福岡で推しを観て、ラーメンを食べた
福岡市民会館で、私立恵比寿中学のライブを観た。ついこないだ千葉と埼玉で立て続けに観たばかりの春ツアー公演を、しっかりと楽しんだ。
推しは今日も歌声が伸びやかで最高だったし、福岡出身のメンバーを押し出した演出に、地元のファンがひときわ大きな声で迎えていた。
ライブの余韻に浸りながら、晩ごはんを考える。この2泊3日の福岡滞在で、一度はラーメンを食べたい。そう決めていた。しかも、博多らしいやつを。
ということで、ShinShinと、元祖長浜屋とで迷い、一双にした。どれも一度は食べたことがある有名店だ。たくさんのラーメン店があるというのに、なんという冒険心のなさだろう。
だいたい年に1〜2度くらいしか来ないので、大海原のような博多グルメ?の「浅瀬」をうろうろしている感じになってしまう。ひと月でも滞在すれば、また違うのだろうけど、これはこれで楽しい。
きょうの福岡は、一日雨模様で、靴下が濡れていたり、ライブで体を動かしてすこし汗をかいたので着替えたくて、ラーメンの前に、いちど宿にもどって休むことにした。
ところで、ビジネスホテルに2泊もすると、ホーム感が増してくる感じがある。部屋番号も頭に入るので、エレベーターから迷わず部屋までさっとたどり着けるし、初日のうちにひと通り点検してある部屋の中の設備を使い慣れたふうに使ったりする。
清掃希望の札を扉にはりつけておいたので、清掃してくれていた。寄せておいた私物ゾーンのごちゃっとした感じはそのままに、ゴミ箱が空っぽになり、新しいアメニティがセットされている、あの二日目の部屋が好きだ。
着替える前に、ライブに持参していた道具をしまう。推しカラー(黄色だ)のユニフォームとリストバンドとタオル、2本のペンライト、オペラグラスを小さいトートにまとめる。
グッズ購入もライブの楽しみで、今日は推しのステッカーと、写真を5セットを買った。サイン入りが入っていて興奮した。これらも大切なものなので丁寧にしまう。
スーツケースを開けて、下着の着替えをひと通り出し、シャワーを浴びた。髪を乾かして、部屋のテレビをつけ、地上波に切り替えると、海外のBBCチャンネルがつく。
これは昨日から気になっていたのだが、デフォルト設定のようだった。広告代理店が打ち上げのビールの銘柄にこだわるように、どの関係者が来ても大丈夫なように配慮してるんだろうか?
少しだけベッドでごろごろし、歩いて10分くらいのラーメン店「一双」へ向かう。けっこう雨がつよく、持ってきた折りたたみ傘ではやや心もとない。
有名店だけあり、15人ほど並んでいた。でも今夜はここに決めているので迷わずに列の最後尾につく。ふだん東京の店ではよっぽどじゃないと行列に並ぶことはしないが、旅先ではあまり気にならない。並んでる時間もわくわくするからかな。
前も後ろも、海外の方にはさまれながら並んでいたら、雨脚がつよくなってきて、慎重に傘を差して待っていた。少ししたら、さわやかな店員さんがすっすと歩いて来て、きりっとした笑顔で、人数の確認と食券の購入段取りを説明してくれた。
店内はテーブルが4つくらいと、カウンターに10名弱ほどのこぢんまりとしたキャパシティだった。店の外のガラス越しに、店員さんがてきぱきと動き回るのが見える。キッチンに2名、ホールに2名と少数精鋭だ。
客が食べ終わり、立ち上がるやいなや、店内のすべてのスタッフがぱーんと威勢のいい挨拶をし、すぐさま、ホールの2名がいっきに片付けにかかった。Aが食器を下げ、Bが消毒アルコールとダスターを手に持ち、机をすばやく、しかし丁寧に拭き上げる。Aが戻ってきて、ラーメンたれや、高菜などの補充をすばやくする。
この手際のよさが見事で、強まってきた雨をがんばって受け止めながら、ガラス越しにしみじみと店内を眺めていた。窓際のお客さんと目があっても申し訳ないので、そっと。
20分くらい並び、カウンターの端に案内される。ずいぶん前に食券は回収されていたので、着座して10秒ほどでラーメンが出てきた。ひと口すすり、美味しさを噛みしめる。
自分の舌にはやや薄く感じたので、調整用の、卓上のラーメンタレを少し入れた。もうひと啜りし、逡巡し、もう1周だけ、たれを回し入れて、完璧に好みの味になった。
昔は、味を足しすぎてしまったり、高菜を入れすぎたりもしたこのとんこつラーメンスキル。40歳を過ぎて手慣れてきた。こんなことの習熟に、ずいぶん時間がかかってしまった。
替え玉はせず、10分もかからず食べ終えた。名残惜しい気持ちでスープをレンゲで啜る。がっつんとした豚骨なのに、上品な和食のお吸い物みたいなやさしさも感じられて、美味しいスープだった。
ご馳走さまでした、と店員に告げて店を出た。雨はすこし弱まっていた。だいたい外ではAirPodsをつけてノイキャンの状態にするのだが、ライブの余韻もあり、はだかの耳にして歩いていた。
日曜よる、22時過ぎの博多駅筑紫口エリアは、奥まった路地にいたからか、人気がすくないので、けっこうしっかりめの音量で鼻歌をうたいながら帰る。こういうとき無意識に、直前に耳にしていた曲が出てくるの、面白いなあと思う。
笑顔でいれば何もかも大丈夫、と口ずさみながら、足りなくなった下着をファミマで1着だけ買い、宿に戻った。あとは歯みがきして寝るだけだ。おやすみなさい。
読んでいただきありがとうございます。いただいたサポートはnoteコンテンツの購入にあてさせていただきます。