オーストラリアで人生初の「夜のお仕事」

こんにちは、Mikoです。

私がワーキングホリデーでオーストラリアに滞在中の事。ブリスベン近郊の農場で働きながら当時付き合っていた彼と約1年同棲していたがお別れする事になり、心機一転新しい生活を始める為単身シドニーにやって来ました。
その頃、大分貯金が底をついていたのだが、セカンドビザ(ワーキングホリデーで特定の条件を満たすともう1年貰える)が取得できたので、日本に帰国せずにそのまま何とか滞在し続けたいと考えていました。

「シドニーに着いたらすぐ仕事を探さなくちゃ…！」

シドニー到着。レジュメ(履歴書)はすぐに配れる様に常にバックパックに入れてたのでシドニーの町を散策しつつ配りまくった。

すると意外とすぐにラーメン屋の仕事ゲット！

シドニーの日本料理店で働く場合大きく分けて2通りある。

①オーストラリアの最低賃金に基づく時給で、選べるならもちろんこっちが良いが、募集をしていない事が多く難関。
②時給は超低いが、常に人を探している場合が多く、日本レストランなら特に日本人は重宝され面接も通りやすい。

都市シドニーにはかなりの数の後者タイプのアジアンレストランが存在し、様々な事情を持つ人々が働いている。

とりあえずすぐにラーメン屋の仕事開始。
中国人オーナーによる日本のラーメン店で、ウェイトレスの仕事だった。まかないも出るので一食分食費が浮くし、ラーメンも普通においしいところだった。
とりあえずの仕事はゲットできたものの、その仕事だけでは、家賃の支払いもギリギリ。早く貯金を復活させて、ある程度余裕のある生活が送りたい…。

「お金早く貯めたいな〜！」

そんな話をラーメン屋の日本人女子スタッフと話していたら、朗報が！

彼女「私も今、ラウンド(オーストラリア一周する事)に向けて早くお金貯めたいから、もう一つ仕事かけもちしてるよ！良かったらその仕事紹介しようか？」

私「そうなんだ！え！いいの？それすごくありがたい！どんな仕事なの？」

彼女「クラブだよ。」

私「え……。」

彼女「ん？」

私「ク、クラブってあの、銀座とかにあるやつ…？」

彼女「そう！お客さんの隣座ってお酒作って飲んでお喋りするだけだし、楽だしお金もいいよ！時間帯も夜だから、かけもちもできるし。」

私はお酒もあまり飲まないし、夜遊びも滅多にしない。もちろん夜の仕事の世界には一切縁のない人生を歩んできた。まさにニューワールド。

私「そうなんだ…。どんな国の人が働いてるの？お客さんとは英語で話すの？お客さんはオージー(オーストラリア人)なの？」

彼女「日本のオーナーがやってるお店で、働いてる人は全員日本人だよ！お客さんはほとんど日本人で、大体駐在員とか。たまーに接待とかでオージーも来るけど、英語担当の人いるから当たる事はないと思うから大丈夫だよ。」

日本から遠く離れたこの地で、日本人による日本人の為の夜のお店が存在する事に正直驚いた。それほど需要があるってことなんだろう。

私「へぇ…。なんかさ…夜のお店だし、その…。触られたりするの…？(1番の心配)」

彼女「しないよ！その辺はお店の人が守ってくれるから。嫌なお客さんなら言えば席変えてもらえるし、大丈夫だよ！」

私「そうなんだ…！(ホッ…)」

掛け持ちは考えていたが、まさかの夜の仕事は考えてもいなかった。でもかけもちをするからには時間的にも良いし、紹介だから採用してもらえる確率も高い…。
よし、一度しかない人生！嫌ならやめればいいし、何事も経験！エイヤー！と清水の舞台から飛び降りた。

いざ、面接へ

彼女からもらった店の住所を見て思った。

（あ、前にシドニーに住んでた友達が、危険だから行くなって行ってたエリアだ…。）

まぁそういうお店がある地域だからという事で理にかなっているな…と思いながら緊張した面持ちで店の前まで到着。

いくら紹介とはいえ、さすがに使えなさそうな子は雇わないだろう。やると決めたらしっかりやりたい私。いつもの見た目とは打って変わって、かなり派手目のメイクとセクシー系の服装で挑んだ。「昼のダンゴ虫」が「夜の蝶」になるにはそれ相当の努力が必要なのだ。

店に到着。外観は、バーの様な落ち着いた品のある店構え。ピンクのネオンバチバチかつイケイケな感じでなくて本当に良かった、とひと安心。

人生初の「ママ」とご対面

中に通され、ママを待つ。面接はどうやらママと直接するようだ。店の中をちらっと見ると上質そうなソファやテーブルがあり、営業時間外なので薄暗いが、テレビで見た事のあるようないわゆるクラブの雰囲気が感じられた。

「ごめんなさいね、お待たせしました～。」
とママが登場。

整えられたシルバーヘアで着物を着た、銀座の街が良く似合いそうなとても品のあるマダムだった。やさしい笑顔と穏やかな雰囲気でひとまずホッとした。私のレジュメを手渡し、しばし質疑応答。

ママ「はい。じゃあ、これからよろしくお願いしますね。(ニコッ)」

わーい！晴れて面接突破！良かった！(^O^)

ママ「じゃあさっそくお仕事する時の名前なんだけど、本名でやっている子もいるけど、どうする？よかったらこのリストから名前選んで。」

(名前…。あぁ源氏名か！)

まさか私の人生で源氏名を持つなんて思っても見なかった。私にとってパラレルワールドのようなこの夜の世界。本当の名前は現実世界の為に取っておきたい。ただ、名前を呼ばれた時に気づかない様では支障がでるだろうから、自分の名前に近い方がいい…。そして私は「ミユ」を選んだ。

