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引継ぎ書の話

短大時代に、「秘書学」という授業があった。

実際に世界の誰もが知ってる日本の有名企業の秘書をされていた方を講師にしての、毎週の授業だ。会議室にお茶を出す方法や、書類のファイリングの方法や、席次など、普段の学校の授業では誰も教えてくれないような授業内容だったし、この先生が失敗した話や、後輩にこんな子がいた等という話を聞いているだけでも為になる気がしたし、面白くて秘書学は好きだった。

中でも、そう言えば、この話が仕事をしていく上で1番役に立ったなと思った話が「引継ぎ書」の話だ。

引継ぎ書は、他のどんな書類よりも丁寧に、誰が見ても分かるように、家電の取り扱い説明書のように、変更点も最新のものにして残しておく!

という話だ。その先生の教え通りに入社してから細かくメモをとっておいたものを1冊のファイルにしておくと、1年半ぐらいして人事異動になり、別の部署になった時に、私の後に入った先輩が、「みこちゃんのあの引継ぎ書のお陰で分からない事がないから助かるよー!」と言ってくれてとても嬉しくなったが、私が異動した先の部署の先輩は、引継ぎ書も全く用意せずに結婚して退社してしまったので、本当に困った。ここだよと言われていたExcelファイルを開こうとすると、1時間ぐらい開かない。意味わからんと思い、隣の席の先輩に助けを求めると、「自分で調べるのも仕事よねー」と言われた。(後で知ったが、この先輩は同じシマの主任と不倫関係にあって、私のような年下の新人に優しく接する余裕もなかったようだ。)同期の男子に助けを求めると、

「何これ?1つのファイルで1MB以上使ってるよ!」

「うそ?」

1時間以上かけて開いたそのファイルには、Excelのセルの1つ1つに文字を入れていくのではなく、何故かテキストボックスを延々と繋げたものが出てきて、その1つを変更しようにも、PCが動かない。

本社に連絡しようにも、担当者が誰か分からない。内線番号が書いてある机の表を最新のものに替えていなかった先輩。細かい事だからいいだろうと思ったんだろう。結婚するし、居なくなるからいいやって思ったんだろう。その間にも後ろに受付があるので、来客や宅急便が来る。

よくこれで仕事して来れたな…

そんな出来事があってから、分からない事を1つ1つファイルにまとめて、2年後に更に人事異動でその席に後輩の子が来た時には、質問が来ないぐらいしっかりとした引継ぎ書が出来た。実際後輩の子も、「助かった」と言ってくれた。

旦那が死んでしまった時、私は、ひとりぼっちで様々な手続きをした。けれど、旦那にこの引継ぎ書の話をしていたし、事務的な事は普段から私がしていたし、この人事異動の時程辛い思いはしなかった。丁寧な仕事をする旦那だったし、情報を共有出来ていて良かった。

私が今死んでしまったとしたら、あの人事異動の時のような思いを娘に背負わせるような事がないように、きちんと引継ぎ書を作っておこうかな…。

【2022年1月1日に生まれて、2022年12月31日に死ぬ】と決めて、その日までにやりたい事をめいっぱい沢山やって、引継ぎ書(エンディングノート)を作っておいて、2023年1月1日に目が覚めたら、また1年の寿命だと思ってめいっぱい生きてみるのも楽しいかもしれない。

よし、来年は精一杯生きるぞ‎|•'-'•)و✧


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