人と知り合うということ
霧島市ー鹿児島県の形を人の脚に譬えますと、丁度股間部に当たります。聳え立って並んでいる山、高千穂峰と韓国岳は仲良く肩を抱き合った兄弟のようです。
標高270メートルにあります、鹿児島空港の展望デッキでは、彼らの雄姿を裾野から山頂まで一望できます。
空港からさらに登ってまいりますと、霧島温泉郷に到着です。見渡しますと、あちらからもこちらからもモクモクとケムリが立ち昇っています。
湯けむりです。その量が尋常ではなく、たちまちのうちに生じては霧消する積乱雲を眺めているようです。
そんな湯けむりを見下ろせる部屋に、今回案内されました。
若干鼻がムッとする、硫黄の香りの立ち込む温泉内でのお話です。
商売上手なそのホテルには、とってつけたような泥パックが女湯に備えつけてあります。
レディファーストです。交代制でしたので、(あくまで一般的に)稼ぎ頭である我々男児は翌日の朝まで待ちました。
露天の景色もこちらの方がよかったです。朝風呂が楽しみで早起きしましたけど、先客が数名いました。おじさん達の朝はいつも早いです。
泥を塗っているとおじさんが入ってきました。豊かな白髭を生やした、陽気そうな雰囲気の。白い頭もまだまだフサフサで、大きなわし鼻も立派です。ちょっと見は白いマリオのようです。
白マリオは私に話しかけてきました。
「どうです、泥パックは、え?顔変えれるわけでもねえけれどな。小栗旬になれるわけじゃねえけど。どれ、ちょっと塗ってみるか」
「もう充分男前ですよ」
彼は老いたマリオです。
気を悪くさせずに人を揶揄うのが好きな私ですけど、一言目からイジリすぎたような気がしました。
幸いにも話の分かる人らしく、私の冗談に気をよくしたようでした。旅先で話し相手が見つかった嬉しさもあったのでしょうか。
少し雑談しました。
私も旅先の温泉では誰かと話したくなります。ですがいつもチキってしまいます。
おじさんを見習いたい、そう強く想いました。
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