過去の利上げサイクルとリセッション、株価について
最近中国の復活(ゼロコロナ終焉)や米国経済の堅調なデータ、インフレ低下からの利下げ期待などで、以前に比べてリセッションに対して楽観ムードが漂い始めてきた。あのラリーサマーズでさえ少し明るい兆しを見出しているらしい。
JPモルガンのモデルでは、各資産でリセッション確率が低下、とのこと。
株式市場は個人的には信用できないので、債券とクレジットをよく見ている。クレジット市場は不気味なぐらい落ち着いている。逆に欧米の債券市場はリセッション確率上昇。それでも現状の債券市場のベースケースはディスインフレである。
結局のところ(FRBの想定通り)金利が高止まりするか、もしくは市場が期待しているような利下げを早める必要があるぐらい不景気になるか、、、いずれにせよマーケットは崩れそうな局面は来そうな気がする。
そこで過去の金利サイクル、リセッション局面と株価指数などを調べてみた。
*まず、利上げ開始からリセッションが始まるまでの月数。
Median: 27ヶ月
Average: 25ヶ月
*過去30年の利下げ局面では、平均18ヶ月で350ベーシス利下げした。
*2000年以降、リセッション時の平均株価下落率はS&Pで約18.58%、ナスダックは14.48%. ピークからの最大下落率はそれぞれ38.61%と41.17%。
*リセッションが終了してからリセッション前のレベルに戻るまでに、S&Pは647日、ナスダックは330日の取引日分かかった。(1年は約253取引日ある)
*以下、FRBの利上げのスピード別の株価パフォーマンス。
利上げ開始後、高スピードで利上げをしたケース(オレンジ)では、1年後は平均-2.7% 、2年後は+4.3%。2年の間に、何度も下落局面が見て取れる。今回は確実に、歴史的に見ても「高スピード」で利上げをしているのでこれに当てはまる。
*そして最も興味深いのが、FFレートとS&P、リセッションの過去の推移。
利上げ局面はむしろ株は上昇、リセッションに入り+利下げ開始後少し経ってから大きく崩れている。これは利上げ局面に影響を受けた部分が表面化するまでのラグと考えても自然かもしれない。
単純に過去の例を見れば見るほど、もう一段リスクオフ局面が来てもおかしくないのかも、と思わせられる。
では、ITバブル崩壊時やリーマンショックの時と今回は何が違うのか。考えつくものを列挙してみた。
共通点:
世界的インフレ環境が深刻化している
世界景気は減速するのが明白なのに楽観論が語られている
金利水準が5~6%付近
低金利政策でバブルが醸成されている
新興国の債務が拡大
世界的な不動産バブル
相違点:
コロナ蔓延:再流行懸念、労働市場の歪み、供給制約など
GFC以降の資本規制で金融機関の資本が増強されている
(米)サブプライムローンのリスク減少
地政学リスクが表面化している
ITバブル→「根拠なき熱狂」とも呼ばれた、IT企業への過度な利益期待と失望売りでの大幅下落
ノンバンク取引の規模がGFC以降、倍増している(解約集中リスク、クレジットリスクなど
仮想通貨関連会社の倒産が相次いでいる
短期トレードは今は手が出ないので、マクロのことばかり考えている日々。
今日は以上。