老舗IT企業は挑戦を続ける|「北のITシーズフェア2024」出展企業レポート第2弾
「北のITシーズフェア2024」出展企業レポート第2弾は、「老舗IT企業は挑戦を続ける」をテーマにお届けする。今回の4社は【流研】【I・TECソリューションズ】【恵和ビジネス】【つうけん】。確固たる実績と技術をもとに何に挑戦しているのか——。
【流研】「豪商®」に加えて「大臣エンタープライズ」のカスタマイズも
IT業界はスタートアップやベンチャーが多いと感じるが、老舗企業もある。北海道にも歴史を重ねたIT企業がある。ソフトウェア開発会社「株式会社流研」は、昭和52(1977)年に「合名会社流通システム研究所」として創業した。
業務内容は幅広く、ソフトウェア開発をはじめシステムコンサルテーション、IT関連機器の販売、技術者派遣を手がけている。官公庁や医療機関のシステム開発に実績があるが、食品業界の人たち「北海道ビジネスEXPO」の常連来場者には、食品業向け販売・在庫・製造管理システム「豪商®」を取り扱う会社としておなじみかもしれない。昨年は、「豪商®」とExcel業務自動化ツール「xoBlos」を展示していた。
今回の流研ブースに掲げられていた展示パネルは「大臣NXクラウド」。これは、クラウド会計「大蔵大臣®」をはじめとする大臣シリーズを提供している応研株式会社のソフトウェアサービスである。契約者ごとのプライベートクラウド(専有環境)で基幹業務システムを運用できるとあり、評判がいい。
流研によると、数年前、顧客に導入したことがきっかけで大臣シリーズを扱うようになったといい、現在は大・中規模企業向けERPシステム「大臣エンタープライズ」のカスタマイズを担っているという。
そのカスタマイズは、大臣シリーズの魅力のひとつだろう。しかもクラウド(SaaS)でもオンプレミスでもフルカスタマイズが可能であり、だからこそ、業態も業種も異なる会社それぞれにとって使いやすいというわけだ。
充実した製品ラインナップも頼もしい。例えば、応研によると、クラウド上で出退勤を打刻・管理できる「スマート大臣〈打刻〉」は、日報データを自動生成する「日報オプション」との組み合わせで、建設業をはじめ製造業やサービス業などの労務管理を効率化できる。また、顧客管理システム「顧客大臣®NX」は、社用車や機器の保守管理、家畜の飼養・衛生管理など、幅広く応用が効くという。大臣シリーズの中に、それぞれの企業の課題解決のヒントが見つかるかもしれない。
【I・TECソリューションズ】生成AIやロボットの活用に挑む
広い会場をめぐりながら、ITビジネス展示ゾーンに戻ると、やけに目を引く人がいた。眠そうな表情のキャラクターを背負っている。よく見るとデジタルサイネージ付きリュックではないか! さっそく話を聞いてみると、展示会などのイベントでのPRに使用していて、非売品らしい。ただ、この日の会場でも多くの人から「欲しい!」との声が上がったというから、近い将来、街中でお目にかかれるようになるかもしれない。
そんなかわいいリュックとともに出展していたのは、「株式会社I・TECソリューションズ」。昭和45(1970)年、本社を置く苫小牧市で「株式会社苫小牧電子計算センター」として創業した。現在は、システムインテグレーションサービス、データセンターサービス、アウトソーシングサービス、ネットワークサービス、機器販売・保守サービスを展開する。全国各地で導入されている総合行政システム、自治体向け業務システム、図書館システム、防災対策に関するシステムから、自動車製造業や鐵鋼製造業、港湾・運送業などに欠かせないシステムまでを手がけ、官民問わず、さまざまな事業を支えている。
近年、新たに取り組んでいるのがAI(人工知能)。コロナ禍で非対面・非接触が求められたときには、NUWA Robotics社(台湾)が開発したコミュニケーションロボットをカスタマイズし、自社の図書管理システム「お気軽図書館」と連携できる「図書館コンシェルジュ ケビーエアー」を完成させた。愛らしいネコ型ロボットが、司書に代わって本の貸出や返却を行ってくれるのだ。そのノウハウを応用したロボット受付システムも開発している。
今年4月には未来事業推進部を立ち上げ、AI基盤サービスを開始した。自社のAI基盤・クラウド基盤・アルゴリズム・デバイスを、他社のノウハウやアイデアと結び、AIを共同開発し、業務の改善や効率化を実現しようというのだ。さて、AIにどんな学習をさせて、どんなモノに搭載して、どんな課題を解決していくのか。同社の挑戦から目を離せない。
【恵和ビジネス】創業65年の実績から生まれた「Form Manager」
今年10月から郵便料金が変わった。ビジネスシーンでよく使用される定形郵便物は、これまでの84円(25gまで)から110円(50gまで)になった。26円の値上げといえども、積もり積もればコストが嵩む。そんな悩みも、帳票発行の手間も解決してくれそうなサービスがあった!
