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社会の困りごとを解決する|「北のITシーズフェア2024」出展企業レポート第3弾

「北のITシーズフェア2024」出展企業レポート第3弾は、「社会の困りごとを解決する」をテーマにお届けする。今回の4社は【ビットスター】【メディア・マジック】【コア 北海道カンパニー】【ウイン・コンサル】。社会課題をどんなアイデアで解決したのだろうか——。


【ビットスター】保育士の人手不足と地域の防災に効くアプリ

人手不足に悩まされている業界は多い。そのひとつが医療・福祉であり、保育士の不足はもはや社会課題といえる。少ない人数でやりくりしている保育士の負担を減らし、しかも保護者にとっても便利なツールが、登園管理システム「PiPit登園」。これは、事務作業を減らして、子どもたちとの時間を増やしたいという現場の声から生まれたという。

例えば、保護者がスマホから「欠席」と登録すると、即時に反映されて先生が確認できる。だから、電話連絡がいらない。それは保育士も保護者も楽にするだろう。しかも、欠席情報から自動的に出席簿を作成してくれる優れモノなのだ。出欠だけではなく、送迎バスの利用や預かり保育の予約も管理できる。

道内外の保育園やこども園、幼稚園などに導入されているという。それぞれの園に合わせたカスタマイズができるのもあり、使いやすいと好評のようだ。

▲「PiPit登園」ウェブサイトから

「PiPit登園」を開発したのが、「ビットスター株式会社」である。展示ブースを訪ねたときに対応してくれたのは、4月に入社した初々しいふたり。同社の強みは「一気通貫のサービス」と教えてくれた。なるほど確かに、インフラ構築・WEB制作・ソフトウェア開発・MSP(ITシステムの保守・運用・監視などを担うサービス)を事業の柱に、「ITで、こまったを、よかったに。」をミッションに掲げ、顧客の課題解決をサポートしている。

▲ビットスター株式会社のNさんとSさん

もう一つ、注目のサービスがある。それは、災害時に市民の命を助ける「ツナガル+」。災害時には、開設している最寄りの避難所を一覧や地図で見られるほか、支援物資などの情報を避難所内また自治体と共有できるという。一方、平常時には、近くの避難所の位置やルート、設備などを把握するのに使える。現在は福岡市で導入されているが、昨今は異常気象による災害が増えていることもあり、防災アプリとして期待される。


「北のITシーズフェア2024」閉幕前の人波が引き始めたころ、再び展示ブースを訪れてみると、商談はもちろん、転職希望者の来場もあったと聞かせてくれた。そんな思いがけない出会いは、展示会の醍醐味だろう。

▲閉幕前のひととき


【メディア・マジック】地域公共交通の未来を明るくする技術

定刻になってもバスが来ない。遅延なのか、自分の時計が狂っているのか、まさかすでに出発したあとなのか……。バス停でそんな事態に遭遇したとき、バスの運行情報がわかるとありがたい。利用者のそんな思いに応えるアプリがある。そのひとつが「バスキタ!」。バスの運行状況がわかるだけではなく、利用者なら目的地までの経路を検索できるし、バス事業者なら乗務員との連絡ツールとして使えるし、遅延などのデータを蓄積して分析する機能があるからダイヤ改正にも活用できる。2013年に「株式会社メディア・マジック」が開発。その後、実証実験を経て道内外のバス事業者に導入されている。

同社は、「社会を支え、課題を解決する10のサービス」として、「モビリティサービス」「位置情報サービス」「スマートフォンアプリ開発」「システム開発」「開発支援」「Web開発」「デジタルサイネージ」「デザイン制作」「24時間365日体制のシステム保守」「商品開発・販売」を挙げている。

▲株式会社メディア・マジックのEさん

「バスキタ!」に使われているのは、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)とサーバ・データベースの連携によって移動しているモノの位置を追跡、表示する技術。これは、除雪車やゴミ収集車にも応用されているという。

2023年には「バスキタ!mini」がリリースされた。学校・幼稚園、企業、商業施設、医療機関の送迎やシャトルバスに導入されている。このサービスを支えている技術は、AI(人工知能)アルゴリズムを利用して、複数の乗降リクエストに対して最適な経路を割り出す「AI配車最適化」。これは、「AIオンデマンド交通」に活用できるといい、ちょうど東川町で予約制乗合バスの実験実証中なのだという。

▲同社の技術を紹介する展示パネル

近年、運転手の不足と利用者の減少が相まって、路線バスの廃止や減便が続いている。その状況のなか、地域公共交通の切り札と目されているのが「AIオンデマンド交通」。同社の技術とサービスに期待が高まる。