ママ「ミユちゃんよろしくね！あ、私の事はママって呼んでね。」

こんなに大人になって、人生で初めて「ママ」と面と向かって呼ぶ人ができるなんて思ってもみなかった。私の母親は「ママ」という呼ばれ方は嫌いなので、ずっと「お母さん」と呼んできたし。人生初のママ。夜の世界に一歩踏み出した事を少し実感した。

いざ、夜の世界へデビュー

出勤したらまず着替え。自分のドレスを持ってきて来ている子が多いが、ドレスのレンタルもできるようになっている。私はクラブの接客に使えるようなドレスは皆無だったのでそれはありがたかった。着替えが終わったらメイクや髪を整えて出番を待つ。

次々に女の子が出勤してきた。どんな子達が働いてるんだろうと正直びびっていたが、みんな明るく挨拶してくれてホッとした。

そしてついに呼ばれて出番が来た！
営業時間内の店は落ち着いた品のある雰囲気ながらも照明がキラキラしてがあり、テレビドラマの中に入ったような感じだった。

呼ばれたテーブルのベルベット調のソファには日本人の駐在員3人が座っていた。
仕事としては、その一人一人にそれぞれ隣にホステスが付き、お酒を作ってお話するとの事。
営業開始前にちょっとしたトレーニングがあり、お酒の作り方などを教わった。普段あまりお酒を飲まない私は、お酒を造るのも初めてなので超緊張。しかも会話をしながらなのでさらにハードルが上がる。
でも私が最初に付いたお客さんは穏やかな良い感じの人で、何事も無くお酒作りを終えてひと安心。

連発される下ネタにドン引き

ここがそうゆうお店だからなのか、はたまたその人だからなのか、そのグループのボスらしき男性が、ずーっと下ネタを言ってアハハと笑っている。それに連れて部下の2人や付いている女の子達も一緒に笑っている。

え…全然面白くないんだけど…。

(みんなほんとに面白いから笑ってるのかな？じゃないよね多分…。だったらみんなすごい笑う演技上手い…。あ、ここで求められるのは演技力なのか、なるほど…。あ、私今引いてるの顔に出てないかな？いかん、いかん…。笑え、私の顔……！！)

そして渾身の笑顔でなんとか談笑を続け、引きつった顔面の筋肉を休ませるべく、化粧直しと言ってトイレへ行く。

(ふぅ～～～……。)

そしてまた引きつった笑顔を作ってから席に戻る。また面白くもない下ネタを聞いて笑うふりをする。

え…なにこれ…

辛っ………。

でも人の慣れってすごい。

2回、3回と出勤するに連れ免疫が徐々に付いていき、お客さん達の話す下ネタにも多少慣れていった。最初に聞いていた通り、触られる事も無いし、変なお客さんもいない。
お客さんによっては普通の世間話やオーストラリアの話をしたりして少し楽しい時もあるし、とりあえずはお金を貯めるべくしばらく続けてみようと思った。

初めてのストリップ鑑賞

その日はスペシャルイベントの日で、なんと女性のストリップダンサーが来るとの事。ストリップショーは初めてだったのでどんなものなのか見てみた。

ショーの開始。
妖艶な音楽か何かでダンスするのかと思っていたが、流れてきた音楽はなんと映画「キル・ビル」のテーマ。

そこにキレッキレのダンスで、コートで身を包んだダンサーが登場。拍手喝采！
手には日本刀を持ち、それを優雅に振り回しながらコートを脱ぎ、そしてダンス！
アジアの血が入っていそうなお顔立ちのダンサーさんで、きれいなお顔と引き締まった体がモデルさんみたいだった。

紐みたいなものを体に巻き付けていていて、日本刀片手に踊り続けるダンサー。お客さんが歓声と共にその巻きつけられた紐にどんどんお札を挟まれていく。

ショーは大盛り上がりで終了。
日本のクラブならではのこの選曲と、サムライ魂を込めたパフォーマンス、素晴らしきショーをありがとう。

離職を決意した王様ゲーム

1か月ほど経ち仕事にも少し慣れてきたある日。10人くらいの駐在員グループが来店。

大き目のブースで、例のごとくお客さんとホステスが交互になるように座る。私は何故かその中で一番年長者であろう人の隣に座る事になってしまった。そして地獄の王様ゲームが始まったのである…。

うそ…まじでヤダ…。

次々と王様が命令を下しゲームは進む。そしてついにその命令が私に下ることに…。

(頼む……！ライトなやつにしてくれ……！！)

なんと私と、隣の年長者が…

鼻と鼻でキス。

終わった。
王様は無慈悲だった。

しかし私は仕事においてはとても真面目。そして隣の人物はどうやら役職の高い人もしくは取引先の人物の様子。

(私の言動で今後の場の雰囲気を壊してはいけない…。)

そんな変な責任感と周りの期待とプレッシャーを感じ、覚悟を決めた。

よし…やるぞ……！！

脂っこい顔面が近づいてくる。心はもはや、無の境地。

鼻と鼻が…

チュッ………(絶望)

試合終了のゴングが頭の中で鳴り、

はい、終了ーーーーー。

まとめ

別にお酒が好きなわけでもないし、人脈を作りたいわけでもない。完全にお金の為だけと割り切って働いていたが、やっぱり続かなかった「夜の仕事」。

私は綺麗な格好しておしとやかに座っているよりも、大声で「いらっしゃいませ〜！」と言いながらTシャツでラーメン運ぶ方が好きだわ！と思った。
合わない仕事を経験して、改めて自分の求めるものが見えた気がした。

最後までお付き合いいただきましてありがとうございました！

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