靴の寿命と履き心地の寿命
「靴の底が減ったので修理できますか?」というお問合せを良くいただきます。また、「靴の底が壊れちゃったのは修理できますか?」というご依頼も時々いただきます。三喜屋では当店でお求め頂いた靴に関しては修理方法のご説明をしたうえでお直しをしています―
「摩耗」と「劣化」
靴の底材には色々な種類があります。大まかに分類すると革、合成ゴム、ウレタン、プラスチック等があり、これらの組み合わせによってさらに種類は多くなります。
靴底は直に接地するパーツなので、歩けば地面と擦すれて減ってきます(車のタイヤと同じですね)。これを「摩耗(まもう)」と言います。一方、しばらく仕舞い込んでいた靴を取り出して履いてみたら「靴底が割れた」または「ぼそぼそに崩れた」という経験をされた方もおられると思います。靴底材には加工や薬品の配合方法など工夫が凝らされることで軽く滑りにくい、コスト的にも優れたものが出回るようになりました。ただ、履かないで放置したり高温多湿の場所で保管すると素材が化学反応を起こすことがあります。これ「加水分解」または「劣化」と言います。「摩耗」はすり減った箇所を補修することができます。「劣化」した靴底は使われていた材料によって交換のできるできないがあります。購入されたお店で相談しましょうね。
靴の寿命と「履き心地の寿命」
ところで、靴は底材の他いろいろなパーツを繋ぎ合わせて作られています。目に見えるパーツとして例えば靴ヒモやマジックテープなどがあります。これらは磨耗したら交換することができます(一部できないものもあります)。一方、目に触れることのないパーツもあります。たとえば―
・先芯(さきしん):つま先部の保護と形を整える材料
・月形芯(つきがたしん):かかと部の形を保ち保護する。(歩行時にかかとの安定を図る目的もあります。)
これらは表の甲革と裏の甲革の間に「サンドイッチ(挿入)」されているため修理や交換が困難なパーツです。
また、甲革自体が足にフィットした伸び具合から徐々に伸びきった状態になることがあります。こうした長期間の使用で素材にゆがみやゆるみが出ると「靴底も直したし中敷きも交換したけど履き心地がいまいち」という状態になります。こうなった時は「靴の寿命」というより「履き心地の寿命」が尽きたと言えます。
足に合った履きよい靴はついその一足で毎日使いまわしてしまいがちです。履く頻度が多くなれば摩耗度も疲弊も早まります。足に合った靴を数足用意して休ませ上げることで履き心地の寿命を延ばし、いつも気持ちよく歩きたいものですね。