【コア 北海道カンパニー】運輸業の負担を減らすクラウド型の点呼システム

慢性的な人手不足に悩む運輸業界のなかで、安全を守っているのが運行管理者である。重要な業務のひとつが「点呼」。これは法令で義務づけられていて、運転手の業務前や業務後などにアルコールチェックをはじめ疲労や健康状態の確認を行わなければならない。安全運行には欠かせないが、深夜や早朝の点呼もあり運行管理者の負担は大きい。それを解消するのが、クラウド型の点呼システム「Cagou(カグー)IT点呼」である。

▲Cagou IT点呼のデモ画面とアルコールチェッカー(手前の黒い機器)

運転手のスマホと、アルコールチェッカー(フィガロ技研株式会社製)をクラウドにつなげると、本人確認をしたうえで、検知器を用いたアルコールチェックの結果や体調、日常点検の実施状況などの報告など点呼の全工程が行える。しかも、その内容はクラウド上に記録される。だから、運行管理者は「点呼記録簿」を記入する必要がなくなり、負担が軽減されるのだ。点呼の所要時間が短縮されるぶん、運転手のストレスも減らせるという。

さらに、「Cagou IT点呼」はその名のとおりIT点呼や遠隔点呼が行えるため、全事業所に運行管理者を配置しなくてもよくなり、特に深夜や早朝はいくつかの事業所に点呼業務を集約できる。また、業務後自動点呼にも対応しているため、運行管理者の不在時にも点呼が行える。

▲株式会社コア 北海道カンパニーのIさんとTさん

「Cagou IT点呼」を開発したのは「株式会社コア」。1969年の創業以来、ICT企業として歩み、さまざまな分野の発展に貢献してきた。現在は、未来社会ソリューション事業・産業技術ソリューション事業・顧客業務インテグレーション事業の3本柱で、「ソーシャル・ソリューションメーカー」として、社会課題の解決に取り組んでいる。

運輸業者にとって大きなリスクであり、社会問題でもある飲酒運転による交通事故。それを防ぐべく、同社の技術と経験を詰め込み、「Cagou IT点呼」は生まれた。発端は「もっと簡単で便利に、運行の安全を確保できないだろうか」という現場の声だったという。
いまは労働の担い手の増加が期待しづらく、運行管理者の不足もまた社会問題だが、「Cagou IT点呼」は運行管理者の不足を補うツールとしても期待されているのだ。

【ウイン・コンサル】トイレの混雑緩和と清潔、安全を実現する「tomole」

出展者と来場者でにぎわうアクセスサッポロは、トイレもまた混んでいた。来場者の男女比のせいなのだろうか、男性トイレには列ができていた。人が集まる場所では見慣れた光景である。誰しもが、混雑するトイレの前に並びながら、こう思ったことがあるのではなかろうか——ここで空くのを待つべきか、ほかのトイレに行ってみるべきか。

いまいる場所からほかのトイレの使用状況がわかれば、じつに便利である。そんな社会のニーズを実現したのが、トイレ×IoTソリューション「tomole(トモレ)」。独立系システムインテグレータ「株式会社ウイン・コンサル」が開発した。

同社は1994年に創立され、30周年を迎えた。経営理念は、「社員よし」「お客様よし」「社会よし」「未来よし」の「四方よし」。社員よしの根底には「企業は人なり」の考えがあり、社会よし、未来よしは「企業は社会の公器なり」の考えに基づいている。

▲株式会社ウイン・コンサルのWさん、Kさん、Sさん

同社の展示ブースには初々しい三人組がいた。聞けば、同期入社の新人SEなのだという。三人が教えてくれたtomoleの仕組みは——。

トイレの個室に設置されたドア開閉センサーと人感センサーが、使用/未使用を検知し、その結果をディスプレイやモバイル端末に表示する。それだけではなく、長時間利用が確認されると担当者に通知が届くため、急病や事故を早く見つけられる。オフィスのトイレなら、サボりの抑止にも効果が期待できるらしい。

▲tomoleのドア開閉センサー(手前)とディスプレイのデモ画面
▲トイレの個室ドアの施錠・開錠を検知するスライド鍵

面白いのは、「汚いよボタン」。個室の利用者が押すと、施設の担当者に「汚れている通知」が届くので、すぐにトイレ掃除ができる。たくさんの人が使用するのに常にきれいなトイレが実現するのだ。

なお、各種センサーや「汚いよボタン」が発した情報は、超小型コンピュータにデータベースとして蓄積される。そのデータを分析すれば、混み合う時間帯がわかり、清掃やトイレ用品の補充のタイミングなどが判断しやすくなる。

しかも、各種センサーは、蛍光灯などの光やドアを開閉するときのエネルギーで動くから電源や電池交換がいらない。環境にも人にもやさしいtomoleは、さまざまな施設のトイレ問題に光明をもたらしてくれそうだ。


本日は、自社の技術を生かして社会課題を解決している4社のブースにご案内した。明日のテーマは「鍵はコミュニケーション」。4社4様のコミュニケーションが見られるだろう。

(取材/北海道IT推進協会 広報委員会、ライター 一條 亜紀枝)

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