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No.202 僕の映画ノート(9)高校卒業後から今までに観た映画・洋画編 / 「さらば、熱き対象としての映画よ!」

No.202 僕の映画ノート(9)高校卒業後から今までに観た映画・洋画編 / 「さらば、熱き対象としての映画よ!」

No.197 の続きです)

note記事No.197では幼少時より高校卒業(1973年3月)までに観た洋画(映画)を列挙してみた。ここの記事では高校卒業後から今までに観た洋画(映画)との関わりを書き連ね、映画に対する自分の気持ちや、その移り変わりにも触れてみよう。

大学浪人一年目1973年、予備校にも通わず、昼間は主にフィルムセンター(Re-posting No.061)や都内あちらこちらの名画座に入り浸り、時には「池袋文芸座」週末のオールナイト5本立てなどに足を運び、180本の映画と向き合った。僕の映画遍歴は、この年がピークとなり、浪人二年目は50本ほどの鑑賞にとどまった。徐々にではあったが親のすねかじり状態に、居心地の悪さが大きくなっていったのも影響していた。

大学受験につゆほどもの価値を見いだせなかった僕は、罪滅ぼしのように何か夢中になれるものを、若さのエネルギーをぶつける先をもがき探していた。ギラギラした八月の太陽のもと、新潟県直江津(現在の上越市北部)から福岡市博多まで、17日の時をかけて日本海に沿って自転車をこぎ走らせたのも、そんな自分の中の鬱積した気持ちの発露のひとつだった。額から流れ落ちる汗も、数十本に一本あるかないかの好みの映画との出会いも、今も悔やんではいない、束の間の充実だった。

大学浪人生活二年後、「キネマ旬報」の定期購読も止め、映画や演劇の古本雑誌の豊富な神田神保町の矢口書店に「年間ベストテン特集号」を除いて、「スクリーン」を含む百冊を超える映画雑誌を二束三文の値段で売った。沢山の良き思い出も付いていたのだが、不思議と気持ちが軽くなっていった感覚が思い出される。新しいものを身に纏うには、多少なりとも古きものとの決別が必要だったのだろうか。

紆余曲折のあと、20歳で家業の酒販店を継ぐことになり(この辺りの詳しい経緯については稿をあらためる)映画鑑賞本数は、当然だが激減し、鑑賞した映画の日時・作品名・監督・キャスト・感想などを記した「映画ノート」の記録も洋画編二冊・邦画編一冊を手許に残し、1975年の途中で終わった。その後は、今現在まで継続している備忘録を兼ねる日記のようなスケジュール帳に、楽しんだ料理やレストラン、足を運んだコンサートやライブ、マジックのレクチャー、旅の記録、友人たちとの触れ合いと共に、鑑賞した映画の走り書きのメモを残している。

由理くんという、僕にとっての刺激的な連れ合いを得て、二人で共に酒屋商売に時間を割き、映画鑑賞はひとりでの熱き対象から、ふたりでの健全な娯楽のひとつと、ある意味格下げになってゆき、僕のエネルギーの向かった先は、英語の学習、Bob Dylanの海賊版収集、クロースアップマジックへと移り変わった。由理くんとは酒屋商売を通して絆を深めていき、旅・食べ歩き・映画・演劇・ライブ・コンサート・文楽、など時空を共にして、彼女を亡くす直前まで沢山の良き思い出を作った。

熱き対象として、素晴らしき芸術を見いだし何かを学ぼうと、暗い館の前から7列目中央席で銀幕に映る映像美と向き合うのを必須とした若き日の執着の残り香か、家での映画DVD鑑賞時は明かりを消し、途中休憩なしで一気に観る。レンタルやネット配信で映画を観ることも好まず、好きな作品は何度も観る贅沢を味わいたく、現在ラックに並ぶ映画(邦画も含む)のDVD・Blu-Rayは430枚を超えている。

記事No.197 以後に観て楽しめた映画に、三つ星(特に好きな映画)二つ星(かなり好きな映画)一つ星(好みの作品)を、備忘録を兼ねて付けてみた。社会人となり時間も制限されるなか、鑑賞する基準は第一に自分の嗅覚であり、キネマ旬報や新聞・雑誌などの記事を参考にすることも多い。

