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乳がんになって思ったこと、感じたこと

10年前に右乳がんで手術した。
今更だが、その時に、特に強く感じたことを書きたいと思う。

【がん告知の日を境に、健康人からがん患者の世界へ】
昨日も今日も、明日もこれからも同じ「自分」なのに、
昨日までは「健康人」。今日から「がん患者」。
病気ひとつで、見える世界が変わった瞬間だった。

【自分のことより、周りに心配や迷惑をかけたくないと考えた】
がんの告知を受ける日、99%癌だろうと覚悟していた。
結果は「右乳がん」。
言われたとき、「そっか、やっぱりか。」
そして、「仕事どうしよう?誰に頼もう?上司に何て言おう?」
次に、「旦那がショックを受けないように、なんて言おう?」
現実感がなかったというか、とりあえず周りに迷惑かけたくない、心配かけたくない、という思いで必死だった。

【手術台の上に上がったとき、初めて泣いた】
手術台にあがり、天井を見た瞬間、ボロボロと涙がこぼれた。
初めて泣いた瞬間だった。
手術室の看護師さんが「不安ですか?大丈夫ですか?」と優しく声をかけてくれた。
でも、私は手術が怖かったのではない。
次に麻酔から覚めた時には、右胸がないのだ。
自分の体の一部を失うことは、「私」が「私」でなくなるように感じた。
自分という人間のアイデンティティが失われるような、壊れてしまうような気がしたのだ。もう今までの自分ではないのだと。
その涙の訳を、手術室の看護師に語っても仕方ないから
「なんともないです。早く麻酔かけてください。」と伝えた。ここまでの記憶しかない。

乳がんで泣いたのは、コレが最初で最後だ。

【再発したら死ぬよ】
乳がんがわかる前、私は子供が欲しくて悩んでいた。
術後、本格的な乳がんの治療を始めることになっていたが、治療を初めたら妊娠はできない。というか、二度とそのチャンスはないのだ。
覚悟はしていたけど、現実として受け止めるには時間が必要だった。
だから、「治療に入るまで考えたいことがあるので少し時間ください」と主治医に伝えた。
そうしたら、「なんで時間が必要なの?再発したら死ぬよ?」と言われた。
あまりにも配慮がない言葉に、私は「そんなこと知ってます!」と啖呵を切った。
がんになった人間にしか、この痛みはわからないのだろう。
人には、癌を治すことより大切なものがあるということも。
その後、命あっての人生だと考えるに至り、妊娠はあきらめた。

これらのことは、10年たった今も鮮明に蘇る。






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