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愛犬の旅だち 前編
我が家のミニチュアダックス「らて」が6/6に
16歳と11ヶ月で旅立っていった
人に話せば「長生きのワンコだったね」と言われる
確かにそうかもしれないけど
やっぱり私たちにとってはとてもそうは思えなくて
ワンコと長く暮らした人ならきっと分かってもらえるはず
らては人慣れも犬慣れもしないワンコで、当初思い描いていた「犬との憧れの暮らし」からは程遠かった
例えばリードフックのあるガーデンスペースを利用しようにも他にワンコを見つけると吠える
「あらーかわいいねぇ」などと近づいてくるおばさんにも吠える
よく飼い主がスタバの店内でオーダーしている間、リードフックに繋がれたおとなしいワンコが色んな人に撫でられたりして可愛がられている姿を見かけると羨ましかった
ドッグランにも何度も挑戦したけれどまるでダメ
他のワンコが気になって、楽しむどころではなく
らてにとっては家族が一番でそれ以外はほぼなしに等しく、家族とあとは本当に良く会う人(ペットサロンのおじちゃんやとても親しい友人)以外、決してなつかなかった
それが情けなくもあり、可愛くもあった
ダックスの中では小さい体でカニヘン?と聞かれることも多かった
骨格は小さめで体重はいつも3.5キロ前後
それ以上になるとムチムチし、それ以下になると痩せた雰囲気になった
チョコソリッドという珍しい濃い茶色🤎 色艶がよく触り心地は格別だった
フードにも気をつけ、余分な物はあまり与えなかったが、食いしん坊で、たまにきゅうり、キャベツ、りんごの小さなカケラをあげると喜んで食べた
ボールを投げると追いかけて、咥えて戻ってきては放さない、という遊びも好んでやった
音のなるソフト人形のカエルさんも大好きで、投げてあげると喜んでパフパフ言わせながら噛んで遊んでいた
いつだって外に出かけたくて「らて、お散歩いく?」
「らて、ゴミ出し行く?」
「らて、スタバ行く?」
何でも疑問系で話しかけるとバタバタ喜んで、張り切ってついてきて、外を走った
車の助手席には大きな平たいクッションを敷いて、その上にのっかりドライブも楽しめた
なかなか上手に散歩はできなくて、においを嗅いでばかり、走って、止まって、走って、止まって、優雅な散歩ではなかったけれど、何かにつけてらてを連れて出かけることは私たちの暮らしにすっかり定着していた
「この子目が見えてないよ」と言われたのは9歳の時だった
たまたま主治医の休診日に
鼻が何らかのアレルギーで腫れ上がり別の病院で診てもらった時に言われたのだった
「先天性網膜萎縮」
遺伝によるものだそうだ
娘2人がらてを受診させたので帰宅した時はもう2人ともお通夜のように絶望していた(らてはステロイドが効いて元気だと言うのに)
翌日かかりつけのドクターに診てもらい網膜萎縮について相談すると、先天的な遺伝病で仕方ない、たしかにあまり見えていないかもしれないけど、ワンコは人間が思ってるより逞しいから目が見えなくても上手に暮らしていけますよ、その代わり家の中は危なくないように気をつけてあげてください
と言われた
ドクターの言う通りで私たちの心配をよそに、らてはそれからもしばらくはいつも通り過ごしていた
でもやがて網膜萎縮から派生してかなり早くに白内障となり最初は右目、やがて左目が濁り、白くなり、見えなくなってしまったようだった
家の中でも車に乗っても、外を眺めるのが大好きだったらては目が見えなくなって当然だけど、外を眺めなくなった
あんなに庭や車の外を眺めていたのにな
つまらないな、とか寂しく思わなかっただろうか、、
そんなことは人間が勝手に思うだけで、当のらては変わりなく暮らしているように見えた