ラックに並ぶDVDを見ると、監督で鑑賞作品を選ぶ傾向が見てとれる。イタリアの映画監督作品が多く、フェデリコ・フェリーニ、ミケランジェロ・アントニオーニ、ピエル・パオロ・パゾリーニ、ルキノ・ビスコンティ、ヴィットリオ・デ・シーカ、ピエトロ・ジェルミ、ベルナルド・ベルトリッチ監督たちの作品が並ぶ。

スェーデンの巨匠イングマル・ベルイマンとイギリスの名匠デヴィッド・リーンは特に好きな監督で、他にポーランドのイエジー・カヴァレロヴィッチとロマン・ポランスキー、スペインのルイス・ブニュエルとペドロ・アルモドバル、ポーランドの社会派アンジェイ・ワイダ、フランスのルイ・マル、ジャン・リュック・ゴダールとジャン・ピエール・メルヴィル監督などの文字も見える。

アメリカ映画を監督で選んでいないのは、ヨーロッパの映画監督と比較して「作家性」が強くないのが一因と思う。ラックの中にビリー・ワイルダーの作品は数本あるのだが、ジョン・フォードとアルフレッド・ヒッチコック監督(イギリス生まれではあるが)作品が一本もないのは、いわゆるハリウッド映画作品に惹かれないことが多いのと関連性があるのだろうか。

俳優(女優)目当てで作品を揃えたのは、たったひとり「BB」ことブリジット・バルドーで10本の出演作品DVDがラックの一番左下を飾っている。

好みの映画を並べ、興味あるテーマや傾向を分析することはできるのだが、確固とした一貫性があるとも言えないし、好きではない作品や監督が突然と好きになる日が来るような気もする。そんなところは、僕自身の柔軟性と楽観的に結論づけて、今現在の気ままな評価で、ある程度好きな順から映画の題名を連ねてみる。

一般に評価が高かったり人気はあるのだが、自分には響かずそれほど好きではない数本の映画には「?」を付けてみた。「好きな作品群」に嗜好が現れるのは当然だが、むしろ「?」の作品の中に、自分の本質の一端が垣間見られるような気もする。「好みでない映画が同じ」こんなところで共感を得られる面白さも感じてみたい。

映画に限らず、小説や絵画やコンサート・ライブなどでもそうなのだが、自分にとって文句なく「凄い!」と思える作品に出会えることは稀である。一年に一本あるかないかが、僕の中での肌感覚だ。


「フェリーニのアマルコルド」☆☆☆(現在、自分の中でのベストワン)
「ブリキの太鼓」☆☆☆(個人的には小説を超えていると思う)
「処女の泉」☆☆☆(ベルイマン作品の「緊張感」は凄い)
「ライアンの娘」☆☆☆(撮影現場を見たくアイルランドを訪問した)
「ドクトルジバゴ」☆☆☆(「芸術性」と「娯楽性」の融合)
「トークトゥハー」☆☆☆(この後アルモドバル監督作品を追いかけた)
「2001年宇宙の旅」☆☆☆(キューブリックの才気溢れる映像の妙)
「タクシードライバー」☆☆☆(若きデ・ニーロの焦燥感と鋭利な演技)
「フェリーニのローマ」☆☆☆(「遺跡」のシーンには酔いしれた)
「羊たちの沈黙」☆☆☆(アメリカ映画特有の緊張感溢れる映像の連続)
「アポロンの地獄」☆☆☆(現在と繋がる神話の普遍性)

「欲望」☆☆(映像で語れるものとは何か)
「さすらい」☆☆(「哀しみ」がジワリと伝わる)
「鬼火」☆☆(ヨーロッパの成熟を感じた)
「ダイハード」☆☆(アメリカ映画ならではの達成)
「狼の時刻」☆☆(ベルイマンの隠れた名作)
「ニーチェの馬」☆☆(「生きる」とは何か?と唸った)
「木靴の樹」☆☆(貧しくも誠実に生きる美しさ)
「第三の男」☆☆(言わずと知れた名作)
「死刑台のメロディ」☆☆(サッコ&ヴァンゼッティ事件の映画化)
「バリーリンドン」☆☆(映像の美しさは圧巻)
「質屋」☆☆(ロッド・スタイガーの演技が好きだった)
「シベールの日曜日」☆☆(感情移入してしまった作品)
「1900年」☆☆(5時間を超えるイタリア現代叙事詩)
「ノーカントリー」☆☆(映像と音の緊張の美しさ)
「まぼろし」☆☆(答えの出ない「哀しさ」が痛かった)
「冷血」☆☆(犯罪映画の傑作)
「叫びとささやき」☆☆(ベルイマンは常に何かを「突きつける」)
「ザッツエンターティンメント」☆☆(ミュージカルいいとこ取り)
「紅いコーリャン」☆☆(映画ならではの悲しみの色彩感)

