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2年目の挑戦は「達成度80%、満足度120%」 ~ 2022版岸岡智樹のラグビー教室を終えて(1/2)

現役リーグワン選手が全国各地でラグビー教室を自ら主宰する「岸岡智樹のラグビー教室」。

開催前インタビューから半年が経ち、2年目の挑戦を終えた岸岡選手とオンラインで対面した。リーグワン開始まで1カ月強に迫りチーム活動で多忙を極める時期だが、インタビューでお会いした岸岡選手の表情は明るく穏やかだ。

インタビュー時の穏やかな表情の岸岡選手

まずは率直に感想を聞かせてもらった。

あまり言葉にできないが「非常に大変でした」ね。
1年目の昨年(2021年)は楽しかったというか、達成感にちょっと満ち溢れた部分がありました。土台を作れたっていうような認識がありました。
その後、2年目ということで、自分の中でもその活動をバージョンアップさせていこうと大きな変化点をいくつかもたらしたわけなんですけども、その準備から当日実行するところまでを含めるともうかなり大変だったなと。それがゆくゆくは達成感につながりました。個人的にはやりたいことが増えて、実際にできたこともあり達成感が高いです。

1年目からの一番大きな変化点は合宿形式の「サマーキャンプ」を実施したことだ。一泊二日で集合から解散まで24時間、セッション(練習)2回と講義2回、さらには食事時など生活の中でもラグビー選手が身近にいる濃厚な時間を作った。

サマーキャンプのスケジュール

「日々の積み重ね」というプレゼント

合宿形式にしたことで、半日間のラグビー教室とどう違ったと感じているのか。

純粋にめちゃめちゃ違います。
僕目線からすると「こんなに変わるのか」と。例えばラグビーでも「こんなにもうまくなるのか!」っていうのは思いましたし、意欲的に取り組んでくれる姿勢なども来た時と帰るときだとこんなにも違うのかっていう感じでした。

参加者の意欲の高さに刺激を受ける

セッションは1日目と2日目の2回に分けて行う。どちらもパススキルを重視するメニューであるため、2日目の最初に「1日目にできたことは2日目でできて当たり前」と伝える。その言葉に応える参加者に驚いた。

大人からすると「1日目できたことが当たり前に2日目にできる」のは、机上の空論というか「できてほしい」に過ぎない。でも実際に子どもはできるのを目の当たりにしました。
全くできないことを扱っているわけではないんだけど、意識がおろそかになってくると精度は下がるし、意識を高く持つだけで精度は高められるという部分。その意識のレベルを来たときよりも2日目の最初はすごい高いんですね。
それはパフォーマンスを見ればわかる。そこの意識のレベルを上げることができている。

それは岸岡選手がコーチとして見ているからだけではなく、参加者である子どもたちにも伝っている。

本当にびっくりするぐらい伸びしろを感じたんですね。「これを365日やったらやばいな」って思ったんですけど、でもそれって実際に子どもたち同士でも感じてるんですね。上手いと思っていた選手が次の日もっと上手くなってたりするわけなので、自分たちで自分の成長も隣で一緒にやってる仲間の成長も感じていて「これが毎日できてたらすごい変わるよね」っていう体感はしてもらえたんじゃないかと思っている。「日々の積み重ね」は伝えられたのかなと思います。

二日間をトップレベルの選手と過ごした経験は、単なるラグビースキルにとどまらず、これから成長を続けるための「日々の積み重ね」という大きなプレゼントとなった。

普段と違う環境でのラグビーに参加者の意欲の高さが見える

問いかけて深めるためのきっかけづくり

ラグビー教室のセッションでは、ラグビーの基礎基本である「キャッチ」「パス」を徹底した。

パススキルを中心としたセッション①、②

参加者はクラブや部活で既にラグビーをしているため、ラグビーボールを投げる基本動作は習得済。その子どもたちに何を伝えるのか。

(1日目、2日目とも)最終的にタッチフットをやるが、「キャッチ」「パス」の基礎基本を試合でどう使うのか?試合でできなかったのはどこか?が分かるメニュー構造にしている。
さらに2日目では「1日目にやったことはできているよね」としているので、試合の中でどう精度高く・レベルを上げってやっていくのかというアプローチをする。

一泊二日の合宿形式だからこそできる繰り返し練習。さらに2日目の朝には講義②で1日目のセッション①のビデオを見ながらを講義②でディスカッションしたうえで、基本に加え「試合で精度高く使うこと」を考えたセッション②に臨む。

1日目の練習の動画を用いて「昨日の自分たちのパフォーマンスはこうだったよね」と見せた。ダメなシーンでは「何でダメなの?」と問いかける。僕が教えるんじゃなくて、子どもたちに考えて回答してもらった。1日目の練習で回答できるレベルで伝えている内容なので、「これがダメだった」と意見が出る。

岸岡選手が所属するトップレベルのチームはアナリストがいて撮影されチェックすることを日常的にやっている。高度なことはできなくても、大人がスマホで撮影して子どもが見るだけでも成長につながる体験を入れた。

講義②では映像を見てディスカッションをする

達成度80%、満足度120% 差は伸びしろ

ラグビー教室開始前、サマーキャンプをするきっかけをこう話していた。

0/1で考えればあったほうがいいが、それを2,3ともっとあったほうがいいと思った。内容が濃いとか記憶に残るとか。1回で行ける中で1分でも多く、グラウンド外でも持って帰るきっかけを作りたい。そのために、少しで時間を増やすことを考えた。

ここまで話を聞いて、2年目を始める前に岸岡選手自身が「挑戦したい」と考えていたことを実行できたサマーキャンプだったように感じた。

2022年版ラグビー教室を「達成度80%、満足度120%」と評価する。高くて充実した評価と思える点数だが、その結果を冷静にとらえている。

達成度80%は純粋に10人に2人が楽しんでなかった感じです。アンケートにも出ている。「楽しみ」を目標に置いている以上はその20%は次への伸びしろと考えている。やってみて地域格差にしろ伸びしろにしても想像以上の可能性が見えてきた。
満足度はやりたかったことをやりきった100%に伸びしろを加えた120%。
別にこの120%という達成度に奢ることもなく、地に足つけて自分を評価できたなっていうのがすごいあるので、今いい状態です。

ラグビー選手・岸岡智樹がラグビー教室で得たもの

インタビューの最後に、「ラグビー教室から岸岡選手に返ってきたもの」を聞いた。最初の一言は「めちゃめちゃ大きいです」だった。

「地方にも足を運んでくれたんだからテレビで応援してみよう」って思っていただいた場合に、テレビで見た僕ができてなかったら「言ってたことはなんなんだ」ってなるわけじゃないですか。
今は、自分に返ってくるブーメランを投げて返ってくる途中。
自分がやっぱり日頃から意識するってことに戻ってくるところでもありますし、それだけ子供たちに夢や希望を与えたいなと思ってたんですけど、そのためには自分らしくパフォーマンスで結果として示すことが必ず求められるフェーズになるので、自分のパフォーマンスをこれから出していかなきゃいけないと考えると、自分のモチベーションってところに転換できている。

岸岡智樹のラグビー教室から飛躍する岸岡選手の挑戦は続く。

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