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ロンドンで開催された川上未映子さんのトークイベントへ行ってきました!

ロンドンの老舗書店「フォイルズ」にて、昨晩開催された、「乳と卵」や「ヘヴン」「夏物語」の作者、川上未映子さんのトークイベントへ行ってきました!
とっても知的好奇心を擽られるお話で、一晩中いろんなことを考えさせられたのでここで共有したいなと思います。
メモを取りながら聞いていたわけではないことと、未映子さんの日本語と通訳さんの英語をごちゃまぜにして両方聞いていたので、ニュアンス等が実際にお話されていたことと少し異なるかもしれません。

私が特に興味深く感じたのは、未映子さんの物語の作り込み方について。
「いい物語を書くためには、本当に伝えたいことを物語の中には書かないほうがいい」ということをおっしゃられていました。

何度も何度も、ずっと考えて世界観を作り込んでいるという未映子さん、ほんの小さな描写にもこだわっているとお話されていました。例に上げていたのが、主人公が本棚にある作家の名前をあげていく場面。あえて全て男性作家になっているのは、文学の世界が男性優位で、それだけ女性作家たちも男性が書いている世界だけを読まされていたという背景を描くため。日本の主人公にとって、ヴァージニア・ウルフのような作家に出会うまでの道のりがどれだけ長いことか。

また、文学賞で審査員をされていることにも触れ、よく物語の最後に、どうしてこの物語が優れているのか、書き手の心の内を書いてしまっているケースがあり、それは美しい物語にはならない、ともおっしゃっていました。

ここで私が考えさせられたのが、日本文学と英語圏の文学の違いについて。日本文学を読んだ英語圏の読者が、よく「物語がつかめなかった」とか「終わりが弱い感じがする」と言っているのを耳にします。これは、日本文学が情景描写や雰囲気をたっぷり味わえる作品が多く、物語の結末を読者自身が導き出し余韻に浸るような場面が多いからかもしれないと。対して英語圏の作品は、物語の筋書きがはっきりしていて、結末にもきっちりした答えが示されている作品が多いように感じています。
これは、文学における美的センスの違いなのかなぁと、もう少し時間をかけて考えてみたいポイントでした。


また、作家として書くことに対する責任についても少し触れ、特に、書くことの意義や適任性についてよく考えると。「ヘヴン」は読者からいじめの暴力シーンに関する反応が多く寄せられたそうです。未映子さん自身は、これは実際に日本で起きていることなのだと、だからこそ書くのだとおっしゃっていました。
そんな苦しい描写のある作品であっても、どこか明るさが感じられる未映子さんの文体、これは大阪出身だからだろうとのこと。笑

「すべて真夜中の恋人たち」は私がとっても大好きな作品。主人公の冬子がとっても地味で内気で、どちらかというと普段は強めな主人公が好きな私にとっては自分でもこの作品がお気に入りなのが不思議なくらいだったのです。笑
未映子さん曰く、誰もが胸のうちに冬子のような側面を持っている。だからこそ心に寄り添うのではないか、と。いやー、納得です。たしかに。

緻密に計画されて、細部にまでこだわって、そうして描かれる知的でメッセージ性のある未映子さんの物語。制作の裏側を拝聴し、未映子さんの創る物語を今までよりもっと大切に想えるようになりました。
ステキな夜でした。

英語版の投稿はインスタグラムにて。


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