ここからの作品が一つ星(☆)並びはランダムです。

「天井桟敷の人々」「やぶにらみの暴君」「土曜の夜と日曜の朝」「鳥」「イタリア式離婚狂想曲」「真昼の決闘」「黄金狂時代」「モダンタイムス」「泳ぐひと」「ジュニアボナー/華麗なる挑戦」「脱出」「マラー/サド(短縮題名・映画史上最も長い題名・今でも言える(笑)」「24時間の情事」「去年マリエンバートで」「男と女」「81/2」「甘い生活」「愛の嵐」「ソフィーの選択」「幸福」「自由を我等に」「シェルブールの雨傘」「ラストワルツ」「ノーディレクションホーム」「ストップメイキングセンス」「スパルタカス」「突撃」「フルメタルジャケット」「アイズワイドシャット」「地獄に堕ちた勇者ども」「若者のすべて」「太陽がいっぱい」「コレクター」「いぬ」「死刑台のエレベーター」「影」「昼顔」「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」「恥」「蛇の卵」「第七の封印」「ファニーとアレクサンデル」「水の中のナイフ」「恐怖の報酬」「突破口!」「シティオブゴッド」「オールアバウトマイマザー」「アタメ!」「尼僧ヨアンナ」「エクソシスト」「ジャッカルの日」「激突」「路」「自転車泥棒」「十二人の怒れる男」「フォローミー」「パルプフィクション」「ターミネーター」「民族の祭典」「夜の終わりに」「地下水道」「舞踏会の手帖」「戦火のかなた」「わが命つきるとも」「情婦」「刑事」「夜行列車」「あの胸にもういちど」「ニューシネマパラダイス」「バベットの晩餐会」「料理長殿、ご用心」「テキサスの五人の仲間」「眼下の敵」「アルゴ」「ボウリングフォーコロンバイン」「アパートの鍵貸します」「ポセイドンアドベンチャー」「エディ・コイルの友人たち」「エイリアン」「ドライブ」「ロリマドンナ戦争」「不意打ち」「影の軍隊」「情事」「太陽はひとりぼっち」「ジュリア」「裸で御免なさい」「殿方ご免遊ばせ」「気分を出してもう一度」「ミッドナイトインパリ」「チェンジリング」「ララランド」「アマデウス」「初恋のきた道」「ダンスウィズウルブス」「裏切りのサーカス」「ゼログラビティ」

次からの映画が「?・一般に評価が高かったり人気はあるのだが、自分には響かずそれほど好きではない映画(中には嫌いなものも。ごめんなさい、好きだと言う方も多いと思います)」これらの作品も「星付き」に変わる日が来るかもしれない。

「ロッキー」(ツッコミどころ満載)
「インディジョーンズ」(安っぽい娯楽作品と思っている)
「スターウォーズ」(小学生の時に観たならどうだったろう)
「タイタニック」(登場人物たちに感情移入できない)
「カサノバ」(フェリーニの駄作と判断している)
「ミスティックリバー」(登場人物たちの身勝手な解釈が嫌になった)
「カッコーの巣の上で」(見直したら好きになるのだろうか?)
「炎のランナー」(人間関係と国家観に共感できない)
「インドへの道」(デヴィッド・リーン衰えたりと寂しかった)
「ベルリン・天使の詩」(いずれ好きになりそうな気もするのだが)
「非情城市」(歴史背景が分からないとダメなのか)
「駅馬車」(単純に面白さが分からない)
「海外特派員」(こちらもまるで楽しめなかった)

皮肉ではなく純粋に、ジョン・フォード監督作品の見所やヒッチコック監督の演出の妙を解いてくださる方や、映画「ロッキー」や「タイタニック」へ熱き思いを抱く若者などとお会いして、嗜好の対象は異なるも「映画に対する愛情」を語り合いたいものだ。

・・・続く

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