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庭とスモッグ

1か月の日本一時帰国から、カラチに戻りました。パキスタンの話を聞きたいと言ってくれる友だちの声が意外でもあり嬉しくもあり、もう少し気軽にnote書こうと思います。
最初の3か月は慣れるのに精一杯だったうえ、見聞きすることの多さと複雑さに胸がつかえるような気持ちがしていたのでした。まるで、大きな魚を丸呑みしてしまったよう。その辺りはまた、おいおい。

極寒の日本から戻った1月下旬のカラチの気温は日本の3月終わりくらいでしょうか、朝夕に部屋で暖かい上着を引っ掛けるくらいの気候でした。

11月に種を蒔いたベランダ菜園の野菜やハーブがもりもり繁っているのが嬉しい。ディル、パセリ、ミント、ねぎ、ルッコラ、ほうれん草。エンドウ豆は花が咲き、ミニトマトの青い実がなっています。
パンジャーブの郷土料理が作れるよ、と言われて植えてみた地元のカラシ菜はすでに育ちすぎて、菜の花が咲きタネができ始めてる。でもこれっていわゆるマスタードシード、つまりカラシ。ちょうど先月、知人宅で手作りの粒マスタードをいただいて、そうか、カラシって自作できるんだなあと思っていたところ。熟したらやってみようと楽しみです。

庭の草花たちも10月末から3月がガーデニングシーズン。過酷な夏とうってかわって、カラチの人たちが「シーズナルフラワー」と呼んで楽しみにしている花壇が公園や街路のほうぼうにでき、ペチュニア、金魚草、サルビア、マリーゴールドなどが色とりどりに咲き誇っています。束の間の冬から春という良い季節なのですが、残念なことに、

スモッグがひどい。

最初にあれっ? と思ったのは、見渡す限り空を覆っていたトンビ、カラス、ムクドリ、鳩たちの姿が、空中でふっと消えてしまうこと。遠くに見える建設中のビルの脇を蚊柱のように旋回して上昇していたトンビたちの姿も見えない。視界が狭まり背景がグレーの不透明になり、芝居の書き割りの中にいるかのようです。

少し前まで大気汚染というと中国のそれがひどく、ニュース映像でガスマスクをつけた親子だとか、散歩中の犬も見えないなんていう話が揶揄されていましたが、2度のオリンピックを期に国の威信をかけて浄化に取り組んだ結果、相当改善したと聞きます。今、世界の大気汚染の中心はここ、インド亜大陸、特に北インドのデリー周辺〜パキスタンのラホールのエリアに移っているそう。気温が下がる10月〜1月がスモッグのハイシーズンです。昨年12月にはAP通信からこんなニュースも。

マルグリット・デュラスの「ラホールの副領事」の、あのラホール、ここに来るまでパキスタンだとは知りませんでした。人口1100万人、カラチに次ぐパキスタン第2の規模の都市です。

ニュースソースになっている大気モニタリングのIQAirは国連環境計画(UNEP)やアメリカ合衆国環境保護庁(EPA)とのパートナーシップがあるとのことで、オーソリティなのでしょう。サイトから世界の大気の状態をリアルタイムで見られます。大気汚染指数(AQI)はAir Quality Index、主にアメリカで使われており、対象物質のオゾン、PM10、PM2.5、一酸化炭素、二酸化硫黄、二酸化窒素の濃度を指数化したものから算出します。

工場や発電所など産業界からの排煙のほか、排ガス、原因は色々言われていますが、槍玉に上がっている一つがインド〜パキスタンにまたがる肥沃なパンジャブ穀倉地帯での野焼きなんだそう。

2019年には、アムネスティインターナショナルからはこんな声明も。

「医学雑誌ランセットの2015年の調査によると、パキスタンの死者の実に22パーセントの死因は公害に由来し、その公害の大部分が大気汚染によるものだった。
建設や農業などに関わる低所得の労働者や社会的に弱い立場の住民は、終日、有害な大気にさらされるため、健康被害のリスクが特に高くなる。」

え、そこまで?

カラチのスモッグも、北インド〜ラホールあたりから野焼きの煙が北風に乗って流れてきているんだろうか、ぐらいに思っていたのです。
でも、ここでは節分のあたりから南風を感じるようになり、気温が上がり始めています。今日2月8日の朝はめずらしく空に雲が。南風がアラビア海から湿り気を運んできました。にも関わらず、

今朝の時点では主要都市の汚染ワーストランキングに入っていました。151 - 200 Unhealthy(健康に良くない)レベル。

本当にめずらしいことに、そのあと昼に1時間ほどザーッと雨が。近所の家から子どもたちの歓声が聞こえ、雨上がりは、久しぶりの澄んだ空気を感じられました。

この季節、予想外の良かったことがひとつ。

カラチの冬の悪名高い「ドブの臭い」は聞かされて恐れていたほどではありません。地元の人も、今年は臭わないねと話しています。長くいる人に聞くと、街の掃除が以前よりだいぶん行われており、市街地の川のゴミが驚くほど減っているんだそうです。
お香とアロマオイルで待ち構えていたのだけれど、こちらはちょっと嬉しい誤算。

スモッグの件はまだ私にはわからないことも多くて。今後も気にかけておきたいと思います。


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