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#5 最大多数の最大幸福、と私

結論を急ぎすぎた。
この思いが後悔なのか、安堵なのかは分からない。
大学生活を折り返し、ようやく全体が見渡せるようになった時、自分の愚かさにこんなにも苦しめられるとは思いもしなかった。

私の家族は誰ひとり、センター試験も受けていなければ、いわゆる就活もしていない。
「お母さんもお父さんもお医者さんだもんね」という謳い文句に反抗し、医療職には就きたくないと思っていた私であったが、両親とも兄弟とも全く違う道を歩むことに一抹の心寂しさと感じた。
その寂しさはふくれ、不安に変わり、恐怖になった。
家族とは違う、大海原に飛び込む勇気を持てなかった。

自分が何をしたいのか、何に向いているのか。
悩み抜いた先に、もし光が見えなかったら。

???

自分の存在意義を失ってしまうことが怖かった。
いつしか暗闇を覗くことから目を背けた。

私は高校卒業と同時に職業を決めた。
「これで迷わなくて済む。」
心のどこかではそう思っていた。

就学試験。
面接で言った、人を助けたいのも、人の役に立ちたいと思うのも、嘘じゃない。
全部ほんとう。
でもそれはきっと全てじゃない。
自分の下した結論にずっと後ろめたさを感じている。

いまある、目の前の一つを救うのか。
多少は犠牲を払っても、多くを助けるのか。

もう迷っている時間はないはずなのに。

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