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適密適疎

新型コロナの感染拡大を受けて外出は減ったが仕事は増えた。コロナのせいではないが、ちょうど学部執行部になる時期だったし、授業の教材をオンライン向けに全部作り直さないといけなかった。4〜7月は本当に忙しかった。

そんな怒涛の春夏を超えて9月初めに発覚した癌。しかも、かなり深刻なタイプ。10月1日に手術を受けた。これから化学治療が待っている、、今はそんな状況。

闘病中といってもずっと入院というわけではない。むしろ入院して面倒を見てくれるのは最低限の期間なので、多くの時間は自宅で過ごす。仕事は全てお休みしているので、何をしているかというと術後のリハビリと今後の治療に向けた体力維持。後者のために行うのが二つのこと。

一つは食べること。手術後はとにかくしっかりカロリーをとって体重を減らさないよう指導される。確かに癌が発覚して1ヶ月で5キロ痩せた。コロナ太りをあんなに気にしていたのに、病気になればあっという間。怖いね。そんなわけで、今は一生懸命食べる。食べきれないのでエネルギードリンクなどで補充する。それでなんとか(減った)体重が維持されている。

二つ目は有酸素運動。つまり散歩。これは都市計画という自分の仕事にも多くの学びがある。つまり、この書き込みの本題。

今や癌になる人は二人に一人という時代。それ以外にも病とともに生きている人は、私たちが知らないだけで大勢いるはず。その人たちが、今、新型コロナのせいで街に、人ごみに出られないのですよ。私もコロナになってしまったら、今後の治療を受けられなくなる。それだけでもう命が持たなくなる可能性もあるわけで、注意しないわけにはいかない。

そこで、出かける場所にはかなり気をつける。人が多すぎない。飛沫が飛ばない。そして、目的通り、適度な散歩ができるところ。多くの場合は公園になるけど、毎日同じじゃ飽きてしまうので、公園+α。つまり、まちなかを避けつつ、まちを歩いている。ある日は住宅地を抜けてみたり、ある日は川沿いを歩いてみたり、ある日は空いている美術館と公園を巡ってみたり。そんな日々。

奇しくも、私はこれまで都市に「密」を作ることに加担してきた。私が大事にしてきた価値観は「ローカリズム、、自分たちで決めて実行する地域」なので、決して密を作るのが至上目的だったわけではないが、結果的にそうした政策に加わることになったと思う。例えば、コンパクトシティ、中心市街地活性化、都市再生。

これまで一生懸命「密」を作ってきたのは何のためだったのだろう。まちなかに都市基盤を整え、そこに公共交通でどこからでもアクセスできるようにすれば、誰もが必要な公共サービスを得られるとか、基盤整備のための事業性の確保を考えるとある程度の密度が必要になるとか、人が集まることで交流が促され、新たな産業やイノベーションを生むかもしれないとか、確かに重要な意味はある。しかし、密は感染症の危険性を増す。それだけで、これからの時代には再考が求められる。しかも、どうやっても都市への集中と地方創生は両立しない。これも問題だ。

そこで、これから目指すのは「適密適疎」じゃないかと思う。言葉の通り、適当に密で適当に疎である地域づくり。ある程度の空間を確保した人間の暮らし方の追求。オンラインワーク、地方移住や二地域居住等によるリモートワークを普通にしたい。そういう人たちが適当に集積し、適当に離れて暮らすことによって、街は縦に伸びる(=タワマンとか)のではなく、横に広がっていくはず。しかも、暮らしを重視することによって、心地よい空間は増えていく。これまで背を向けられてきたオープンスペースがもっと見直されていく。

そんな空間を連鎖させていくまちづくりの担い手は、行政の都市計画部局だけではないだろう。多様な暮らしを送る人に寄り添い、その多様なQOLを可視化し、評価指標にする。子育てする人、介護する人、私のように病を抱える人、家で働いたり学んだりする人、通勤・通学する人、外国籍の人、所得が十分ではない人・・、地域には様々な事情を抱えながら暮らす人がいることを今こそ前提にして、その多様性こそ力になることを認識したい。そのためには、行政のなかでも都市計画部局、産業部局はもちろん、市民部局や福祉関係の部局の参加も得たい。ここまでできているところはまだ多くないのが現実。それに、地域の企業や団体も一緒になって、その地域だからこそ考えるべき問題、場所、対策、未来を見つめる。

結局、これは私が病前から言ってきたことと同じだった。つまり、ローカルで未来を描き、自ら決めて動く。その仕組みをちゃんと整える。私が言ってきたエリアマネジメントって、単にイベントをやることでも、道路や公園でオープンカフェをやることでもない。

新型コロナを経て、さらにその方向は明確になった。しかも、このところの自分の毎日を踏まえても大事なことだと再認識した。

さて、本日の日曜日は夫と二人、立川に新しくできたグリーンスプリングス+昭和記念公園に出かけた。都心よりゆったり、見える景色も山並みが豊かで、心洗われた。




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