「現場で解決できるツールを手に入れた」ノーコードで企業のDX化を促進するサスケWorksとは?
ChatGPTが社会的な話題を集めた背後には、プログラムの知識なくしても、日本語の対話形式で高度な内容を出力する能力がありました。実はChatGPTが一世風靡する以前から、コーディングせずに業務システムやWebサイトを作成できる仕組みが存在していました。その技術の名は「ノーコード」。ブラウザ上での部品の配置だけで、業務システムが構築可能になるという革新的なアプローチです。そして、この「ノーコード」によって業務システムを手軽に構築できるWebサービス、「サスケWorks」を提供している企業が、札幌に存在します。
その会社は、株式会社インターパーク。同社の取締役副社長兼CTOである須田祐馬さんに「サスケWorks」とDX事例について、詳しくお話をお伺いしました。
ノーコードでWebアプリを作れるサービス「サスケWorks」
ーー株式会社インターパークは、どのような事業を手がけているのでしょうか?
須田祐馬さん(以下、須田) : 主に自社でWebサービスの開発・運営を行っております。主力サービスの「サスケ」は顧客管理、マーケティングオートメーション(MA)、営業支援(SFA)が可能です。このサービスは約10年に渡り提供し、現在の契約数は約1,000件となっています。
さらに、050番号を使用できる「SUBLINE(サブライン)」というアプリも開発・運営しております。現在はリリースから5年で累計回線数が4万番号を越えました。
最新のサービスとして「サスケWorks」を提供しています。
ーーサスケWorksについて具体的に教えてください。
須田 : ノーコードでWebアプリケーションを構築できるサービスです。日報、見積書作成、顧客管理などが可能で、Excelでの業務も、ほぼサスケWorksで実現できます。
ーー他のノーコードサービスと比べて、サスケWorksの特徴は何ですか?
須田 : 一番の特徴は自分たちで作成したアプリをストアで公開できる点です。サスケWorks版のAppStoreのようなものですね。現在は60以上のアプリが公開されています。有料での販売も可能ですので、収入を得ることも可能なんですよ。
「現場で解決できるツールを手に入れた」
ーーサスケWorksを導入する企業に特定の特徴は見られますか?
須田: 業種には依存せず、多岐にわたる企業が利用しています。中小企業が主な利用層で、特に50~100人規模の企業が多いです。意外かもしれませんが、全体の30%程度は10人以下の規模です。企業のみならず、部署単位での利用も一般的ですね。
ーー部署単位での利用が可能なのですか?
須田 : そうなんです。スタンダードプランで月額5,000円なので、部署やマネージャーの予算でも容易に導入できます。小規模な導入から始め、成功を受けて会社全体へ展開するケースも珍しくありません。
ーー具体的にサスケWorksの導入がもたらすメリットは何でしょうか?
須田 :「現場で解決できるツールを手に入れた」という声が、強いメリットとして挙げられます。
例えば弊社の人事部署では人事管理や採用管理のアプリを自作し、現場でカスタマイズして使っています。システム部署への依頼が要らず、自分たちで使いやすいアプリを作り出すことが可能です。
この自由なカスタマイズと現場での運用がサスケWorksの最大のメリットで、情報システム部を通さずに導入できる利点があるんです。
手作業と比べて、かかる時間は大幅に低下
ーー現在、おおよそ何社がサスケWorksを導入していますか?
須田 : 約1,300社に導入いただいており(※取材日時点)、月に80~100件の新規お試しの申し込みがあります。
ーー導入された企業の中で、特に代表的な利用事例があれば教えていただけますか?
須田 : 北海道のバスケットボールプロチーム、レバンガ北海道はAI-OCR機能を特に気にいっています。この機能は従来のOCR技術とは異なり、判別が困難だった字もAI技術を用いて正確に読み取ることができます。スキャナを使わずにスマホカメラでデータを取り込むことも可能で、手間と時間を大幅に削減しています。
ーーレバンガ北海道は他にどのような機能を使用していますか?
須田 : レバンガ北海道は新たに飲食事業を展開し、「アルバイトスタッフの出退勤管理」のニーズが出ました。サスケWorksでアプリを作成し、スタッフの打刻管理システムとして運用しています。通常のシステム構築に比べ、費用と管理の手間を削減でき、大変満足されています。
現場のフローを変えずにDX化できる
(ここからはサスケWorksのマーケティングを担当しているクリエイティブ戦略部プランニングユニット マネージャーの鈴木芳美さんにも同席いただきました)
ーー他の効果的な事例があれば、お聞かせください。
鈴木芳美さん(以下、鈴木) : 物流の総合サービスを提供されている株式会社TMTは特に注目の例ですね。こちらもAI-OCR機能を活用いただいています。
株式会社TMTの管理部門ではドライバー約30名の紙の運転日報を給料計算のために、パソコンで入力していました。月末月初の忙しい時期に手作業での入力は時間とストレスのかかる作業でした。
ーーどのように解決されましたか?
鈴木 : サスケWorksのAI-OCR機能の導入により、管理部門では運転日報をスキャナーで読み込むだけで済むようになり、打ち込む作業はほぼゼロとなりました。この変化は、現場のフローを変えずに効率化を実現し、工数を大幅に削減しました。
ーーなぜドライバー自身が運転日報をデータ入力しなかったのですか?
鈴木 : 最初はスマホ上で運転日報を入力する方法も検討したそうですが、ドライバーたちの中には年齢が高い方もいて、新しいシステムへの適応が難しかったそうです。
私が興味深く感じたのは、現場のフローを変えずにDX化できたことです。現場は今までと変わらず、紙の運転日報の提出方法を維持しながら、管理部門での工数をゼロに近づけることができました。
新しいツールを導入する際には「現場からの抵抗がある」と言われますが、この事例では現場の抵抗もなく、お互いにとってWin-WinなDXの成功事例と言えると思います。
世の中に紙仕事はまだまだ多い
ーーかなりイメージしやすい導入の成功事例ですね。紙業務の効率化が一般的なのでしょうか?
