テスラの財務分析
1.遵守事項
(1)金融商品取引法に関すること
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投資判断にあたっては、自己責任であることにご留意願います。
(2)著作権に関すること
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(3)その他
こちらの記事は、国内外の上場企業をテーマに上げることもありますが、あくまで産業や企業を分析することを目的としており、株価の検証を行うことを目的としておりません。
また、株価や投資判断(売買タイミング、強気、弱気等相場の見方等)にあたってのご質問についてはお答えすることができませんことをあらかじめご留意願います。
2.テスラの会社概要
アメリカのテキサス州オースティンに本社を置く企業です。2003年設立。
電気自動車を製造・販売している他、電動輸送機器・ソーラーパネル・ソーラールーフタイルなどのエネルギー機器も製造・販売しており、クリーンエネルギー関連事業を幅広く展開しています。
社名の由来は、クロアチア出身の電気技師・発明家のニコラ・テスラ。
ニコラ・テスラは発明王エジソンと双璧をなす天才発明家として知られています。
ニコラも同じEVメーカーとして知られていますね。
■表A 生産拠点(SEC 8ーKより引用)
EVの製造は、米国ではカリフォルニア州とテキサス州、中国では上海、ドイツではベルリンで行っています。
ネバダ州ではパナソニックと合弁で電池工場を運営しており、1月24日には36億ドル追加投資して、小型EV200万台分に相当する100ギガワット時の年間生産力を追加します。加えて、電動トラックの量産工場も併設させる計画です。
昨年12月では、新たに工場建設の計画を公表するとしていましたが、今のところ発表されていません。
連日のようにメキシコ、インドネシアが有力と言われており、近いうちに発表される可能性もあるのではないでしょうか。
●2023年1月26日 ブルームバーグ
テスラ、ネバダ州に2工場増設へ-36億ドル、トラック・電池セル生産
●2022年12月17日 ロイター
テスラ、メキシコ北東部にEV工場建設へ 近日中発表か=米通信社
●2023年1月12日 ロイター
3.テスラの主要KPI/2022年12月期4Q
(SEC 8ーKより引用)
■表B テスラのEV製造、販売状況(四半期ベース)
■表C テスラのEV製造、販売状況(年間ベース)
四半期ベース、年間ベースのEVの製造、販売状況が開示されています。
年間販売の伸びはYoY50%の目標には到達しませんでしたが、TOTALで40%の増加は決して悪くない数字ではないかと思います。
四半期ベースでも見ても、BYDやメルセデス、などとの競合が激化する中でも、着実に伸ばして来ている点は評価できるのではないでしょうか。
■表C テスラの指標推移(四半期ベース)
■表D テスラの指標推移(年間ベース)
この表は、
・左が販売台数
・真ん中が営業キャッシュフローとフリーキャッシュフロー(営業CFー投資CF)
・右が純利益と調整後EBITDA(≒償却前営業利益)
四半期毎で見ると、そこそこでっこみ引っ込みもありますが、年間ベースでは概ね成長が続いていることが確認できます。
ただし、私が見ていて最も気になったのは、黄色の🟡を書いたところです。
直近の2022/4Qは営業CFもFCFも悪化していることが確認できます。
その理由は、なぜだろう?
今のテスラの現状を知る。
そのために財務分析をする。
非常に大事なポイントになるかと思います。
4.テスラの財務分析/2022年12月期4Q
(SEC 8ーKより引用)
■表E テスラの業績推移(四半期ベース)
■表F テスラの業績推移(四半期ベース)
テスラは順調に販売を伸ばしており、トップライン(売上高)を伸ばすとともに、粗利益、営業利益ともに金額を伸ばしています。
足元では人件費、光熱費、物流費、そしてリチウムを始めとした原材料費の高騰により、コスト削減は容易には進みません。
テスラの生産現場では、オートメーション化を始め徹底した業務効率化が図れていることはよく知られているかと思いますが、それでも直近の2022年4Qは粗利益率、営業利益率を落とす結果となりました。
テスラは原価低減に向けて、これまでも様々な取り組みを行ってきています。
・バッテリー材料の長期契約
・サプライチェーンの多様化
・権益の獲得
●2022年3月30日 ブルームバーグ
テスラ、ニッケル危機を巧みに回避-複数の企業と契約し供給確保
●2022年5月9日 ロイター
●2021年3月23日 日経新聞
テスラ、EV用ニッケル確保 電池内製へ長期調達
ニューカレドニアから、資源争奪に先手
■表G テスラのP/L推移(四半期ベース)
■表G テスラのB/S推移(四半期ベース)
P/L(損益計算書)、B/S(貸借対照表)を並べて見たときに、私が気になったポイントは、
・粗利益率、営業利益率の低下(既述)
・売上高の増収率に比べて、在庫の増加率が極端に大きい=棚卸資産回転期間の悪化
という点です。
増収基調にある会社が販売機会を逸失しないため、サプライチェーンの混乱に備えておくため、などの理由で在庫を厚めにしておく、ということは一般的にある話ではあります。
ただし、ここで気になるのが、
最近のテスラが値引き販売を始めているという事実です。
増加した在庫を掃くための値引きであるのか。
あるいは競争環境悪化の中でマーケットシェアを先に押さえてソフトウェア課金の基盤を作るのか。
彼らの真の意図を読み取ることが、投資家にも求められることかと私は考えます。
■表H テスラのC/F推移(四半期ベース)
キャッシュフロー計算書は、P/L、B/Sの動きから作ること可能なので、読み取れること基本的に同じです。
2022年4Qは増益ではあるものの、在庫増加に伴う運転資金増加で営業キャッシュフローは悪化しました。
なお、足元の金利高の恩恵を享受するため、債券を5,000億円ほど積み足していること確認できます。
株主的には、自社株買いせいや、となるのかもしれませんが、将来の成長投資に回すのか、還元するのか、イーロンの頭の中にあるキャッシュアロケーションはどうなんだろう?
それは、投資家である私たちも能動的に考えることが、エンゲージメントの強化に繋がっていくはずです。
5.おわりに
今回は財務分析くらいしかできませんでしたが、テスラのような革新的な企業は、より多面的に捉える必要が本当はあると思います。
自動運転、再エネ、蓄電池、カーボンクレジット販売、VPP、スターリンク、ChatGPT・・・
これらを抜きに、テスラを語ることは本当はできないのかな思います。
EV業界でいるなれば、BYDを筆頭に中国勢の伸長も凄まじく、個人的にはバッテリーやサプライチェーン構築に長けるBYDに抜かれる日はそう遠くないかとも考えています。
EVというとソフトウェアのイメージが強いですし、半導体も大事です。
ここの競争もさらに激しくなっていくことでしょうが、この分野でのTSMC、クアルコムの活躍(イノベーションの観点)は個人的に期待するところあります。
そして、ソフトウェアとともに、あるいはそれ以上に大事なのがハードウェアです。
バッテリー、モーターの材料獲得競争もこれからさらに激化するでしょうし、この分野での米中対立の影響が大きく出てくることでしょう。
テスラは、中国で単独で事業展開した初めての外資系自動車メーカーでもあリ、米・中・欧で展開するグローバルメーカーです。
これからは、ASEANでも事業を強化していくでしょうが、米中覇権争いの中で、テスラがどう企業価値を高めていくのか。
楽しみですね😋(私は株主でもないですが)
今回も大変ありがとうございました。