死にたくない、死ぬのは怖いんだ。」と言った。
その数日後、Aさんは「遺書を書いたんだ」と言った。
自分は頷き、Aさんの辛さや悲しみ、死への恐怖をただ受け止めた。受け止めるしかなかった。
安易な励ましは、患者を傷つけるからだ。
Aさんは死を避けられないことを知っている。
なのに、医療者が「そんなことないですよ。前向きに頑張りましょう!」なんて言ったらどうだろう?
医療者は嘘つきであり、信用できない人間となるだろう。患者は理解されない心の痛みと孤独を感じるだろう。向き合うことを避けているように感じ、その場しのぎの言葉に聞こえるだろう。
死を目の前にした人に対し、私たちは無力だ。
でも、できることがあるとしたら、人間としての弱音を吐ける場所を作ること。
弱音を受け止め、その時間をともに過ごし、一緒に泣くことではないだろうか。