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漱石と大江健三郎 (英語対訳)4 Soseki and OE Kenzaburo (English translation)4
4 漱石と大江健三郎 (1)
安部公房は 日本人作家については、大江健三郎と安岡章太郎のみを評価していました。井上靖を「物語作家」、井伏鱒二を「随筆作家」と罵倒していたそうです。三島由紀夫らとともに第二次戦後派の作家とされた。友人の大江健三郎によれば「全集」を全部読んで面白いのは漱石と公房だという。三島由紀夫を「急死しなければ、ノーベル文学賞を受けていたでしょう。非常に、非常に近かった」とノーベル賞関係者が後に語っています。
漱石が生きた「明治の精神」(大江健三郎さんに聞く、「朝日新聞」2014年4月19日)について大江健三郎は次のように話しています。「「こころ」を読んだのは高校二年生の時。友人のことを考えていたので、感銘を受けました。次はもう四十歳でしたが、先生の遺書の言葉「記憶して下さい。私はこんな風にして生きて来たのです」を引用してエッセーを書きました。
「「こころ」は知識人の語りかけの形で、新しい文体を作っています。特別なルビに注意して音読すると東京弁のリズムがあり、生き生きした効果もあげている。時代を感じさせる風格はありますが、今現在の手紙として読めます。(中略) 最後の事件を物語った後、さらにスピードと強さを保って、十分に書き終え得るのが作家の実力です。それを「明暗」とともに、よく表現していると思う。」
大江健三郎も四十歳を過ぎた後に夏目漱石を再読して魅力を発見したという。
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