材料のお話:センサーと未来
ここでは、スマートなライフを構成するための材料について掘り下げていきたいと思います。今回のテーマは「センサー」です。
家の中の環境を良くするための照明コントロールについてすでにレシピをご紹介していますが、ただ単純に電気をオンオフにするのではなくて、「その時の状態」に合わせて調整できるのが大事だと考えます。
無人の時に光がついても勿体無いし(防犯上あえて光らせたい時ももちろんありますが)、外の天気がすごくいい時に明かりをつけるのも勿体無いと感じると思います。
このように照明ひとつとっても、時間だったり、部屋の中に人がいるかどうかや部屋の中の今の明るさなど、いろんな状況を把握できている状態であれば、より「今に最適な」状態を解釈してコントロールできるようになると思います。
そこで重要になってくるのは「環境センサー」です。
周囲の環境からセンサーを経由してデータを収集し、そのデータを基にしてデバイスが自動的に反応する技術をアンビエントセンシング(Ambient Sensing)といいます。
今この技術について、家庭で使う文脈での活用が期待されています。
そこで、今回はデータの取得元となる環境センサーの種類とその使用例をご紹介したいと思います。
環境センサーの種類
まず一般的なものをいくつかあげてみましょう。家での活用イメージも考えてみます。
人感センサー: 人の存在や動きを検出し、照明や空調などのシステムを自動制御するのに役立つ。例えば、部屋に人がいる間だけ照明を点けることでエネルギー効率を向上させる。
温度センサー: 室内の温度を監視し、快適な温度範囲を保つために暖房や冷房システムを自動調整する。
湿度センサー: 空気の湿度を測定し、加湿器や除湿器を自動で制御して快適な室内環境を維持する。
サーモグラフィセンサー: 対象物の温度を測る。特に個人の体温を測定し、そのデータを基にしてエアコンが各人に最適なエアコンの温度を提供するような形で活用できる。
圧力センサー: 空気圧の変化を検出し、気象条件の変化に対応するための情報を提供する。また、水圧を監視して水漏れを早期に発見するのにも使用される。
照度センサー (光度センサー): 外光の強さを検出し、室内照明の明るさを自然光に合わせて自動調整する。
ガスセンサー (CO2センサーなど): 空気質を監視し、CO2レベルが高い場合に換気システムを作動させることで、室内の空気を新鮮に保つ。
音センサー: 環境内の音レベルを監視し、騒音レベルが高い場合にはカーテンやシャッターを自動で閉めるなどして騒音対策を行う。
人感センサーを掘り下げてみる
人を捉えるのは、家の中をスマートにコントロールする上では結構重要な部分だと個人的には思っていまして、人を検知する技術の発展に注目しています。
今は一番メジャーなのは赤外線を用いたものですが、実際は色々あります。全部を網羅できないですが一部について、それぞれ特徴を挙げていきたいと思います。
赤外線センサー: 赤外線を使って人の動きを検知。エネルギー消費が少なく、比較的安価で広く普及している。設置が簡単で、小型化も可能だが、障害物の向こう側やガラス越しの検出できない。
環境光センサー: 周囲の光の変化を検出。人が近づくと影ができ、その変化を感知する仕組み。直接的な動きではなく、光の変化を検出するため、動きが少ない場合の検出は苦手。
Wi-Fiセンサー: Wi-Fi信号の揺らぎを分析して、特定の環境内での人の位置や動きを検出するもの。Wi-Fi信号が物体や人によって反射または吸収される性質を利用。人が動くと、その動きによってWi-Fi信号の伝播パターンが変化し、これらの変化を分析することで人の存在や動きを検出できる。
ミリ波センサー: 電磁波の一種であるミリ波を発射し、その反射波を分析して物体の位置や動きを検出する。高い精度と遠距離からの検出が可能。人数を検知したり、呼吸の捕捉、転倒検知など細かく人の状態を検知できる。
超音波センサー: 超音波を発射し、その反射波を利用して物体の位置や距離を検出する。小さい物体や複雑な形状も検出可能で、精度が高いのが特徴だが環境ノイズに影響されやすく、設置場所を選ぶ。
カメラベース(ビジョンセンサー): カメラを使用して画像や動画を解析し、人の存在や動きを検出します。カメラの画像の中でAIを使って人かそれ以外か判断したり、センサーの検知する範囲を決めたり、どこからどこに移動したなど方向を元に解釈を加えたり(部屋に入ったのか出たか、など)映像をベースに様々な技術を載せることで使い道が広がる。
RFID/NFC: RFID(無線周波数識別)やNFC(近距離無線通信)を用いて、特定のタグを持つ人の存在を検出する。直接的な人の動きを検出するわけではないが、人の特定や位置追跡に利用される。出席管理などに活用。
人を検知するセンサーだけでも色々ありますね!
