木から降りられなくなった男
木から降りられなくなった男を見かけても、助ける人はいない。
みんな、「木から降りられなくなったのは勝手に木に登ったやつが悪い」という共通認識のもと、社会の中で健気に生きている。
そもそも木に登らなければこんなことを考える必要もない。男は全て木に登るな。
木の上に何があるというのか。しょうもない。
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木に登ってみた。
とても風が気持ちが良い。
好きなあの人の住む分譲マンションが見える。
降りられなくなった。
登っているときは、降りる時のことなんて考えていないので、幸せだった。
今はただ、降りられない恐怖とキスするだけ。
助けてくれ。
降ろしてくれ。
木に登った俺は悪くない。