それを展示していたのは「株式会社 恵和ビジネス」。昭和34(1959)年に「北海道カーボン印刷株式会社」として創業した。社名のとおりカーボン印刷を手がけ、その後はビジネスフォーム印刷、さらにはデータ入力、システム開発と活躍の場を広げていく。現在は、エントリー事業、コールセンター事業、システム事業、ビジネスフォーム事業、ビジネスプロセス・アウトソーシング(BPO)事業を展開し、顧客がコア業務に全集中できるようにサポートしている。
くだんの帳票発行サービスとは「Form Manager」。請求書や発注書などのデータと、送り先のデータをアップロードするだけで、恵和ビジネスが帳票を作成して、Web配信あるいは郵送してくれるという。創業65年、帳票を取り扱ってきたノウハウを生かしたサービスである。
ペーパーレス化が推進されているが、ビジネスの世界には紙の書類もまだ多い。帳票だけではなく、申請書や申込書、健康診断票、履歴書、アンケート用紙など手書きの書類を扱う仕事もあるだろう。それらをスキャンした画像データを所定のフォルダに入れると、テキストデータ化してくれるのが、「AI-OCR変換サービス」。AI技術を用いて画像データを読み込むのだが、その識字率は96%以上という。AIがうまく読み取れない文字は、人間でも判読が難しいというから、その精度はかなり高い。総務や経理などバックオフィス業務の負担軽減と効率化に期待できるのだ。
【つうけん】ひとりでエレベーターを乗り降りできるロボットが労働力に!
「北のITシーズフェア2024」の看板の下、北海道IT推進協会ブースの向かいに、気になってやまないのぼりが立っていた。
スリムな白いロボットと、丸くて小さい黒いロボットが、エレベーターに乗る……のか!? 自らエレベーターに乗って、いったい何をするのだろう。
2台のロボットを出展していたのは「株式会社つうけん」。昭和26(1951)年、電気通信建設工事を担う「大北電建株式会社」として創業した。70年以上にわたり、通信設備エンジニアリング事業を営み、その確かな技術を生かし、現在は社会基盤エンジニアリング、ICTソリューションにも事業を拡大している。
今年10月、同社はエレベーターに連携できる「清掃ロボット(KIRARA)」「デリバリーロボット(NAOMI-2)」「配膳ロボット(AYUMI)」の販売・設置・保守サービスを開始した。つうけん白石ビル(札幌市白石区)に設けたショールームでは、ひとりでエレベーターを乗り降りして働くロボットがいつでも見られるという。
ロボットのエレベーター乗降を可能にしているのが、「エイムEVアダプタ」。これは、エイム・テクノロジーズ株式会社(東京都港区)が開発した。「昇降路内センサーモジュール」でエレベーターのかごの位置を把握して、「かご上モジュール」でロボットとエレベーターとの通信を行い、ロボットからの信号を「操作盤モジュール」で受けて、人間がボタンを押したのと同じ状態をつくりだすという。
ロボットが人の手助けなしにエレベーターを使い、建物内を移動できると、例えば、ホテルスタッフに代わり、客室に備品やアメニティを届けられるようになる。つまり、人手不足が深刻な宿泊施設や医療機関などの悩みを解消すると期待されているのだ。さまざまな業態・業種の企業からすでに引き合いがあるというから、ロボットと人間がともに働き、企業活動を支える時代になっている。
本日は、北海道に根を下ろした老舗IT企業4社のブースをご案内した。明日のテーマは「社会の困りごとを解決する」。近年の社会課題を解決するアイデアをご紹介する。
(取材/北海道IT推進協会 広報委員会、ライター 一條 亜紀枝)