デザインと再現性、あるいはプロセスについて
デザイナってともすれば類まれなる創造性を駆使してプロダクトやサービスを作り上げるアーティスト的な存在に思われる事も多く、成果物としてのデザインが良くわからないブラックボックス的なところから飛び出してきたものにに見えるのはある意味仕方がない事なのかも知れません。だけども多くのデザイナはデザインの再現性を高めるためにはどうすればよいか真面目に考えています。
再現性という言葉、科学実験などで良く使われます。科学者は何らかの発見をした時に「このような手順で実験を行えば、このような結果が得られる」というように、発見に至るその手順を論文などの形で世の中に示します。こうすることで世界中の科学者による追試が可能になり、論文に書かれている事が本当なのか確認することができますし、発見が正しかったとして、それを応用/発展させたりなどが可能になります。
これをデザイン分野に当てはめるとどうなるか。再現性とは「こうすればこうなる」の集大成であるわけですから「このようにすれば使いやすいUIを作る事が出来る」「新しいプロダクトやサービスを作るためにはこうすれば良い」「社内でイノベーションラボを立ち上げるときのコツはこれ」など、つまり何らかの目的達成を目指す際に成功率をあげるためのベストプラクティスみたいなもので、つまりはデザインプロセスのことを指すのかと思います。
デザイン分野で一番有名でかつ世界中で使われているデザインプロセスと言えば下記に示すダブルダイヤモンドであることに異論は無いかと思います。
(https://www.designcouncil.org.uk/news-opinion/design-process-what-double-diamond より引用)
多くのデザインエージェンシーや、デザインスクールでは自分たちのカルチャーやクライアント、ターゲットを考慮したダブルダイヤモンドとある程度共通の、つまりは発散と収束を繰り返しDiscover、Define、Develop、Deliverのようなフェーズを経るデザインプロセスを持っている事が多いのではないかと思います。
私の母校であるCIIDでもやはりダブルダイアモンドと似たPeople-Centred Designと呼ばれるデザインプロセスを持っています。どこにでもある名前っぽいですが、CIIDの中でPeople-Centred Designと言えばCIIDのPeople-Centred Designをさすのです。
CIIDのPeople-Centred Designとはなにか?そもそも他のデザインプロセスと何が違うのかと聞かれてしまうと、私自身うまく答えることができないのですが、色々な人と話をして感じるのは、非常にニュートラルな、色々なデザインプロセスの良いとこ取りとも言える、バランスの取れたアプローチなのではないかと言うこと。
おそらくこれはCIIDの独自性というか、教育部門、研究部門、コンサルティング部門、アクセラレータ部門をひとつの組織で抱え、かつこれらすべて共通のデザインプロセスで回すという世界でもあまり類を見ないユニークなアプローチを取り入れている事と、面白いコンセプトをいかに生み出すかというのももちろん重要ではあるものの、それを生み出した上で最終的にはきちんと社会に対してポジティブなインパクトを与えるためにはどうすればよいかという姿勢に理由があるのかも知れないなと個人的には思っています。
とは言えそこまで特殊なものではなくて、全体的な流れとしてはいわゆるダブルダイアモンドデザインプロセスによく似ており、前半のダイアモンドの部分で、解決すべき問題をどう見つけて定義するか、そこで見つけた問題に対してどのように対処するかであったり、それをどのようにまとめ上げ実現可能性を高めて行くかなどをプロセスとして持っているのですね。
ところで私がCIIDを卒業してからいつかやりたいと思っていたことのひとつがCIID流のデザインプロセスを取り入れたワークショップを日本で開催したいと言うこと。そんな事を考えていたところ、たまたま坪田さんに機会を頂き下記のワークショップのファシリテーションをさせて頂く事になりました。
1日完結型のワークショップですので、プロセスの各ステップをクイックに回してエッセンスを掴んで頂く感じの内容で考えています。幸いなことに多くの方に注目していただき、すでに定員を大きく上回る方に抽選登録をしていただいており、恐縮の次第です。貴重な休日を割いて参加してくださる方に少しでも有益な時間を提供できるよう、気合入れて準備していく予定です。