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『文章の名手・藤沢周平作品の魅力』(英語対訳)

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藤沢周平の作品は、文章に詩情があり、人間の心の機微が巧妙に表現されている。風景描写の美しさと心理描写の丁寧さが際立っている。『橋ものがたり』、『せみ時雨』、『三屋清左衛門残日録』…
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2024年2月の記事一覧

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)20

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)20

20『半生の記』(ピックアップ)3

『半生の記』(ピックアップ)3
 
「療養所・林間荘」
    これ以降は、他のエッセーでも書かれているように、肺結核を煩い、闘病生活を経て、業界紙の記者になり、作家生活に入っていくまでの道筋が書かれています。
「死と再生」
 藤沢周平が再婚していたことは知らなかった。最初の妻をガンで亡くしているのです。当時の妻は二十八歳という若さだった「半生の記」には「子供

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)19

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)19

19『半生の記』(ピックアップ)2
​「吃音矯正学院」
    藤沢周平が作家デビューするまでは、教職を経て、業界紙に勤める前に印刷会社に勤めていた。そして、会社に勤めながら、夜間の旧制中学校(現在の高校)に通っていたのも興味深い。
「敗戦まで」
    藤沢周平は、印刷会社に勤めていたが、その後再度転職し、生まれた村の役場の職員になっている。その村役場で敗戦を迎えます。
「湯田川中学校」
   

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)18

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)18

18 『半生の記』(ピックアップ)1
 

『半生の記』(ピックアップ)1

「自己確認」
 自伝めいたものを書くことについて、今ひとつ気が乗らないのだが、藤沢周平はどのような道筋があって小説家になったのかというのを自身で確かめるには、一通り自身の過去を振り返らないと分からないといって書いているのが本書です。
「学校ぎらい」
 他のエッセーでも書かれていますが、藤沢周平は小学校五年生の時に授業中に

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)17

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)17

17 『半生の記』概要
 「自分の過去が、書きのこすに値いするほどのものかといえば、とてもそんなふうには思えない」という含蓄の作家が初めて綴った、貴重かつ魅力的な自叙伝。郷里山形、生家と家族、教師と級友、戦中と戦後、そして闘病。藤沢文学の源泉をあかす稀有なる記録ともなっている。巻末に詳細な年譜も付した、伝記の決定版。
 半生の記で13作品(自己確認~死と再生)、わが思い出の山形で19作品(記憶につ

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)16

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)16

16『小説の周辺』(ピックアップ)2

「読書日記」

「ミステリイ読書日記」

 ミステリ好きの藤沢周平の読書録である。忙しい執筆の間に結構な冊数のミステリイを読んでいることが分かる。

「転機の作物」

 初期の藤沢周平作品は内容的に暗いものがあった。初期の小説は物語の中に自身の鬱屈した気分を流し込んだものとなっており、いわば、私小説といってよいものであった。だが、「用心棒日月抄」からは内容に

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)15

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)15

15『小説の周辺』(ピックアップ)1

「碁の個性」、「野口昴明さんの碁」

    他のエッセーにも度々書かれていますが、藤沢周平の碁好きが伺えます。

「心に残る人びと」「再会」

    肺結核の治療のために上京して過ごした篠田病院のことが書かれています。藤沢周平を知る上では、この肺結核の事を避けて通れないが、自身の当時の心境などが綴られているのが興味深い。
『長塚節・生活と作品』、『海坂』

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)14

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)14

14 『小説の周辺』構成
   Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと区分けされており、Ⅰが藤沢周平が住んでいる場所や日常の風景を綴ったもので、Ⅱが郷里のことを綴ったものとなっています。 Ⅲは小説についての背景などを綴っていますが、多くは俳句の『海坂』や長塚節、小林一茶など、俳句に関することとなっています。
    全体を通して比較的短い、所謂エッセーそのものの感じです。Ⅲ節は小説と関係の深い作品が多い。
 

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)13

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)13

13 『小説の周辺』概要
 国民的作家としてあまたの時代小説を上梓しながら、自身を語ることは稀だった藤沢周平が、郷里・鶴岡での幼年時代、師や友との交流、創作の秘話など、人生折々の忘れ得ぬ情景を綴った滋味深いエッセイ集。1990年、文春文庫として刊行後、版を重ね、中国でも翻訳。翻訳版(中国語簡体字版)が、中国で最も栄誉ある文学賞の一つとされる第八回「魯迅文学賞」(2022年9月20日)の翻訳文学部門

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)12

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)12

12『周平独言』ピックアップ12

12 「雪のある風景」
 「周平独言」(山形グラフ)に「雪のある風景」と題するエッセーがあります。単行本には所収されていません。この中で藤沢周平は、友人が衆議院議員選挙に立候補し、その選挙演説にひっぱり出されたことを紹介しています。後にも先にも、藤沢さんが選挙の応援演説に立ったのはこの時限りです。
 「ふだん私は、こういうことには慎重な方である。それは、ほかのひ

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)11

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)11

11『周平独言』ピックアップ 11

11「宮崎先生」

 「賢治。オ、オーギ(扇)か」と言う。すると賢治はむきになって、「オ、オーギでなく、た、ただのオ、オーギ」と言った。そんなふうに、私たちは賢治のどもりをからかっていた」(『周平独言』)家族は、学校の教室の中で声が出ないのを、大変心配したという。特に母親は、「ンださげ、賢治の真似すんなと言ったのに」と周平を叱った。賢治さんのどもりは、周平のい

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)10

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)10

10『周平独言』ピックアップ 9・10

9 「汗だくの格闘」 直木三十五賞受賞作品の題名誕生秘話。

10 「静かな世界」「風景と人物」「展覧会の絵」
 藤沢周平の一側面を覗き見る思いがした内容。絵を見るのが好きで、西洋画なら風景画、日本画なら人物画が好みだったようです。

10  "Shuhei’s Monologues" Pickup 9・10

9  "A Sweaty Fight"   

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)9

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)9

9『周平独言』ピックアップ7・8

7 「木瓜との出会い」
 藤沢周平作品によく登場する海坂藩は架空の藩だが、その名の由来を紹介しています。

8 「コンニチハ赤チャン」
 小説を書く大変さを述べている。藤沢周平は小説をすらすらと書けるのではなく、漫然と机の前に坐っていることが多かったらしい。その間にすることといえば、鼻毛を抜いたり、万年筆のインクを入れ直したり、原稿用紙をいじったりするのです。

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)8

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)8

8『周平独言』ピックアップ 6

6 「書斎のことなど」
 もとでのかからない小説は、さほどよくない。そう藤沢周平は述べています。つまり、小説を書くにあたって、必要ならば資料となる本を購入し、また、取材旅行もしなければならないということなのです。そういえば、時代小説・歴史小説の大家には取材旅行を精力的に行った人が多い気がします。このことは時代小説・歴史小説に限った話ではなく、現代小説についてもいえ

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藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)7

藤沢周平エッセー『周平独言』『小説の周辺』『半生の記』ダイジェスト(英語対訳)7

7『周平独言』ピックアップ 5

5 「流行嫌い」

 このエッセーに限らず、このエッセー集では端々で述べられていることですが、藤沢周平は自身が流行ものを追いかけるのが嫌いな人間であるといっています。そして同時に偏屈さも持ち合わせていると述べています。このあたりが小説から微塵も感じられないから面白い。

7 "Shuhei’s Monologues" Pickup 5
5. “I Hate Tre

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