1000文字思考 その39 「美術館に居るヤンチャ夫婦って何者」
早朝から昼間にかけてのアルバイト終わり、やらなければいけない事のアイデアが頭打ちになり、「何か新しいものを脳に与えたい」と、大阪中之島の国立国際美術館に一人で行った。
美術館には昔からよく行く訳では無いが、最近よく行く。
学割が効く大学生のうちにと思って巡るようになった。
僕は美術館の入り口が好きだ。
チケットもぎりの爽やかなお兄さんと博識のありそうな妙齢のお姉さんが限りなく小さな声で「行ってらっしゃいませ」と行ってくださる。
僕も心の中で「行ってきます」と言う。
美術の知識は何もなくただ「これ紙で出来ているのか」「写真みたいな風景画やな」と思いながら作品を観ていると、1組の夫婦らしき人達とすれ違った。
金のラインが入ったジャージ、生地が厚すぎる白Tシャツ、盗まれそうなスニーカーを履く男性とキラキラとしたネックレス、豹柄のタイツ、結べば良いのに金髪ロングの女性だった。
何故この夫婦(かどうかわからない)が、今朝あるいは3日前くらいに「美術館いこうや」となったのか。
まあそうなることはあるとして、
「服いつものでええか」
「ネックレスは美術館に要らんやろ」
「いやええやん私が好きで付けてるんやし、あんたのジャージこそ、もっとあるやろ美術館っぽいやつ」
「ええやんけこれが楽やねんから」
「ほなええわ」
と、一切自分達の服装に疑問を持つことなく当日美術館待ち合わせあるいは昼ごはんを何処かしらのチェーン店で食べてから行こうとなり朝降ってた雨の影響で持ってきたうっすら色のついた傘を傘ロッカーにしまいチケットを窓口で購入(当然ながら当日券)し入った所すぐの作品紹介のパンフレットを人数分取り(2人で1枚でええやろ)丸めて筒状にして後ろ手に持ち“ここから先は近づかないでください“のラインギリギリまで攻めて、
そんなことが許されるのが美術だと思う。
どんな人であろうと、今日どんな飯を食った人であろうと昨日どんな人にフラれた人であろうとそれぞれの感動、作品から連想される記憶、弾む会話があるのだなと勉強になった。
決してあの人達を悪くは言いたくない。
(誰にも迷惑かけていないから)
ただ一つ、僕が入場する時に素晴らしい「行ってらっしゃいませ」をくださったチケットもぎりのお二人は、あの夫婦にも同じ「行ってらっしゃいませ」を言ったのか。言っただろう。
スタッフの方から見れば僕も「無地パーカーの猫背来たで」と思われているに違いない。