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修行ネコ★ハルと心の狭いわたしの物語 ②レッドピルとブルーピルの狭間
猫への憧れ
振り返れば私の人生はいつしか猫を別格な動物として見ていました。
犬はとにかく飼い主が大好きになれば好き好き光線が出まくり、又甘え方も一途です。
そんな実家で飼っていた犬の記憶もあり、よい飼い主に恵まれれば、『ご主人様についていきますっ♡』というような主従関係が心地よいのが犬であることは、アメリカのスーパーミラクル調教師が問題のあるペットを(というか飼い主の犬への在り方をレクチャーして)短時間で変化に導いてゆくというテレビ番組『カリスマドッグトレーナー』をしょっちゅう見ていたので分かります。又そんな一途な犬エピソードに飽きてたのかもしれません。
対して猫エピソードは犬とはほぼ真逆で、自分勝手、媚びない、ツンデレ、悪女?でも甘える時はすごい可愛いという複雑でミステリアスなキャラクターに魅力を感じておりました。
そして何より「にゃ~~~」と可愛く、あくまでも可愛く鳴くところが好きだったのだと思います(遠い目)
少なくともちょっとここで強調しておきたいのは、可愛く鳴く猫しか見たことがなかったということです。実際も・テレビの中も・youtubeの中もです!
故にどえらい大声で鳴く・アピールする猫はいないと思い込んでいました。
ああ、ぷにっとした肉球、考えられないジャンプ力、いざとなればすばしっこく野性味あふるる身体能力、日中は又寝てばかりな所もその落差が又良い!と絶賛あこがれまくりなまま、人生を過ごしてきたわけですね、40代の今の今まで。
猫の写真展を見に行ったり、岩合光昭さんの番組を見たり、ネコカフェを訪ねたり、猫がらみの小説やエッセイを時々読んだり、猫の飼い方の本を買ったりしていたわけです、
あこがれを持って。
そんな魅力ある猫との生活を共にして日常を飼い主・同居人として見てみたい、そしてそれを阻もうとする二本足の同居人もあら、
なんということでしょう、いないようです(!)
又繰り返しになりますが、実家で長い間飼っていたおデブのチワワちゃんが本当に可愛くてたまんなくて、私の中で忘れられない良い思い出と、ちょっと残念な心残りな思い出が共存していました。そのことも手伝って私にペットと共に住む、という願望を抱かせ続けたんだと思います。
犬は毎日のお散歩など手がかかるし私は無理、でもその点猫は家猫になればそんなに手はかからない、と、それがいわゆる一般論であり、思い込みであったことはやはり後々に知るわけです。
マトリックスのネオ
さて、ではハルくんを迎える準備が出来たので保護ネコカフェの女主人に連絡をし、迎える日にちを決め、3時半以降に伺いますと連絡をしました。
そして当日の朝、4つ目のお試しがやってきていたのだと思います。
突然身体が重く、動くのもおっくうになってきたのです。
なんだか、体調が悪い。気分が悪い・・・
そこで『ああ、しんどい、行きたくない』と思ったのですが、なんとか気を取り直して準備します。
そして、その間体調をなんとか整えて、ネコカフェには4時半に到着しました。
そうしたらですね、
なぜか!
その女主人は激おこ状態・・・
私は3時半以降に行きますと言って、4時半に行きました。
そうすると、女主人は、朝からハルくんを捕まえて籠の中に入れていたと言ってこられました。なので6時間くらい籠の中に、更に暴れないようにネットの中に入れられてストレス満載状態になっているハルくんがいたわけですが、何も聞かされてない私としては、びっくりでした。(どうやら捕まえるのも大変らしくボランティアの人に来てもらって捕まえたそうでした)
そこであんまりの雰囲気に、
やっぱりもういいです、と断ることも出来たのかもしれません。
これが最後の5つ目のお試しでした。
未知の未来へダイブイン
譲渡の説明を受け、『トライアル』で相性を確かめるというのがあるのでは?と尋ねた時、
それは先住猫がいる時に限りで、人にあまり懐かない猫だからトライアルするくらいなら始めから諦めてほしい、と言われたり、
ワタシ(女主人)にすらほとんど懐かなかった、抱っこできたのも一度くらい、という話を聞いたり、
仲良くなるまで1か月くらい見て、と言われていたのが、その次話した時は、3か月くらいみて、と変化していたり・・・
ネコカフェ歴3年半の一番の古株、と聞いたりと、
色んな事が一気に気になってきました。
以前、一世を風靡した映画マトリックスの中で、キアヌ・リーヴス演じる主人公ネオが真実を知るレッドピルと今まで通り生きて行くブルーピル、どちらを飲む?と言われて彼は始めは迷いなくブルーピルを選んだと
私は間違って記憶していたのですが、
調べてみると実際は彼は真実を知るレッドピルを選んで、真実に目覚め、仮想空間を操るエージェントと戦うことになりました。
私はうん十年間、なんだかんだ言いながら無意識下でブルーピルを選び続けていたんだと思います。
さて、
出会い方はどうあれ、その女主人は『少し怖い役割(ロール)』を取りながら、私を試してくれてたんだと思います。
あのこ、大変だけど引き取るの、どうなの?
やる気あんの?どうなの?
と。
未来のことは分からない、
でも譲渡先募集の猫の写真を見た時にこの子が良いな、と思ったこと、
実際に、多分この子かな?という猫がキャットウォークをウロウロしてたのを見た時のこと、
実際にチョンと触れてみてハルが振り返った時の表情、
を思い出し、
レッドピルを口に入れたんだと思います。
そこで私は、
ワタシそんなに悪くないよねと思いながらもネコ的女主人に『米つきバッタ』のようにペコペコと謝り、なんとか円満に譲渡を受け、網目の細かいネットの中に入って顔もなにも塊にしか見えないハルくんによろしくねと笑顔を向けつつ、想像より重たい籠バッグを大事に持ち帰ったのでした。
未来に待ち受ける苦難は全く頭になく、
猫に関しては本当に無知だったんだと知る由もなく、
ましてや人に懐かない成猫がどんなものかということも知る由もなく。
ハルを選んだ本当の理由へ、
つづく。