No.237 僕の本棚より(13)「ブールデルのレダ展」図録 / 詩情あふれるギリシャ神話の世界
No.237 僕の本棚より(13)「ブールデルのレダ展」図録 / 詩情あふれるギリシャ神話の世界
(No.236の続きです)
1980年8月15日から9月15日までの一ヶ月間、東京池袋西武百貨店内にあった「西武美術館」で興味深い二つの展覧会が同時に開催された。一つは「ミケランジェロのヴァチカン壁画 」で、もう一つは「ブールデルのレダ展」と銘打たれたものだ。
40年以上も前のことなので、どのようなコンセプトでこの二つの展覧会が同時開催されたのか、会場がどのように分けられていたのか記憶が定かでないのだが、連れ合いの由理くんと共に二日に分けて一緒に鑑賞したことは覚えている。
ミケランジェロについては、映画「華麗なる激情」などを通して馴染みがあったこともあり、まず「ミケランジェロのヴァチカン壁画」を観て、大きな感動を得た(No.236)。何日か日を置いて「ブールデル」も「レダ」も何のことやら分からない状態で、展覧会の副題「詩情あふれるギリシャ神話の世界」から、ぼんやりとしたイメージだけを抱え「ブールデルのレダ展」会場内に足を運び入れた。
ここで「ブールデル」すなわちアントワーヌ・ブールデルが「考える人」の作者オーギュスト・ロダンなどと同じフランスの彫刻家であり、美術の教科書で見ていた「弓をひくヘラクレス」がブールデルの代表作の一つであること、この時の会場にも展示されていたが楽聖ベートーヴェンの胸像などもよく知られているなどの知識を得た。
そして「レダ」がギリシャ神話に登場して、白鳥に化けた主神ゼウスに愛された女性であることを知った。一般には知られていないが、彫刻家ブールデルは「レダと白鳥」のモチーフに惹かれ、彫刻のみならず、数多くの素描画を遺したそうである。
「ブールデルのレダ展」は、「レダと白鳥」を中心とした100点を超える淡彩画と「弓をひくヘラクレス」「ベートーヴェン像」を含む30点の彫刻から成る展覧会だった。
ミケランジェロとブールデル、時代も主題への切り口も違えども、偉大な彫刻家二人の「画家」としての側面と「神話」への挑戦と言う共通項を鑑賞者に示し、生まれ出でた作品の違いを味わって欲しいとの意図があったのだろう。
百貨店グループが元気だった時の「ミケランジェロのヴァチカン壁画 / 岡村 崔写真展」と「ブールデルのレダ展 / 詩情あふれるギリシャ神話の世界」意欲的な二つの展覧会の同時開催、今では味わえないかもしれない贅沢な忘れらない時空間を提供してくれた「西武美術館」に感謝である。