首からぶら下がった危険物(知念実希人の蛇足カルテ)
皆さん、この十年ほどで医療現場に大きな変化があったことにお気づきですか?
具体的にどこに変化があったかと言うと、看護師の頭です。
そう、看護師がナースキャップ(看護師用の白い小さな帽子)をかぶらなくなったのです。
かつてナースキャップは看護師の象徴でした。しかし、最近は多くの病院で廃止され、あまり見る機会がありません。
なぜ廃止されたのか。その大きな理由は、ナースキャップは頻繁には洗濯しないので、病原菌が付着しやすく、院内感染の原因になる可能性があるからです。
まあ、そういう理由なら仕方がないですよね。
けれど、一部の人(特に男性)は、ナースキャップに強い憧れを持っているようです。
聞いた話では、看護師がナースキャップをかぶっていなかったことに失望した男性患者が、担当看護師に「自費でナースキャップを買うから、ぜひかぶって下さい!」と頼み込み、「そういうお店じゃありません!」と断られたことがあったとか。
……そういうお店って、どういうお店?
閑話休題、実はナースキャップと同じ理由で、医療現場から消えつつある物があります。
医者のネクタイです。
かつては医者といえば、白衣にネクタイというのが一般的な姿でした。しかし、ネクタイはナースキャップと同様に頻繁には洗わないため雑菌が付きやすく、しかも垂れ下がって患者に菌を付着させることも多いということで、医者が身に着けることを禁止する病院も増えてきています。
一説には医師ネクタイに付着する細菌数は、公衆トイレの便座とほぼ一緒とか。
つまり、医者がネクタイをするのは、便座を首にかけているようなもの……。
便座を首にかけて病院を闊歩している医師の姿を想像すると、シュールを通り越して怖い……。
ちなみに、私は基本的にノーネクタイで診療に当たっていますが、未だかつて「ネクタイ買ってきますから、ぜひ付けてください!」と言われたことはありません。
お後がよろしいようで。