キジ
私の実家はとてもとても田舎だ。山を切って作ったゴルフ場が見える。そして一面の畑だ。農家の方達が茄子や大根や小松菜を育てている。
春の朝にはウグイスが「ホーホケキョ」と鳴いているし、ヒバリがバタバタと飛びながら必死そうに鳴いているのを見るのが日常だ。
3月頃からその鳥さん達の声に混じって「ケーンケーン」とキジの鳴き声がする。「ジビエかよ?」と娘が言ったので思わず笑ってしまった。毎朝のように、オスのキジが、メスを探すかのように、「ケーンケーン」と鳴いている。のどかすぎないか?と思いつつ、毎朝毎朝うちの家の前の畑にいるのだ、独り身の寂しさを毎朝訴えられてもね…私も独り身になってしまったんだよ。寂しいよねぇ?と何だかキジに感情移入してしまっていた。
ところが先日私は夢を見た。
旦那があの世でタイ人と結婚したと報告しにきた夢だ。(笑)
5月になり、あれだけ毎朝寂しそうに鳴いていたキジの姿が見当たらない事に気づいた。雨の日も来て鳴いてたのにな…と思いつつ、ちゃんと生きてるかな?1人で大丈夫かな?と心配になっていた。
そうして昨日、6月に入り、私は朝、娘の小学校の防犯パトロールの当番になり、通学路をバカでかい横断旗を持ってウロウロしていた。
「これじゃ私が1番怪しいな…。柿の木と桜の木の下、落花生の苗が植えてある。植物も他人の子供も育つのが早いな」
なんて思っていると、柿の木の下にあのキジがいた。
「お前ー!そんなとこにいたのかー!」
思わず独り言を言ってしまった。横断旗を持っている上怪しさ全開だ。でも、心配してたから良かった。生きてたんだね。嬉しくなったのもつかの間、あのキジの隣になんか別の動物がいる!茶色い動物が。んー、なんか鳥みたいだな。んー?!
メスだ。メスのキジだ。何だかオスのキジの方に寄り添って行っている。
タイ女だ。…あれはタイ女のキジだ。
フン、ちゃんとやっていけてるか心配したのにラブラブじゃん。私の事心配してそばに居てくれたんじゃないんだね。もう自分の好きなように選んでいくよ、ふーんだ!ふーんだ!!ふーんだ!!!
旦那はきっと本当に死んであの世で結婚したんだろう。私を心配してそばに居たりはしてくれないんだろう。
パトロールをしていると、娘が同級生の男の子と仲良く並んでこちらへ帰って来るのが見えた。
旦那が、死んでから結婚しようが、何を選ぼうが、旦那の自由意志かな…。
娘が旦那にそっくりな笑顔で「ただいまー!」と言った。娘が生きていて、元気に楽しく成長してくれれば、それだけでありがたいことなのだと私が他の人より1番良く知っている。
それだけで充分かな。と思った話。