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デザイナーはどこまで技術を理解すべきか

世界中に数多くあるデザインスクールの中でもCIIDは比較的、テクノロジーを大切にしている学校であると感じています。新しいテクノロジーの新しいアプリケーションを探し出すことにも関心が高いですし、テクノロジーを活用したイノベーションを志向している組織のひとつだと思います。

そんな環境は、エンジニアリング出身の私のような人にとっては居心地が良いものですが、文系出身だったりして、プログラミングにそこまで馴染めないような人にとってはなかなかハードな環境でもあったようです。実際、「私は本当にコードを理解する必要があるの?非常にストレスフルだわ」みたいなことを言っている人もいたりもしました。とはいえ、それから数週間すると普通にコードを書いていて、すげーなんて思ったりもしましたが。

しかしながら実際問題として、デザインを生業とする人がどこまで技術を理解する必要があるかは、議論の余地がある点であることに間違いないでしょう。



先日、ANKR DESIGNのWebサイトの引っ越しを行いました。実はANKR DESIGNを立ち上げた時に、とりあえずWebサイト作らなきゃと思って適当なレンタルサーバーを借りてWordpressインストールして、適当なテーマ探してきて、適当にコンテンツ作って公開してたのだけれど、そもそもWordPressである必要ないわけです。せっかくなら会社のWebサイトを作るにあたって、今っぽい方法を取り入れることにしました。今っぽいの定義は人によって違うのでしょうが、当初考えて居たのは下記のような感じ。

1. HTMLなどWebサイトに必要なファイル一式をGitHubで管理
2. GithubへのPush時にファイル一式をAWS S3にアップロード
3. AWS S3のバケットの中身をCloudFrontで配信

で、実際に上記の通り組んで見たわけです。率直な感想として、思ったより手間がかかるな、と。。例えば2についてはCircleCI 2.0を使って上記動作を実現したわけですが、CIツールなどを使ったことが無い人にとっては、おそらくこの概念を理解するだけでも大変だろうし、3のAWS S3をCloudDrontで配信する事ひとつとっても、S3の設定や、AWS ACM(SSLを利用するためのツール)や、AWS Route53(DNSのサービス)、AWS CloudFront(CDNサービス)などが矢継ぎ早に出てきて、なんとなくやってみたいなと思うような方はどこかで挫折するんじゃないかなと。私はキヤノン時代からAWS使って諸々やってますし、HAKUTOのインフラなんかもAWSで構築した経験があるのでAWSにはそこそこ慣れているわけですが、それでも面倒だなぁと思ってしまうぐらいなので。

だってそもそも今まで、さくらインターネットなどでレンタルサーバーを借りて、特定のフォルダにファイルをアップロードすればブラウザから見れてたのに。なぜこんな面倒なことをしなければいけないのか。なんて思っても仕方ないような気がするのです。一回やれば多分覚えられるだろうなとは思うけれど。

そんな事を考えてた時に教えて頂いたのが、Netlifyというサービス。

こちらはGithubにWebサイトのファイル一式をプッシュしたあと、そのリポジトリの内容を自動的にホスティングしてくれCDNやHTTPSなどの設定も自動でやってくれるという大変便利なサービス。こういったサービスを利用する事で裏側の仕組みを理解しなくても簡単にWebサイトを公開できるというのは大変良い事なのでしょう。

その一方で、多くのものが隠蔽化されている世の中ではデザイナーはより積極的にサービスの仕組みや裏側を理解しなければならない時代にもなっているのだろうと思います。



あるプロダクトがユーザにサービスを提供する時に、裏側ではどのようなデータがどのようにやり取りされているのか。あるいは、どのような技術によってそのプロダクトが実現されているのかということ。

デザイナの役割をどう定義するかにもよるのでしょうが、世の中に出せない、技術的やビジネス的に実現可能性がないプロダクトを良いデザインと呼ぶことはできません。世の中に出すためのプロダクトは、企画段階では研究開発が必要だったとしても。少なくとも発売時点でイネーブラーな技術によって構成されている必要があります。

実現可能性を判断するためには、デザイナ自身が技術についてある程度理解している必要があります。こういった画面フローでシステムを作りたいけど、現行のAPIを使って実現可能なんだろうか。これぐらいのサイズのウェアラブルデバイスで、これぐらいのバッテリー容量で、これぐらいの動作持続時間で、こういった機能を実現したいけれど、本当に実現可能なんだろうか。などなど。

サーバーやハードウェアの知識についてももちろんですが、昨今ではIoTやブロックチェーン、AIなど様々な技術トレンドが次から次へと押し寄せる中で、ブロックチェーンについて、より具体的には例えばスマートコントラクトがなぜ実現可能なのかを説明できるデザイナーはどの程度いるでしょうか。AIについて、例えばディープラーニングが注目を浴びている理由について説明できるでしょうか。

技術について知ることは、実現不可能なデザインを生み出す事を回避するだけでなく、新たなデザインを生み出すヒントにもなります。上記の例で言えばスマートコントラクトという概念を知り、仕組みを理解することで新しいサービスにつながるアイディアが生まれる可能性は十二分にあるでしょうし、従来の機械学習アルゴリズムとディープラーニングの違いついて知ることで、従来特徴量の扱いがネックでAIをうまく適用できなかった領域についても可能性が広がります。

ということで弊社Webサイトを構築する時にふと思った事をつらつらと書いてみました。弊社の新しいWebサイトは下記になります。お仕事のご相談お待ちしております。


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