占い師さんに勧められてカラオケに行く
占い師さんに会ってきた。
美容院で紹介してもらったんだ。
特に悩みはないんだけど、なんとなく軽く絶望してるのはどうしてか知りたくて。
目の前に現れた占い師さんは、とても感じの良いきれいな女性。
数秘と、顔相と、手相と、気を診てくれた。
1時間だったけど、すっごく褒めてくれた。
なんでもできる、どんなことも叶うって言われたよ。
だけど、喉のチャクラ?で気が滞ってるから、そこを流さなくちゃダメと。
とりあえず、うーん、1人カラオケに行って。
と言われて。
了解です。初1人カラオケ。
息子に、2時間じゃ足りないよ、3時間にしな、とアドバイスをもらい、ドッキドキでワンドリンクのコースを頼む。
ちょっとはしゃいで、クリームソーダにする。
15年ぶりのカラオケ。
やっぱり尾崎豊から。
まずは17歳の地図を広げないとな!
見よう見まねで操作したが、曲が始まった途端、余りの爆音に驚いて止めてしまう。
ああ、びっくりした。
気持ち整えて、改めて歌う。
15の夜も歌っとこう。
次はもう1人の兄貴、チェッカーズな。次はこれ、次はこれ、と歌いたい曲が溢れてくる。
そのうち、クソまじめな私がでてくる。
音程をきちんと合わせなくちゃ、高得点を出さなくちゃ、クリームソーダも飲まなくちゃ、隣の部屋の人に、おばさんだとバレないように今どきの歌も歌わなくちゃ、あ、そうだ、喉のチャクラを流さなきゃ、とギュウギュウと頭の中がいっぱいになる。
これが軽い絶望感の正体か?
ああ、苦しい。苦しいよう。
音程がハズれるよう、高得点が出ないよう、クリームソーダはいやだよう、隣の部屋の男の子がプロみたいに上手いよう、チャクラが流れてんだかわからないよう。
そして、立ち止まる。
カラオケって、もっと楽しいものでは?
楽しまなくちゃ!
せっかく来たんだから。
ちょっと待て、これも違うんだよ。
楽しまなくちゃいけないとか、無理矢理なのよ。また自分を縛ってるのよ。それじゃダメなのよ。
いや、いやいや、いいんだよ。
ダメじゃないんだよ。
そんなふうに思ってしまってもいいのよ。
いいんだよ、いいんだよ、音がズレても。
クリームソーダは飲みきれなくてもいいよ。
喉のチャクラはきっと流れたよ。
それと、クソまじめな私でもいいんだよ。
苦しくてもいいんだよ。
楽しまなくちゃと思っちゃうのもいいんだよ。
全部、私なんだよ。
これでいいのよ。そう、思おう。
いろんなことを考えながら、3時間歌い切った。
自由になれた気がした、54の夜。