後藤翔太『ラグビーを探求 後藤翔太流 パスの真髄』本&トークライブ
ラグビーにおいて重要なスキルである「パス」。
だがここまで「パス」だけを追求した本は初めてだ。パスのすべてを分解し分析しまとめた理論と実践が、全国のラグビープレーヤー、コーチ、スタッフに届くことが本当にうれしい。後藤さん、ありがとうございます。
後藤翔太さんとは
1983年1月生まれ、大分県出身。早稲田大学卒業後、神戸製鋼ラグビー部(現:コベルコ神戸スティーラーズ)に入団しトップリーグで活躍した。日本代表にも選出され8キャップを持つ。
2012年に引退後は、追手門学院女子ラグビー部を創設し監督に就任、創部3年で大学日本一に導いた。また、2019年には早稲田大学ラグビー蹴球部のコーチに就任し、現在の日本代表SH斎藤選手をキャプテンとするチームの優勝に貢献した。現在はJSportsを中心としたラグビー解説者としても活動し、的確な戦術分析でコアファンを中心に評価が高い。
ラグビー以外では「株式会社識学」に所属、組織コンサルタント・マネジメント理論の分野でも活躍中。
現役時代のポジションはスクラムハーフ。持ち味は本書で紹介している精度の高いパススキルだ。古豪・神戸製鋼ラグビー部で1年目から活躍した後藤さんの低い姿勢からのパスは、目が釘付けになるかっこよさだった。
本の紹介(出版社サイトより)
現役時代は華麗なパスさばきでチームにたくさんの勝利をもたらした著者が語るパスの真髄をまとめた一冊。いかにしたら実戦で効果的なパスを投げられるか、体のメカニズムを利用したパスの投げ方とは。著者自らが実演した映像付き。巻末には齊藤直人(東京サントリーサンゴリアス)とのスペシャル対談を収録。
【目次】
良いパスとは?
PART1 パスは「回旋運動」で投げる
コラム 回旋運動と回転運動の違い
身体操作の専門家が後藤翔太のパスを解説
PART2 パススキル
PART3 回旋トレーニング&各種パス
<スペシャル対談>
齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)×後藤翔太
この本の真髄となるパス理論を垣間見つつ、後藤さんのパスへの情熱はこの動画から感じ取れる。
トークライブ@ノーサイドクラブ より
2023年1月20日、ラグビーダイナー ノーサイドクラブ(東京・高田馬場)で本書を出版して間もない後藤さんのトークライブが開催された。MCは本書の編集を務めたラグビージャーナリスト村上晃一さん。もちろん話は『後藤翔太流パスの真髄』に迫ることとなった。
内容盛りだくさんなライブだが、気になったところをピックアップ。
出版のきっかけは1本の動画(村上さん)
パフォーマンスコーディネーターとしてラグビーに限らず多くのスポーツのパフォーマンスアップコーチとして活躍する手塚氏。プロ野球・前田投手の「マエケン体操」となるストレッチの開発者である。
二人の出会いから作られた動画が、村上さんの目に留まった。そして、本を作らないかという話になった。
パスのことしか考えてなかった(後藤さん)
でも、当時はパスをどう投げるかの理屈を教えてくれる人がいなかったので自分で考えるしかなかった。ラグビー界ではスクリューパス(回転しながらボールが前進するパス)が流行り始めたころで、まだ研究されていなかった。それから現役を通じてパスのことしか考えていなかったそうだ。
回転軸を内側にして、バックスピンして、相手の前に投げる(後藤さん)
簡単そうにおっしゃいますが、一度にはできません.…。後藤さんのデモンストレーションでは、意識せずとても自然にやっているように見える。ですがこれを試合のごく短い時間でやるのは相当な思考と修練が必要なはず。
ただただ、すごい。
ここから30分くらいパスで使う体の回転、指の使い方、リリースポイント、ボールを離した後の手の向き等、パスに必要な要素に分解した話が続く。
今までのラグビースクールなどの常識とは違うパス理論。
興味を持った方は、ぜひ本書を手に取ってほしい。
私は自分がラグビー未経験なので、イメージで「ふーーーん」と理解するしかない。ただ、ラグビー未経験活運動音痴の私でも、後藤さんが体の使い方熟知したパスの境地にたどり着いていることは分かる。しかも、その境地に達している後藤さんの語り口はとても楽しそうだ。
わずか1時間、でもパスだけで1時間。
この話を聴けて良かった。
この本の使い方
「想像力を働かせることで上手くなる」
以前に取材した、クボタスピアーズ船橋・東京ベイSO岸岡選手が、「Youtubeをやらない理由」をこんな風に話していた。
本書はまさに「想像力を働かせることで上手くなる」のために使える本だと思った。
本を読んで、その通りにやってみる。 ←
↓→ うまくいかなくて読んで考える。 ↑
「思考してやってみる」ループを回すことで、読者であるプレーヤーが自分で考えてラグビーがうまくなっていく。その道標として「読んで理解できる」本書は最適だ。コーチであれば「やってみる」が「教えてみる」になる。
日本には「ラグビーの地域格差」はある。潤沢にコーチがいない地域でも、本書を手に取ってラグビーが上手になる一助となればうれしい。小図になればもっとやってみたくなり、好きが続くからだ。
後藤さん、ありがとうございました。
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