鈴木 : そうですね。私自身、サスケWorksに関わり、世の中の紙仕事の多さを改めて感じます。有料老人ホームの紹介サービスを提供されているキットカンパニー株式会社も今まで紙を使用していた業務を効率化した事例です。
従来は、相談内容をすべて紙に手書きし、ファイリングしていました。会社設立20年の経過でファイルが膨大になり、紙の保存場所も圧迫していました。1年前に相談があった方の資料を探そうとすると、なんと30分もかかったそうです。これをきっかけに「非効率だ」と感じ、サスケWorksを導入。既存の紙のデータを移行し、相談者のデータベースを構築しました。
導入後は1分以下で相談者との履歴が見つかるようになり、「すごく便利になった」とお客様から喜ばれました。紙で相談者情報を管理していたときは、別の担当者がどういった話をしているか分からなかったそうですが、現在はサスケWorksで相談者名を検索すれば、担当がどのような話をしているかも分かり、便利になったそうです。
困っている日本法人を助けたい
ーーデータベース化できるのはかなり便利ですよね。
鈴木: 確かにそうです。セキショウベトナムというハノイ市の現地法人での活用はそれを象徴するよい事例です。彼らはExcelからサスケWorksに乗り換え、案件情報をデータベース化することで業務効率を実現しました。
セキショウベトナムでは現地のベトナム人と日本人の管理スタッフが働いており、以前はExcelで見積書と発注書を作成していました。しかし、日本語に不慣れな現地スタッフが変換間違いをしてしまうことが問題でした。サスケWorksを導入し、案件情報をデータベース化させ、さらに帳票機能を活用して案件情報から見積書を発行する仕組みを作りました。一方で現地スタッフが登録する入力項目は最小限に抑え、その結果、変換ミスが減少し、見積書や発注書をチェックする管理工数を大幅に削減させることができました。
須田 : ここはサスケWorksの初の海外事例で非常に面白いケースですね。サスケWorksが英語にも対応していますので、アカウントごとに英語、日本語の切り替えができます。
鈴木 : 社長さんの言葉によれば、現地のベトナム人と協働する日本法人が多く困っているとのこと。セキショウベトナムとして「サスケWorksを在越日系企業へ提案していきたい」とおっしゃっていただき、サスケWorksの価値を認識することができ、とても嬉しいお話でした。
ーーサスケWorksの導入を検討している企業へメッセージをお願いします。
須田 : まずは使ってください(笑) 30日の無料トライアルがありますからね。
「速い変化」に乗っかれる人がベスト
ーー株式会社インターパークの今後をお聞きします。株式会社インターパークは札幌に本社を置き、東京にも営業拠点がありますね。札幌での創業からの経緯や今後の展望について教えてください。
須田 : 弊社は札幌での創業から成長し、東京にも営業拠点を設けました。現在の2拠点体制は非常に効果的で、特に問題は感じていません。
ーー拠点ごとの役割やスタッフの構成はどのようになっていますか?
須田 : 札幌本社では約40名が勤務し、8割は道内出身(※取材日時点)。開発環境が優れているため、技術者の集結が容易です。一方、東京拠点では14名の営業スタッフがいます。この体制が非常にうまく機能しています。
ーー札幌本社の開発チームの具体的な構成は?
須田 : 開発チームはプログラマー約5名、他はデザイナー、マーケティング、管理部の社員から成り立っております。中でも数人が主力製品であるサスケWorksの開発を担当しています。
ーー5名でサスケWorksを作られているですか?
須田 : そうですね。ただ、その中でもサスケWorksを作っているのは数人で、他にSUBLINEも開発している技術者もいます。
ーーすごい少数精鋭ですね!驚きました。それでは今後、どのような方にインターパークへ入社してほしいですか?
鈴木 : 世の中、変化がとても速い。特にWebはもっと変化が速いですよね。「速い変化」に乗っかれる人がベストなんじゃないかな。変化に対して「できない」「いやだ」になっちゃうと厳しい。「これもあれも一緒にやっていこう」と一緒に波を転がっていける方が良いんじゃないかと考えています。
須田 : そうですね。私たちは「定形の仕事」がない。常に「どうやればいいか、みんなで考えよう」という状態です。その状態を楽しみながら、一緒に考えて行動していける方が良いですね。
ーーインターパークの今後の目標を教えてください。
須田 : 近い将来の大きな目標はIPOです。2年後の上場を目指して動いています。資金調達し、ビジネスをさらに拡大していく計画です。
ーー株式会社インターパークの須田さん、鈴木さん、お忙しい中、ありがとうございました!
編集後記
ITは人の暮らしを便利にするものです。しかし、自分たちで提供しているサービスが本当に顧客の役に立っているのでしょうか。IT経験者なら、そのような疑問を抱いたことがある人は多いと思います。
サスケWorksの紙からデータへ移行した具体的な事例は顧客の喜びをありありと想像できます。顧客にとってサスケWorksは真に便利なツールとして愛されていると感じました。
最も驚いた点はわずか5名のプログラマで自社サービスの技術部分を制作していること。他社ノーコードツールと比べて、何分の一の人数なのでしょうか。
そして最後の上場宣言もまた驚きました。実際に上場すると、さらに注目される存在になるでしょう。上場前の貴重なインタビュー記事になったかと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。(記 : マーケティスト・赤沼俊幸)