ただ、目的が「人を検知してそれを元に何かアクションをしたい」であれば、センサーじゃなくても実現するものもあります。
いくつか例を挙げてみましょう
スマートロックによる開閉情報
玄関の鍵の開閉をする際に、開閉する人の情報をあらかじめ付加しておけば「誰が」鍵を開けて入ったかがわかる。特定の人がは家に入ったらその人向けのメッセージを流したり、その人の部屋の照明をつけたりもできる。
GPSによるジオフェンシングで位置を判断
スマホなどについているGPS(位置情報)を元に、特定の場所(例えば家)にいるいないを判別してアクションを変える。
CO2センサーで部屋のCO2濃度が上がったら「人が多いな」を判断
機械式換気システムを稼働させるなど
こんな感じで、実現したい文脈に合わせて選ぶ手法も変わってくると思います。大事なのは「どういう情報を元に何をしたいか」の想像力かなと思います。それによってどのくらいの精度でどのくらいの粒度で情報を取りたいかも変わってきますし。いろんな選択肢がある今だからこそそういった組み合わせを考えていくのが楽しいので、どんな特徴をもつ「材料」があるか、知っておいて損はないと思います!
海外での様子
2024年1月にラスベガスで開催された世界最大のテクノロジー見本市「CES」では、スマートホームというカテゴリで、生活を彩るテクノロジーが多く出展されていました。私も現地に赴きましたので、少しご紹介したいと思います。
一例としてAqaraというメーカーの紹介です。ホームページを見てわかるように、様々なデバイスを組み合わせてスマートな生活を実現しています。
実際利用者は細かい技術の詳細を知らなくても簡単に使えるような工夫を多くのメーカーが行なっています。
センサーを活用することで、室内空間を快適にするだけでなく、日常の防犯にも活かしたりと、用途が広がります。
ミリ波センサーをはじめとする先進的なセンサー技術が、いかに私たちの生活を変え、より安全で、効率的で、快適なものにするかの可能性を示唆していると思います。
ものすごくワクワクしますね!
センサーを通じてみる未来
冒頭お話しした「アンビエントセンシング」を活用するためには、これらのセンサーでただ検知するだけでなく、得られたデータから環境の変化に対する洞察を抽出し、それに応じたアクションを自動化することが重要です。例えば、Wi-Fiセンサーが家庭内のエネルギー利用のパターンを識別し、それを基にエアコンや照明の効率的な使用を実現することが可能です。また、カメラとAIを組み合わせて一日の中で最も活動が多い時間帯を特定し、その情報を基に照明や暖房のスケジューリングを自動調整することもできます。アンビエントセンシングは、単なるデータ収集ではなく、そのデータを生活環境の賢い調整へと繋げることにあります。
現在、アンビエントセンシングは一般家庭で広く普及する段階にはまだ至っていませんが、センサー技術はより身近で手頃なものになりつつあります。これにより、環境データを解釈して行動に繋げるようなサービスが登場すれば、私たちの家庭にもすんなりと受け入れられる時代が来るかもしれません。
ここまで一個人の感想を中心にお話しさせていただきましたが、センサーと連動したスマートデバイスの進化により、日常生活がより便利で快適なものに変わる可能性が高まっていると思います。今後の展開がますます楽しみになってきますね!
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