我々は何をどうやってデザインするのかを考えて言葉にした話
そもそもの経緯
弊社ANKR DESIGNは先日、中小企業庁の小規模事業者持続化補助金に応募しました。小規模事業者持続化補助金がどういうものかと言いますと、小規模事業者が販路拡大を目指すにあたり、最大50万円までの補助金が得られるというものです。
申請の詳細については別途どこかでお話することができれば良いなと思うのですが、申請のためには会社の経営計画を定める必要があり、経営計画書を作るためには会社の方向性を決める必要があります。つまり企業としてのビジョン的なものです。
これについては前回のnote記事でも少し書きました。
そして長い議論の末に設定したビジョンがこれ。これ決めるまで本当に長かった。
私自身の考えるANKR DESIGNのあるべき姿が漠然としており,複雑で曖昧であったこともありますし、どのレベルで方向性を打ち出すのがよいのかについても非常に悩ましかったのです。抽象的すぎても伝わらないだろうし、かといって具体的過ぎると会社の可能性を狭めてしまう気がします。
とはいえ、このステートメントに込めた文章をもう少し具体的に書いてみようかと思います。
Togetherとは何か
このビジョンを決めるにあたって、一番最初に決めたのはtogetherであり、もういっそのこと「Designing together」でも良いんじゃないかと思ったぐらい、Togetherを入れようと考えていました。
近年では日本でもCo-CreationやCo-Designやリビングラボなどの概念が市民権を得てきておりますので、近年のデザイン界隈の動向に詳しい方であれば、プロダクトやサービスを作るうえでtogether、つまりユーザーやステークホルダーを巻き込むなんて当たり前じゃないかという反応をされるかもしれません。
しかしながらデザインプロセスの中心に、人々を置くことは従来はあまり想定されていなかったことでもあります。ユーザーインタビューやユーザテストなどの重要性は兼ねてから指摘されておりましたが、それ以上にユーザーやステークホルダーをプロセスに関与させるって発想は従来のデザインファームではほとんど取り入れられて居なかったのではないかな、と。
Experienceとは何か
我々は何をデザインするのかについて。ここではExperience、つまり、体験と書きました。世の中のデザイナーの中にはExperienceはデザインできないとか、いやそんなことはないデザインできるなどという、それぞれの立場があるのはもちろん知っています。実際のユーザーの体験は不確定要素が多分に存在しますので、完全にコントロールできると考えるのはおこがましいでしょう。
UXデザインの領域というと大げさ過ぎる気もするのですがユーザーの行動をデザインするというよりは、彼らがプロダクトと関わる際の、個々の判断をサポートしているぐらいに捉えるのが適切ではないかと考えています。
なお、ここでExperienceの指す対象は、誰にとってのEexperienceなのかを特に限定していません。ユーザーにとってのエクスペリエンスもそうですし、カスタマーにとってのエクスペリエンスも考えられる。もちろんサービス提供者にとってのエクスペリエンスも重要でしょうし、なんならデザインプロジェクトの中における自分たちのエクスペリエンスもデザインの対象に含まれるはずです。
Beautifulとは何か
私達はデザインスタジオですが、そのデザイン対象はエクスペリエンスですので、必ずしも視覚的に目に見える形で美しいものが出来上がるとは限りません。これはつまりどういうことなのか。私の母校CIIDの代表が、下記のようなことを言っています。
Our design goals are not necessarily related to visual or physical aesthetics. We craft beautiful experiences.
It’s still about aesthetics.
日本語に翻訳するならば、こんな感じでしょうか。
我々のデザインの目的は必ずしも視覚的、あるいは物理的に美しいものを作ることではない。
私達は美しい体験を作る。
それはまた美しいはずだ。
Lifeとは何か
最後に、Lifeについても説明が必要でしょう。実は、このLifeには3つの意味があります。「人生」「生活」「生命」としてのLifeです。
デザイナーはプロダクトをデザインするときに多くの場合、プロダクトとユーザーのタッチポイントや、あるいはそのプロダクトを使用している間の体験にフォーカスします。しかしながら我々デザイナーが考慮すべき領域はプロダクトを使用している間だけで本当に良いのでしょうか。
例えば子供の頃に夢中になっておもちゃで遊んだ体験が、その後の人生に何らかの影響を与えるなんてことは珍しいことではないはずです。私達デザイナーは、私達が手がけたプロダクトを通して誰かの人生にどのような影響を与えるか考えた上で、出来る限りその影響をポジティブなものにしなければなりません。
次に生活としてのLifeです。私達は皆、社会の中で生活しています。これはすなわち様々な人とコミュニケーションを取り、影響を与えながら毎日を過ごすことです。そうした中で、プロダクトを使うユーザーのことだけではなく、ユーザーに関わる様々な人とのコミュニケーションや、そのプロダクトがコミュニティ、あるいは社会に対してどのような影響を与えるかを考え抜き、ユーザーだけでなく彼らに受け入れられるものを作り上げる必要があります。
最後に、生命としてのLifeがあります。近年ではSDGsを日本でも聞く機会が増えてきましたが、サステナビリティに対する注目が集まりつつあります。人間以外の生物や、あるいは環境にとってどのような影響があるか。それららを踏まえた上で、サービスとして、あるいはプロダクトとして持続可能なのか。我々が考慮しなければならないことは多岐に渡ります。
おわりに
以上が、私が考えた弊社ANKR DESIGNの目指すところです。結局のところ「すべての人と一緒に、すべてを考慮しながら。すべてを美しくデザインする」と言っているようなものですからService Design業界における名言である「Service design is all about making it」と通じるところもあるのですが、私達がサービスデザインスタジオを標榜する以上、この点は避けられないポイントでもあるのかなと考えています。
こういった方向を目指すANKR DESIGNと一緒に働いてみたい、あるいは仕事を依頼してみたいという方は下記まで是非お気軽にご連絡いただけますと幸いでございます。