ある日急に見えなくなったわけではなく、元々見えにくかったのが、徐々に見えなくなった、、そんな感じだったのだろうか
らてはとにかく食いしん坊でいつでも食べる気満々
たまに何か落ちてないか、物色するようにあちこち嗅ぎ回って、落ちているお菓子のカスやパンのくず、野菜のかけらを食べていた
こっそりチョコレートを盗み食いして慌てて病院に連れて行き処置してもらったこともある
催吐剤を入れてもなかなか吐かず、大量にフードを食べさせても吐くどころかどんどん食べ続けるのでドクターにずいぶん驚かれ笑われたほど
高齢になり、足がおぼつかなくなっても血流改善の薬と安静ですぐに改善し、走ることはなくなっても最後まで自分の足で歩いて水飲み場に行くこともトイレもできた
手のかからないわんこだった
らてと暮らした長い年月
いなくなってしまうことを想像するだけで気持ちが落ち込むこともあったけれど、さすがにここ数年は小さな不調を繰り返すようになりごく自然に老犬であることを認めて世話をしていた
2月に前庭疾患の発作が起きめまいで苦しみながら倒れた時はらての死を初めて意識した
東京にいる息子が心配して帰ってきた日、奇跡のように起きあがった時は驚き感動したものだ
けれど、老犬ゆえの衰えは速度を増し、背骨が曲がって高くなり、バランスをとりながら歩いたり、よろけるようになった
ダックスに多いと言われる歯周病にも9歳頃から深刻さを増し、遅めに行った避妊手術の際にスケーリング、その後2回抜歯を受けた
14歳を過ぎてからは時々顔を腫らしては抗生剤を飲ませることしかできなかったが毎日注意深く観察してはコントロールした
去年の秋から時々食欲にムラが出て血液検査をすれば腎臓の値が悪く、明らかな腎不全の始まりだった
甲状腺の働きも衰えてきたため
フードを替え、利尿剤、甲状腺の薬を飲ませ、2週間に一度の病院通いが続いた
それでもらては自分で起き、歩き、食べ、日中はケージで留守番をしてくれた
5月の半ばを過ぎたあたりから食欲のムラが酷くなり、腎不全、貧血の症状はかなり悪化していた
自宅で隔日点滴をし、食べられる物を食べさせていたがやはり徐々に食事量が減り弱っていった
もうここ1〜2年はわんわん吠えることのなかったらてが6月に入り、カスカスの声で吠えたりすることがあった
後で調べると最期が近づくと吠えるわんこも多いようでそれが何を意味するのかはわからなかったけれど、らてなりに何かを訴えていたのかと思うといたたまれなくなる
らては亡くなる2日前まで自力で家の中をふらついたりどこかにハマって動けなくなったりしながらも歩き回っていた
認知症の症状もあったのかもしれない、人間で言うところの徘徊だ
でも私はとてもそうは思えず、歩きたいから歩いているのだと解釈した
危なくないように亡くなる前日には子ども用のプールを出して、ブランケットを敷き詰めて、その中で自由に歩けるようにしたらふらつきながら回っていた
6/5
初めてらてをケージから出して私たちの寝室に小さなマットごと連れてきた
すぐ異変に気づきたかったからだ
明け方まで何度もらての呼吸を確認したが
らてはもうほとんど目は開けたまま、とても静かに寝ているようだった
朝になり、夫はらての無事を確認して仕事に行き、私はらてのマットをデッキの前に移動して、となりでキルトをしようと準備していた
らてがおおきく体を伸ばすのが見えた
慌てて近づき「らっちゃん、らて!らて!」と声をかけながら体をさすった
もう力なく開けた目
静かな静かな呼吸はやがてゆっくりになり止まった
そして、心拍も徐々にゆっくり、やがて消えた
「らて、おつかれさま
ありがとね、ずっと可愛かったよ」
私は繰り返しそれだけ言いながらずーっとらての体を撫でていた
家族にLINEする時が辛かった
こんな文字をどう受け止めるのだろう
「らて、たった今息を引きとりました」
後編に続く