8年半前はすぐそこだった
2010年の10月。
今からちょうど10年前のこと。私は、初めてバングラデシュに降り立った。
言葉もあいさつ程度にしかできず、前情報は物乞いやスリに気をつけて。お腹も壊してしまうかもしれないよ、と。
そんな不安の中、振り返れば、人の温かさと美味しいものの思い出しかないあの国での記憶。
そこには彼がいるから、この国では大丈夫(Shomosha nai)、そう感じさせてくれる人の存在があった。
時には厳しい目と振る舞いで、予定通りにことが進まないのがデフォルトなあの地で、物事を淡々と進めていく。
そうかと思えば、ユーモアと天然ボケと(随分年上の男性にいうのもなんですが)愛くるしい笑顔で場をしあわせな、あたたかな空気で包み込む。
年齢も、国籍も、宗教や民族だって、あらゆるものをこえて愛される空気をつくれる彼の存在は圧倒的なお守りだった。
Abar dekha hobe (See you again)
幾度かの訪問を重ね、最後にそう言って、あの国を去ってから8年半。
2020.10.29、突然飛び込んできた、4,766km向こうからの訃報。
その地に行くことはできても、もう会えなくなってしまった。
でも、思い出ってすごい。
突然の報せに、8年半なんて1秒前だったかのように、驚くするほどに、涙と鼻水となんだかわからない感情があふれ出してくる。
どうして良いか分からなくて、ただただ写真をかき集め、どうして良いか分からない気持ちをつらつらと。
そして
8年半経っても、全く追いつく気配はないのだけれど、憧れる空気感や、人との接し方は間違いなく影響を受けている一人。
Sadi Abdullah。
いつかどこかでまたあの笑い声を耳にできたら良いな、と今日も思う。
Onek dhonnobad, Sadi-bhai.
May He Rest in Peace.
二拠点生活にトライアル中。 各地域のこと、暮らし方のこと拙い文章ですが発信したいなと思います。サポートは移動費のカンパとして活用させていただきます。