医療ドラマのダウト(知念実希人の蛇足カルテ)
(このエッセイは『天久鷹央の推理カルテ コミック版』が漫画誌に連載された際に、おまけとして掲載されていたものです)
どーも、原作者の知念実希人と申します。
医者をしながら小説を書いています。
よろしくお願いいたします。
さて紙面に少しスペース頂いて、自由に使って良いと言われたので、医療トリビアでも書いていこうかなと思っています。
ご興味あればぜひご一読を。
実は『現実離れしているから医療ドラマは見ない』という医療関係者は結構います。
たしかに、大出血してピンチになる手術なんてほとんどありませんし、病院内の激しい派閥争いも(自分は)見たことありません。
なにより山下智久さんのような爽やかイケメンの救急医なんてまずいません(激務でへろへろで、身なりに気を使う余裕なんてないのです)。
個人的に気になっているのは、心臓が止まり、心電図がフラットになっている患者にカウンターショック(電気でバンッてやるやつ)をすることです。
あれ、実際は絶対にやりません。
ではどんな時に通電するかというと、主に『心室細動』といって心臓の筋肉が細かく痙攣して、心臓がポンプの役割を果たせないときです(その際、心電図には不規則な波が表示されます)。
ちなみに完全に心臓が止まっている状態は『心静止』と呼ばれます。
心室細動と心静止どちらも全身に血液を送れないので心停止の一種とされています(心停止は全部で四種類の形態があります)。
心室細動の際に電気を流す理由は、実は『電気のショックで一瞬心臓を止めるため』です。
心臓の筋肉は自動性といって、周期的に自動に収縮する性質があるので、一旦止めることで痙攣が治まり、正常な動きを取り戻すことがあるのです。
当然すでに心臓が止まっている心静止に通電は行いません。
ではなぜ、ドラマでは心電図が平らになって『ピー』と音がしてから通電するのか?
多分、その方が緊迫感あるからなんでしょうね。
さて、毎月こんな感じでちょっとした医療トリビア等をお伝えしようと思っておりますので、お付き合いくださいましたら幸いです。
ではでは。