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漱石と大江健三郎 (英語対訳)2 Soseki and OE Kenzaburo (English translation)2
2 漱石と大江健三郎の共通性(1)、日本古典への回帰
漱石は、英文学者としての視点から、『古事記』を日本の民族文学の源泉として評価し、その研究に力を注いだ。漱石は青年期に、日本古典に深い興味と敬愛の念を持っていた。特に『古事記』だけでなく、『源氏物語』『伊勢物語』『方丈記』『徒然草』『万葉集』などの古典文学に影響を受けている。
漱石は、日本古典の言語や文体、神話や精神を分析し、その美しさや意義を評価した。また、自らの小説にも古典の要素を取り入れている。『草枕』における『万葉集』 や謡曲の受容に見られるように、漱石は、「自然主義」 の作家連とは異なった場所から、和文系古典の受容をしてもいた。
漱石は、自然主義文学とは異なる場所から、日本古典への回帰を志向した。弟子の芥川龍之介も同様に、日本古典への親愛の態度を示していた。
大江健三郎は『古事記』や『万葉集』について、日本文化の源流として高く評価していた。彼は自身の作品にも『古事記』や『万葉集』からの引用や影響を多く取り入れている。例えば、『燃えあがる緑の木』では、古事記の神話を現代に置き換えて物語を展開している。また、『懐かしい年への手紙』では、『万葉集』の歌を引用して自身の思いを表現している。
大江健三郎は、『古事記』や『万葉集』が日本人の心性や感性を表すものであり、現代にも通じる普遍的な価値を持つと考えていた。彼は自らの作品で、古典と現代との対話を試みていた。
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